お客さんが来る度、店の主人出なく
僕がお客さんの対応をする。

でも、僕は毎回同じ事しか言わない

「ご主人いらっしゃる???」
「今は留守にしております……」
「今日もですか???」
「留守にしてまして……」
「分かりました…出直します」

お客さんは呆れた顔で帰っていく
申し訳なさそうに頭を下げる僕

カンカンカンカンーーーー

また お客さんだ。

僕が出る。


「旦那いるかぃ???」
「いえ、今留守にしております」
「こないだ、金かしてまだなんだわ……」
「おいくらですか???」
「2万だ……そろそろ返してくれないと……」
「少々 お待ちください」

僕は懐から金を出し男に返したが
「これは君のだろう???旦那から返してもらうからいいよ」
返されてしまった……
「いいえ、受け取ってくださいな。主人の失態は僕の失態でもありますから……」

僕はニコやかに男の手に金を握らせた。
男は「本当にいいのかぃ???」と何度も聞いてきたが
僕はいつも通り答えた。
「今、主人は留守にしてますし、後から徴収しますので大丈夫ですよ」
男は頭を下げて帰っていった。


村では、僕の噂が広まっているようだ。
縫合屋の主人は若い子に店を任せて夜逃げしたとか
皆 言いたい放題言ってくれてるが、
そんなの僕の知ったことではない。

主人が帰ってこないのが、そんなに悪かないことだろうか???

別にいいではないか、だって……
だって、今は僕がこの縫合屋の主人なんだからーー



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