追記に4話まで置いておきます。
やけに赤司と仲良くなってますが、赤司とはあくまでも友情を貫く予定です(^ω^)
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追記に4話まで置いておきます。
やけに赤司と仲良くなってますが、赤司とはあくまでも友情を貫く予定です(^ω^)
##name_1####name_2##は、帝光中女子テニス部に属している。
運動部の活動に力を入れている帝光中の中で、女子テニス部は関東レベルの実力だ。何度か全国へ出場したこともあるらしいが、ここ数年は関東止まりで、去年は調子が悪かったのか都大会で敗退したと聞く。
その女子テニス部に入部した彼女は、初心者だ。ルールは知っていたものの、経験はない。生まれつきそこそこ運動はできたが、率先してやる程好きでもなかった。
そんな##name_2##がわざわざテニスを始めたのは、他人が聞けば実に可愛らしい理由だ。
初恋の人が、テニスが好きだったから。
自分はテニスに興味がなかったが、あんまりにも彼が楽しそうにラケットを振っていたので、今の自分はそれなりに運動ができるし自分もやってみようかなと思いついた。
人を愛することを教えてくれた彼と、同じ心境になってみたいと思ったのだ。
つまり、その彼がサッカー部ならボールを蹴ってたし、水泳部なら泳いでいたし、吹奏楽部なら楽器を吹いていた。これからテニスを続けて自分にどれだけの影響を与えるかは未知数だが、切っ掛けは本当に些細なものだ。
「##name_2##ちゃんって、上達早いよね」
部室で着替えていたら、同じ1年の安藤夏樹が話しかけてきた。
彼女は##name_2##とは違って、経験者だ。ずっと幼い頃からテニスを続けているだけあって、1年生の中では特に上手い。
「そう?」
「今日だってさ、副部長にラリー誘われて、ずっと続いてたじゃん」
「わかる! フォームも綺麗だよね。本当に初心者!? って感じ」
##name_2##の隣にいた渡部有紗も同調する。
彼女たちの指摘に、自覚がないわけではない。
わざわざ副部長にラリーに誘われる初心者など自分以外にはいないし、経験者でも安藤ぐらいだろう。
初心者部員はまだ基礎練しかやらないのに、##name_2##は安藤たち経験者と同じ練習メニューを与えられている。
部内試合では、既に先輩に何度か勝っている。
しかし目に見えて成長している部分はあるものの、初心者なだけあってまだ身体ができあがっていない。持久力もパワーも、経験者にはまだまだ劣る。
「初心者よ。体力なんて、安藤さんにも渡部さんにも敵わないし」
##name_2##は基本、それなりに親しい間柄でなければ、相手をフルネームに敬称をつけて呼ぶ。昔から、相手と一度しっかり距離を作ってから、接するようにしていた。
しかし今は帝光中女子テニス部の一員。テニスは個人競技とは言え、部活という人の集りの中にいる。ある程度の人との関わりは必須であり、余程の鈍感でなければ壁を隔てているとわかる呼び方は控えるべきだと判断した。
人と関わるのにワンクッションを置いてしまうのは、##name_2##が“普通”とは大きくかけ離れた少女だからだ。
生まれてこの方、見たこと聞いたこと、嗅いだこと触れたこと味わったこと、五感で感じ取ったもの全て忘れたことがない。その時に何を考え、どう感じたのかも、ネット検索のように瞬時に寸分違わず思い出すことができる。メモなんて不必要だ。
その頭脳の優秀さは、記憶力に限らず、思考の速さも人よりずっとずっと速い。普通なら数分かけて色々な式を書いて解ける数式を、数秒で暗算できる。5桁を越える掛け算割り算も、一瞬で頭の中だけで計算が可能だ。電卓など、使ったことがない。
中学の定期テストなど、満点が当然な頭脳を持っていた。テストの一週間前はどの部活も勉強ために休みになるが、彼女はちっとも勉強をしていない。
周囲とあまりにも違うものだから、昔から敬遠されがちだったし、##name_2##自身そういった周囲の人たちに興味を持つこともなかった。そうして自然と、最初から人に近づくことはなくなった。
そんな##name_2##には、もう一つ、誰にも話せない“普通”ではないところがある。
自分でも何故だかわからないが、##name_2##は前世の記憶がある。それも記憶は2人分で、##name_1####name_2##は三度目の人生だ。
一番最初の頃から完璧な記憶力を持っていたせいなのだろうか。些細な出来事でさえ、何一つ欠けずに頭の中に残っている。因みに、初恋の人は2度目の人生で出会った。だからもう、その人と会うことは二度とない。
不思議なことだし、人によっては不気味に思うことだが、##name_2##は気にしないことにした。特別不自由なことがないからだ。
この頭脳、そして記憶は、テニスの実力を伸ばすのに活かされている。
