話題:SS



 君の目は絶対に僕を捕らえない。君は草原を駆け抜ける豹、若しくは水中を突き進む鮫。美しく獰猛なハンター。獲物しか見ていない。常に息を潜めていて、僕が話し掛けても小さく頷くだけで返事もしない。
 なのに。君を見ていれば満足してしまう僕は、臆病なのか、それともめんどくさがりなのか。君と同じ場所にいて、君と同じ食事をして、君と同じ空間に居られるだけで幸せに思ってしまう僕を、小心者だと君は罵るかもしれない。
 だけど僕は、それでも構わないと思ってる。君にどんなに冷たくされようと素っ気ない振る舞いをされようと、僕の気持ちが揺らぐことはないから。君は気高い花。君は美しい宝石。世界中のありとあらゆる金・銀・宝石、色とりどりの玉を集めても、艶やかな花、滑らかな衣を飾っても、君の内から溢れてくる雄々しく若々しい美しさには見劣りする。
君は天女か女神か。この世に二人といない至高の人。僕なんかがおいそれと近づいちゃいけない人。だけと君が僕に話し掛けてくれる。たまに無邪気な笑顔を見せてくれる。落ち込んだ僕の背中を叩いて笑い飛ばしてくれる。君から僕に近づいてきてくれた時、僕は震えるほど喜んでしまうんだ。
君は気付かないかもしれない。だけどそれでも構わない。君がいてくれるなら。君が笑ってくれるなら。どうしようもない僕のこの思い、受け取ってもらえなくても良い。僕は、君が好きだ!