わかってた、こうなるってことはわかっていたけど、言えなかった。


「っ、しらいし!」
俺の声になんて見向きもせず、白石の姿はなくなった。

重たい沈黙。
「謙也さん、いまのはあんたが悪いです。」
いつも減らず口ばっかりいう光の言葉が胸に突き刺さった。

「謙也、ほんまどないしてん、」小石川が困ったように問いかけてくる。

けど、「さっき話したとおりや、これ以上はいえへん。俺ん家の事情や。」
ぎゅっと拳を握りしめる

爪が手のひらに食い込む。

「謙也くん、せめて蔵リンには先に伝えておいた方がよかったんとちがう?」小春のその言葉にただ俺は力なく首を横にふった。
白石にこそ、言えない。親友だからこそ。
そして、テニス部全員にも。大事だから、心配なんてかけたくないから。

ーーーーーーごめん。

言えなくてごめん、我が儘でごめん。
けど、言うわけにはいかない。

なにも言わない謙也に一同はなすすべがなかった。

ただ、ひとりを除いては。




「ーーーー.......」


白石と謙也。結局あの日からまともにはなすことはなく、ついに卒業式を迎えた。



そして、


「謙也くん、よくきたね。」
「叔父さん、、こんにちは。」

「謙也、」
「侑士、久しぶりやなあ。元気やった?」
「そないなはなしは後でええやろ、はよ入り。・・・・・調子どうや、」
「なーんも。なんやなん、病人扱いするなや。」
「・・・・・」
「、な。」
「あ、ちょっとのあいだ外おってええ?いま外の空気めっちゃ吸っとかんと忘れてしまいそうなんや。おれ、あほやし!」
「あほ、勝手にせえ。これ着とけ、まだ寒いからな。」
「、、、おおきに。」
侑士の背中を見送って、大きくいきをすう。

忍足総合病院。


これからおれの闘病生活がはじまる。



「、、、」