手本になりそうなプロの動きを全て記憶し、その記憶した通りに身体を動かす。##name_1####name_2##の身体は性能が良く、脳の命令通りに動いてくれる。脳内で正確に何度もシミュレートすれば、一回で身体にアウトプットできた。どういった動きが最適なのかを理論的にも考えて動いているので、コーチからも絶賛されるフォームがあっと言う間に身についた。
さらに前世の記憶の中には、かつて彼女が見たテニスプレイヤーの技や戦術がある。全てではないが、それらは彼女のプレーに反映することができた。
「あったりまえ! ちっちゃい頃から鍛えてるんだから!」
「でもさ、来年にはレギュラーになれるんじゃない?」
ハッキリとは明言されていないが、実力があっても1年はレギュラーに選ばれないと言う暗黙の了解がある。
安藤はレギュラーでもおかしくない実力者だが、その理由により選ばれていない。週に3、4日来る外部コーチは彼女の父なのだが、実の娘でも甘くないらしい。むしろ、部活動で指導する時は彼女には特に厳しく感じる。
「どうかしらね。急に私以上に伸びる人が出るかもしれないわよ」
「は〜……いいよねー、頭も良いしさ。学年トップだよ? 全教科満点だよ? 朝練終わって見たとき、ビックリしたもん」
「勉強できそうだな〜とは思ってたけど、あそこまでとは思ってなかったわ。ね、次の期末テストのとき教えて! あたし、今回ヤバかったんだ!」
「それ良いね、いっそ1年の皆で勉強会やらない? わたしも数学がちょっと危なかったんだよね」
正直教えるのは面倒だが、迷惑と言う程ではない。
どうせテスト一週間前の期間は、ろくにテスト勉強をせずに体力作りに励んでいたのだ。教えることに少し時間を割くぐらい、負担にもならない。
「良いかもしれないわね」
着替え終わり、買って間もないラケットバッグを担ぐ。
「ねえねえ! 明日の集合時間って、8時で良いんだよね!?」
仁科鈴が声を上げる。
明日は、強豪校との練習試合だ。
「そう、8時! ……だよね?」安藤が確認するように##name_2##を見る。
「8時よ」
##name_2##の記憶は絶対だ。
「ありがと! ##name_2##ちゃん、明日試合出るんでしょ? 頑張ってね!」
本来なら1年生は応援なのだが、##name_2##は一度試合をさせると牧野部長から通達があった。
##name_2##を出すのはおそらく、この急速な成長に##name_2##が天狗になったりする前に、一度敗北させ挫折を教えるべきだと判断したのだろう。
部内以外では、明日が初めての試合になる。
――――――――――
3
この部活の外部コーチである夏樹の父は、かつてはプロを目指していたが怪我により断念した経歴を持つ。そんな父に幼い頃よりテニスを教えられてきた夏樹は、1年の中でも特に強い方だ。まだ部長などには及ばないが、既に部内試合で先輩を相手に何度か勝っている。
その夏樹と同じように、先輩を負かしている1年がもう一人いる。それが##name_1####name_2##。
初心者の中で一番上達が早く、驚くべき急成長を遂げている##name_2##。そんな彼女と部活でと一番関わることが多いのは、同じクラスでもある夏樹だ。
##name_2##の成長速度は恐ろしい。彼女がテニスを始めて1ヶ月半だと言うのが、共に毎日部活動で顔を合わせている夏樹でも信じられない。
元々運動神経が良いらしい上に、飲み込みが速いのだ。とんでもない速さで、テニスの様々な動きを吸収して自分のものとしている。あの速さに、自分は何度鳥肌が立ったことか。
「うわ、ヤバいじゃん……相手の人、怒ってない?」
コートで##name_2##と対峙する相手校の選手を見て、応援する1年たちはコソコソ話す。
皆の指摘通り、相手選手は目に見えてイライラしている。
「そりゃあ……あの人3年生で、全国レベルだもん。けっこう有名な人だよ。初心者が相手なんて、舐めてんのかって思うでしょ」
強豪校と練習試合すると聞いてから、夏樹は相手校の選手を調べていた。
勉強には今一つ集中できないが、こういったことに関しては意欲を見せる。勉強勉強とうるさい母が知れば嘆くだろう。
正直、夏樹もその苛立ちは理解できた。
##name_2##の雰囲気は、なんだか、体育祭でクラスの皆が盛り上がってる中、それに交わらず輪の外から皆を眺めている文化系な感じなのだ。夏樹は割と、そういう文化系タイプにはイライラさせられる。
入部した1年の中にいるクラスメイトの彼女を見たとき、夏樹は驚いた。運動が得意かどうかは知らないが、スポーツをするような雰囲気の子ではなかったから。
「全国!? うわ……##name_1##さん、大丈夫かな」
「勝てっこないでしょ、何であの人と試合させるんだろ」
「##name_2##ちゃんはそれ知ってるの?」
