【牛キメラ弓】



槍×牛弓

ニヤニヤと居心地の悪い笑みが印象的な男から牛を一頭買った。
押し付けられたと言い換えても何ら支障は出ない程の安値だった。
部屋の隅に視線を投げれば、微かに上下する毛布の塊から牛の真っ白い髪が飛び出している。
髪の隙間からちらりと覗く異形の耳。
それにはいくつもの穴が開いていた。

『こうも穴だらけでは新しいタグはつけられまい。お前が望むなら焼き印でも当ててやるが、どうだね?』

それらは持ち主を示すタグをつける為に開けられたのだろう。
傷口は塞がってはいるものの、開いた穴は元には戻らない。
耳は本来の形から歪み、裂けてしまっている箇所もある。
男の申し出は即座に断った。
牛とはいえ見た目は人間と変わりない相手にそんな真似をして喜ぶ程、悪趣味ではないというのが最たる理由だが。
此方の反応を楽しむように笑みを深める男が言い放った言葉に、拘束具をつけられ縮こまっていた牛の鉛色の瞳が恐怖に見開かれたのを見てしまったのだ。



終わり
牛弓ほすぃ