話題:本の感想
憤死/綿矢りさの短編集

トイレの懺悔室/綿矢さんの作品の中では今までなかったスリルのあるもの。男性視点と言うのも。だれにでもあるであろう秘密。それをだれかに打ち明けたいけどできない。だけど、急になんでも話していいぞ、聞いてやるからとおやじが提案する。それをきっかけに秘密であったドロッとした欲望が溢れだし、止められなくなる。懺悔室であったおやじを追い詰め、征服。そんなおやじが死んでから代わりを探していた彼の元に現れた主人公。気づいた時には既に遅し。ゾクッとした話。

憤死/女ふたりの小学生から現在までの話。太っているけどお金持ちの家の女の子といじめられっ子の主人公。一緒にいるけど互いを好いてるからではなく必然的に余り者同士の寄せ集め。そこには、主従関係もあり、主人公のことを家来のように扱っていた。だけど、主人公はそんな彼女の醜さにうっとりと魅せられる時がある。怒りを全身で現す姿は不細工だけど魅力的と。時が経ち、そんな彼女が自殺未遂をした話を聞き、駆けつける。昔の天真爛漫さが失われているように見えて、がっかりしていたのも束の間、話を聞いていると昔通りの彼女が姿を現す。そんな彼女にまたも引き寄せらる。「お姫さま、死ななくてよかった。人には嫌われるかもしれませんが、いつまでも天真爛漫でいてください」と締め括られたように主人公は、なんだかんだで彼女のことが好きなんだろうなと思った。女の醜い部分をきれいにまとめる綿矢りさらしさに溢れ、安定していた話。

人生ゲーム/こちらも男性視点。3人の親友が幼い頃に人生ゲームをしてるところに現れた兄の友達だと思っていた男がボードにペンで丸く記した通りの不幸がそれぞれ彼らに降りかかる話。人生とはと考えさせられる。一生懸命働いていても空虚になったり、貧乏でも生を強烈に感じて充実したりと主人公が語るように、どんなことが正解なのかがわからない。人生は、ゲームのようなものなのかもしれないなと思った。


全体的に奇妙な話が多く、綿矢りさの新境地を垣間見れ、おもしろかった。