「うん、さっきあの人のこと聞かれて、教えたよ」
まさか「そう」という短すぎる返答が来るとは思わなかったが。
素っ気なさすぎる反応にフリーズした夏樹を一瞥して、さらに##name_2##は「一度ぐらい、ボロ負けする経験をしても良いわ」と言った。
夏樹もコーチや部長の意図が汲み取れなかったわけではないが、まさか##name_2##がそんな受け止め方をしているとは思わなかった。
自分から敗北の苦痛を舐めようとするなど、夏樹には考えられない。まだ知り合って2月も経っていないが、この子は一生理解できないんじゃないかと思った瞬間だ。
一番の実力者である部長直々にではなく、全国レベルの他校の選手とぶつからせたのは、おそらく万が一を恐れてだろう。
馬鹿げていると思いながらも、夏樹自身その可能性を振り切れない。
##name_2##は、今の時点で部長すら凌いでいるかもしれない――。
この結果を、誰が予想できただろう。
呆然とコートに佇む少女。
その少女を反対側のコートからジッと見つめる##name_2##。
その2人を見守る夏樹たちは、息を潜める程に静まり返っている。
得点板は、##name_2##の優勢を示している。
まだ試合は終わっていない。
サーバーは相手校の3年選手。なのに彼女はちっとも動かない。
「――棄権、します」
小さいが、沈黙しきっていたコートにいる全員に、その言葉は聞こえた。
夏樹は息を呑んだ。
対峙する##name_2##でさえ、棄権と言う言葉に目を少し見開いた。
信じられない。
テニスを始めて間もない無名の1年が、全国レベルの3年生を相手に最初は劣勢に見えた試合を巻き返すどころか、精神的に試合を続行できなくなる程まで追い詰めるなんて。
そんなわけのわからない、理不尽な話があってたまるか。
覚束ない足取りでコートを去る3年選手に、誰もかける言葉がない。
同じように、その去っていく背を見つめ続ける##name_2##に声をかける者もまた、いなかった。
夏樹はこの日まで、##name_2##は持ち前の運動神経と、飲み込みの早さから恐るべき成長を遂げているのだと思っていた。けれどその練習試合を通して、違うと気付いた。##name_1####name_2##の実力をあそこまで引き延ばしてるのは、頭脳だ。
テニスは頭脳面も大切なスポーツだ。##name_2##はそこが圧倒的に強い。基礎練をする彼女を見ていても気付けるものではなかった。試合形式の練習はあったが、彼女はまだ数度しかやっていないから、やはり気付いた者はいなかった。
しかし、全国レベルの選手を相手に持てる全てをつぎ込んだ試合になったことで、やっとその強さが浮き彫りにされた。
彼女はゲームメイク力がズバ抜けている。駆け引きで負けない、相手の動きを全て予測し、相手に読ませない。相手が打てる手は悉く潰し、反撃のチャンスを与えない。そして劣勢になっても焦らず冷静に正気を窺うメンタル。
もしかしたら、あの呑み込みの速さにはその頭脳が理由にあったのかもしれない。
スタミナやパワーなど、身体的能力にはまだ欠点がある。しかしそれは、これから練習を積めば補えるものだ。
それらを補えたとき、彼女はどれほどにまで強い選手になっているのか……。
――――――――――
4
陽泉高校。ここらでは制服が可愛い方で、校舎も洋風でオシャレだから、特に女子に人気な高校だ。
今年入学した紀山陽子は、新入生代表の挨拶でステージに上がった人物に驚き、興奮した。
##name_1####name_2##。
あの##name_1##が、目の前のステージにいる。
中学テニス界で、彼女ほど有名だった選手はいないだろう。
関東止まりのレベルであった、帝光中女子テニス部。##name_1##はその帝光を、全国大会どころか、全国優勝まで導いた。
それだけでもすごいことなのに、なんとそれを達成したのは、3年前。陽子は彼女がインタビューを受けた雑誌を読んで知ったことだが、当時1年生だった彼女は初心者だったのだ。半年にも満たない期間で、##name_1##はシングルス、ダブルス、団体戦全てを優勝し、3冠を達成させた。しかも彼女は、それまで一戦も負けていない。
まるでフィクションのような話ではないか。
一女子中学生選手として、憧れないわけがない。
漫画の主人公みたいにキラキラ輝く栄光を手に入れた##name_1##に、陽子は夢中になっていた。住んでいる所が秋田ではなく東京だったら、サインか握手を求めに会いに行ってたかもしれない。
陽子だけでなく、誰もが##name_1####name_2##に注目した。
3冠を達成し頂点の座についた彼女を、ある雑誌が“女帝(クイーン)”と呼び、いつしかその呼び名は中学テニス界に定着した。
その“女帝”が、本当なら東京と秋田でどっちもが全国大会に行かないと会えないような人が、まさかの同じ高校!
