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※突発二次創作注意(お/し/ゃ/れ/な/か/ら/す)

話題:突発的文章・物語・詩

「なんであんなことしたの」
羽を抜かれて埃にまみれ、無様な姿をさらす私に掛けられた声。
今は誰とも目を合わせるつもりはないが、相手の方を見ずともどんな様子でいるかは想像できた。小さな彼女はきっと、こちらを睨みつけているのだろう。非力なくせして、正義感だけは強いから。
尤も、彼女が怒ったところで、ちっとも怖くないのだけれど。

「なんでって、決まっているじゃないか。私は王になりたかったんだ」
わざわざ聞かなくても分かりそうなことだ。一体他に何の理由があるというのだろうか。
一番きれいな鳥を王とする、と神がのたまったから、私は美しい羽根を集め身を飾った。それだけのことだ。

「他の皆は自分の力で戦った。水浴びしたり、羽に艶を出す方法を考えたり。なのに、なんであなたは落ちた羽根なんかで自分を隠してしまったの」
要は卑怯者だと言いたいのだろう。
それでも、王という確固たる地位が欲しかった。王にさえなれば、疎まれることもなくなると夢見ていた。まったく浅知恵であったと思うが、普通に挑んで勝機があると信じられるほど、私は愚かではないのだ。

私が何か言い返すのを待っているのだろうか、黙った彼女に動く気配はない。吹き抜ける風に、羽を抜かれた身体が痛みを覚えた。

「……王様は、堂々としているものだわ」
あなたの黒い羽、きれいだと思ったのに。
小さな呟きと、それに続いて聞こえた羽ばたきの音。結局最後まで彼女の顔を見ることはなかった。

「いたい、な」
神をも欺こうとした報いで、私はこれから寒さに震えて鳴くのだろう。だが、自然と笑みが浮かぶ。自分自身ですら認めてやれなかった私を評価してくれていた者がいた、という事実が、失った羽の分よりも私の心を軽くしてくれたのだ。 



今ものすごく童話読みたい気分です
そういえば「羽」と「羽根」って意味が違うんですね
変換機能使うまで気にしていなかったので勉強になりました



 

 


痛いの、痛いの、

話題:SS


ゆう君は僕の従兄弟で、まだ小さいけれど、僕の憧れの人だ。

それは二人で近所の公園に行ったときのこと。転んで泣いていたゆう君に、痛いの痛いの飛んでいけ、と言ったら、彼は不思議そうな顔をして聞いてきた。
「じゃあ、飛んでった『痛いの』はどこいくの?」

そのとき一陣の風が僕の帽子を攫っていったけれど、そんなことに構ってはいられなかった。まっすぐに僕を見つめる彼から、目を逸らすことができなくて。
何故か責められているような気がして、一筋の汗が背中を伝う。ここじゃないどこかだよ、と答えた声は、少し掠れていたかもしれない。
「それならこのままでいいよ。だって飛んでった痛いのが、お兄ちゃんやお母さんにくっついちゃうかもしれないからね」
もっと小さい子のところかも、と彼は続け、ひとつ笑って駆けていった。立ち尽くす僕との間に、距離ができる。

僕は自分が卑怯者だということを知っている。言葉だけの慰めを贈るところも、自分が幸せならそれでいいと思っているところも。……多分こんなこと、彼は考えもしないんだろうけれど。


お兄ちゃん、と呼ばれて振り向くと、目の前にはすっかり忘れていた帽子。それを笑顔で持ってきてくれた彼を前に、うまく笑い返せた自信はない。僕は帽子を目深に被り、帰ろうか、と言って彼の手を引いた。
夕空の下、当たり前のように並んだ影を見ながら思う。
僕もいつか、彼のような人になれるだろうか、と。

 

 

 

 

 

 

 

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