・ついったに投げた中王区の話
・男の扱いは悪い



『応答せよ』

最後に笑うのは乙女

「かっこよかったねぇ」「私◯◯ディビジョン推しだから」「◯◯くんかわいー」
推し色のリングライトやタオルを握り締めてバトルの余韻にワイワイキャアキャアと観客達がさんざめく。
ふっとライトが消えると誰ともなく甲高い会話はなくなり不自然な程の静寂と暗闇の中、カツンカツンという硬質なヒールの音がする。
ステージに観客の視線が一挙に集まる。
高らかに響くヒールの音はステージ中央で止まり、カッと眩いマゼンタカラーの照明に照らし出される三人の女。
観客の手からバラバラと、色とりどりのリングライトやら、各ディビジョンのグッズやらが手放され彼女らの足元に落ちる。
それまで大切に握り締められていた筈のそれらを彼女らは気にも止めない。
好き勝手な好奇と享楽に熱を上げ浮わついていた女達の表情は一転していた。
その場の全ての女が眉を吊り上げ、全ての女が唇を引き結び、全ての女が怒り抗う者の目をしている。
一つの目的をその場の全員が見据え、前へ進むべく統率された集団の目。
幾千幾万のそれらを煽動するは舞台を支配する三人の乙女だ。

「Just do it !!」
「Just do it !!」
「Just do it !!」
「Just do it !!」
「Just do it !!」

一矢乱れず拳を振り上げ、声を揃えて張り上げる。
憤怒を込めて。
渇望を込めて。

乙女らよ、応答せよ。
しかして掃討せよ。
何に遠慮することもない。
中王へ。
中王へ。
さぁ、革命の時間だ。
空気を揺るがすは乙女らの鬨声だ。

地に打ち捨てられ土で汚れ踏み砕かれるそれらをかえりみる者はその場に誰ひとりとしていない。
前座の出番は終わったのだから──。



中王区からすき