彼女英恵美は決して自分から率先して何かをやるというわけではなかったが、なんでもよくこなし、むしろ控えめな性格から周りから疎まれることもなく頼れる存在だった。容姿はというと、地味にもみえるほど全く飾らないが、身嗜みはきちんとしている清楚な感じだ。
「綱川君も好きなの」
何が、という言葉がすぐには出てこなかった。いきなりそんな事を聞かれたものだから酷く驚いた。「何のこと」
掠れた声が響く。
「ほら、さっき」
躊躇いがちに
「皆が言ってたでしょ、男子の方が占いとか少女漫画とか意外と」
少し、いやかなり拍子抜けした。その日ホームルームでそんな話が出たのは確かだった。
「どうだろう、女の兄弟がいるやつはそういうのいるけど」
ふぅん、と納得したような興味が無くなったような相槌を打つと彼女は友達のところに行ってしまった。
接点らしい接点は後にも先にもこれだけだった。
朝の占いで一位だったと浮かれていると、コーヒーで舌を火傷するし、人身事故で遅れるし、数学でいきなり指されるし、普通どころか悪い一日の気がした。一位は一位でもワースト1だったか。
ガラ、と音を立てて引き戸をひいた。
この瞬間俺は占いで一位の意味を理解した。
午後5時。何も無く今日一日が終わろうとしている。予備校は倫理だからさぼろうと自習室に向かった。もちろん内容は睡眠学習だが。
そう、この自習室の扉を開くまではそのつもりだった。
扉からは遠いけれど誰がいるかははっきりとわかる、そんな席に彼女はいた。
座っていた、といえば座っていたのだが、彼女は眠っていた。
彼女は一昨年、そう、入学したばかりの頃席が隣だった。高校にもなれば普通男女仲良く机をつけないと思うが、うちの学校は三年間そうだった。だからといって隣の子と話すこともない。名簿順で英と綱川で一応近かった彼女とは大体一ヶ月一緒だった。
半端ですが続きます
こんにちは。山吹です。
急に寒くなってきた今日この頃、ブログ開設しました。
いくつかブログやってますが創作モノは今回初です(*^_^*)
う〜ん、あんまり計画ないけど、っていうかほぼ無計画だけど(汗 一応短編を中心にしていく予定。オリジナルのつもりでノンジャンル。暇あったら見てってね〜