いきなり始まる上に長い↓


私の前世の話をしよう。
と言っても、前世の人生には特筆すべき点はない。ごくごく一般家庭に生まれ、荒波に揉まれることもなく女子大生になるまで生きた平凡な人生だった。
ただ、他人と明確に異なっていたのは、死に方だった。

私は盲腸の手術を受けた晩に、何の脈絡もなく肋骨が唐突に折れた。結果、折れた肋骨は深々と臓器を傷付け、私は苦しみながら息絶えた。
意味がわからないと思うが事実だ。
きっと前世の世界では私の肋骨が折れた真実は迷宮入りになることだろう。
入院先の病院には多大な迷惑をかけていることだろう。

しかし私のせいではない。
それを知ったのは死後の世界でのことだ。

「私が死んだのは死神の手違い?」

死んだ筈の私は知らない場所に立っていた。
とりあえず目の前にあったゲートをくぐったはいいが、その直後にけたたましい警告音が鳴り、あれよあれよと連行された先の応接室。
向かいのソファに座るスーツ姿の若い男の質問に答えると、男はふんふんと手元の書類に記入しながら「どうやら死神の手違いで召されたらしいッスねー」とあっけらかんとのたまいやがった。見た目に違わず口調も軽いが、発言内容はとんでもなくヘヴィーだ。

「そそ。手術の後に移動した大部屋さ、最初は窓際のベッドだったけど、消灯前に急に隣と入れ替わったデショ?」
「ああ、ハイ」

死ぬ数時間前を振り返る。
入院先の病院で、私の隣のベッドにいた入院患者は、偏屈そうなおっさんだった。隣の窓際のベッドが空いたらそっちに移動する約束をしていたのに、私がそのベッドを使うことになったもんだから約束と違うだの詐欺だの喚かれた。
煩いし面倒だったので看護師さん達に断って、寝る場所を交換したのだ。
その数時間後に、私は死んだ。

「じゃあ、死ぬのは私じゃなくあのおっさんだったと?」
「そそ。この件にあたった死神ちゃんがさー、新人で初仕事なもんだから?もー張り切っちゃって張り切っちゃって!数日前からおっさんの枕元にスタンバッてたんだけどさぁ、うっかり居眠りしちゃって、その間に君とおっさんがベッドを入れ替わったもんだからー。寝ぼけてる内に君の魂狩っちゃった…みたいな?」

みたいな?じゃねぇぇぇぇ!!!
初仕事でそんな重大なミスをしでかすやつを死神にすんじゃねぇ!!ここの新人研修どうなってんの!?人事は無能なの!?
あとコイツの軽い口振りめっちゃ腹立つ!!誰だコイツに私の面談を任せたバカは!!
あまりの怒りにうち震えるばかりで何も言えないでいると、チャラ男は相変わらずチャラい雰囲気のまま

「だからまぁお詫びと言っては何だけど、次の転生に関してのお願いを三つ叶えてしんぜよう〜」

再び爆弾を落とした。さっきから色々ツッコミどころが多くて脳内の処理が追いつかない…でも転生後のお願いを叶えてくれるんだ?しかも三つも?わーい!っていやいやその前に!

「…私、転生出来るんですか?」
「ん?出来るよー。俺がまばたきする間ぐらい割とすぐに」
「小林○子の早着替えより早い!」
「生前に悪事を働いた者以外は早めに転生出来るよ?さっさと選別しないと天界が死者で溢れ返ってパンクしちゃうしー」
「そういうものなの…?」
「そういうものなの」

まぁ、積んだ徳の数や内容によって死者の転生の順番は変動するけどねー、とチャラ男は転生のシステムについてノホホンと説明した。天界って思ったより人間界と似たようなもんなんだなぁ…。
軽く現実逃避をしている間、チャラ男は手持ちの書類を眺めて「あ〜なるほどねぇ〜」と勝手に一人で納得している。ひょっとしてあの書類、私の生前のことが記載されてるんだろうか。

