彼女英恵美は決して自分から率先して何かをやるというわけではなかったが、なんでもよくこなし、むしろ控えめな性格から周りから疎まれることもなく頼れる存在だった。容姿はというと、地味にもみえるほど全く飾らないが、身嗜みはきちんとしている清楚な感じだ。

「綱川君も好きなの」
何が、という言葉がすぐには出てこなかった。いきなりそんな事を聞かれたものだから酷く驚いた。「何のこと」
掠れた声が響く。
「ほら、さっき」
躊躇いがちに
「皆が言ってたでしょ、男子の方が占いとか少女漫画とか意外と」
少し、いやかなり拍子抜けした。その日ホームルームでそんな話が出たのは確かだった。
「どうだろう、女の兄弟がいるやつはそういうのいるけど」
ふぅん、と納得したような興味が無くなったような相槌を打つと彼女は友達のところに行ってしまった。

接点らしい接点は後にも先にもこれだけだった。