これが喜ばずにいられようか。
「美結、見た!? ##name_1##さん!」
入学式を終え、高校最初のホームルームも終えて、隣のクラスになった美結に興奮をぶつける。
同じ中学出身の美結は、部活も共に女子テニス部だった。ただ、彼女は選手ではなくマネージャーだ。
「見た見た。陽子、##name_1##さん大好きだよね〜」
「だってすごいじゃん! 2年の時、直接試合観たけどさ、すごい上手かったじゃん!」
2年時の全国大会の開催地が隣の県だったから、東北大会で敗退していた陽子は美結と共に全国大会を観に行ったのだ。
もちろん、一番の目的は##name_1##だ。雑誌でしか見たことのない彼女を、彼女のプレーをこの目で見たかった。
テニスの実力だけでなく、統率力もあったらしい、##name_1##は2年生にも関わらず、帝光中女子テニス部の部長となっていた。
試合は、圧倒的だった。
##name_1##のダブルスパートナーの安藤夏樹など、全国クラスで強い選手は他にもいる。けれど##name_1##の強さは格別だった。
見惚れる程綺麗で完璧なフォーム。高校生だって顔負けな技術。どこまでも緻密に練られた戦術。どんな試合展開であろうとぶれない精神力。勝利した時の堂々とした佇まい。
“女帝”という呼び名に相応しい少女だった。
あまりの差に、全国大会まで上り詰めた選手にも関わらず、彼女に屈するようにコートに膝をつく選手もいた。
そして再び3冠を達成した“女帝”の姿を、ただただ陽子は目に焼き付けた。
ああいう子を、天才と言うのだろう。
彼女は間違いなく天才と呼ばれる選手だ。それも、10年に1人いるかいないかの……。
しかし、と陽子は思う。
以下に天才と言えども、去年なんて、4月から初めて8月に優勝したのだ。たった4ヶ月で全国優勝レベルなど、いかに才能に恵まれようと不可能だろう。そんな馬鹿な話があるわけない。
確かに、##name_1##には才能があったのだろう。けれど才能だけでやっていけるほど、テニスは甘くない。
死ぬほど、努力をしたはずだ。
皆に認められて、レギュラーに選ばれて、大会で全国優勝まで勝ちぬく程の実力を、必死で身につけたのに違いない。
あまりにも強すぎる##name_1##を僻む者は多いが、陽子は心底彼女に憧れた。神聖視にすら近い。
「あ」
「何?」
「あそこにいるの、##name_1##さんじゃない?」
美結の指摘に陽子は振り返り――ああ、と胸を手で押さえる。
##name_1####name_2##が、“女帝”がいる!
行ってきなよ、と美結に背中を押され、陽子は震える手を握り締め憧れの選手へ近づく。意を決して、彼女の名を呼ぼうと口を開く。
「##name_1##さ――」
「あ、##name_1##ちーん」
急に目の前に現れた人物に、興奮が吹き飛ぶほどの衝撃が陽子を襲った。
――でかっ!! でかすぎ、えっ、何センチ!?
現れたのは、見たことがない程大きな男の子。ずっと見上げてたら首が痛くなりそうなぐらい上に頭がある。
「久しぶりね、紫原敦くん」
「久しぶり〜。アララ、縮んだ?」
「あなたが成長しただけよ。もう200cmは越えてるわね、体重も100キロ近いんじゃないかしら」
「ん〜去年は90キロ超えてたかなあ」
「――聞いた? 陽子。200cmだって……」
「うん……。マジビビった……熊かと思った……」
あまりの衝撃に、その日陽子は##name_1##に話しかけれずじまいだった。
性 別 | 女性 |
誕生日 | 8月17日 |