「君、日課のジョグ中に欠かさず氏神様の神社に寄ってお参りしてたんじゃん〜徳積んでるね〜」
「えぇ、まぁ…走るコースに氏神様の祀られている神社がありましたし、祖父母の教えで割と信心深い方でしたから…」
「だからかー!いやね?そこの神様、君のことをいたく気に入っててね〜」
「それは…有り難いですね…」
「そんなもんで、今回の件でその神様、うちの部署に対して怒髪天よ怒髪天」
「うわぁ…」
「だから、君の氏神様のクレームにより、今回の手違いの件を含めてお願い二個分贈呈ー」

叶えてくれるお願いの理由がそれか。あれ?でもお願い二個分ってことは…

「残りのお願い一個の理由は?」
「君、本来なら卒業旅行先の海外で死ぬ予定だったんだよね。で、死に方を決める時に君の担当の死神が悪ふざけでデ○ノートに『海水浴中に接触してきたマナティをサメと勘違いして驚きのあまり心臓発作で死ぬ』って書いちゃってね〜。それが今さっき発覚したから、急遽お願い一個追加でお願い計三個叶えちゃう〜」
「悪ふざけにも程があるだろ!!」

耐えきれずにとうとう突っ込んでしまった。
私今回死ななくても割とすぐに死ぬじゃん!!というか、今回の死に方ってマシな部類だよね!?
そんでなんだよマナティをサメと誤解して死ぬとか!!!アホな死に方トップ10には入るだろうけどダーウィン賞には候補どまりなこの中途半端さ!てか私に関わるあの世関係の奴はもれなく碌な輩がいねぇな!?


気がつけばソファから立ち上がっていて、上記の内容を大声で喚き散らしていた。
目の前のチャラ男は、私の様子に一瞬驚いてはいたが、すぐに穏やかな眼差しに変わった。
それがあまりにいたたまれなくて、静かにソファに座り直す。
チャラ男は私の傍にある茶を飲むよう勧めながら口を開いた。

「落ち着いたー?」
「…お見苦しいところをお見せしてすみませんデシタ」
「いやいやいや、そうなるのは無理もないって!…今回こっちはかなりポカしちゃって君の人生設計を壊しちゃったし。この度は本当に申し訳ありません」

深々と頭を下げるチャラ男の明るい茶髪を眺めながら、案外コイツいい奴なのかもと思った。思い返せば顔も整っている。
私が顔を上げるよう促すと、ゆっくり顔を上げた彼は

「じゃあ早速で恐縮だけど〜、三つのお願いちゃちゃっと決めちゃってYO☆」

先ほどの真面目な雰囲気を払拭し、再復活のチャラさをふりまきながらお願いごとの催促をしてきた。コイツ変わり身早いな。

「お願いって…そんなスグ決まるもんじゃないし…」
「えー?別に何でもいいよ?君、次の転生も人間だけど、嫌なら変えられるし。性別指定とかー容姿指定とかーどんな家庭に生まれたいとかー兎に角なーんでも。ファンタジー並みの特殊能力やスペックもオーケーよ?」
「う、うーん…」
「例の氏神様の神嫁になることも出来るけど〜」
「あ、それは結構です」

催促されつつ、私はうんと悩んだ末に三つのお願いごとを言った。
チャラ男はそれを聞いてにやりと笑い、

「うっし!そんじゃ天界一同、君の願いを全力でサポートするから安心して次の生を謳歌しちゃってよ!」

と張り切った様子でソファから立ち上がると、私に向かってウィンクをした。

瞬間、私の座っていたソファの下の床がなくなり、私はソファごと奈落へと垂直落下したのだった。まばたきの間に転生ってのは冗談じゃなく本当だったようだ。

気持ち悪い浮遊感に悲鳴が上がる。そんななか、穴の上から「よい転生を〜」と、あのチャラ男がにこやかに手を振っているのが視界の端に映ったが最後、私の意識は途絶えた。
ほんとマジふざけんな。


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この後からコナンと金田一少年クロスオーバー夢小説が始まります。
因みに主人公のオリキャラはSUGEEE展開もなければ逆ハーやら他キャラとの恋愛イベントもなければ原作で死んだキャラの救済もない。そういうのは余所様の作品で満足しているから。
ここまで説明したけど、肝心の続きが思い浮かばないので書けない。無念。