助けを求めて
死神編。*

20/05/18 16:36 Mon*



Today's Character:xoxo




僕だって、自分が全くの無関係だなんて思ったことはない。

面白い展開になるように引っ掻き回すのは僕の楽しみだし、事件の中心人物の傍に陣取っていたくてこっそり紛れ込むのなんてお手の物だ。

むしろ積極的に関わってきた方だ。



『鷹森夕凪を壊したのはお前だ』


言われなくたって自覚はある。

チアキくんをあんな風にしてしまったのも僕。

ただ、面白い展開になればいいと思っただけなんだ。
なのに、暴走し続けるチアキくんを見て、怖くなった。
もう僕じゃ止められない。そんな現実から目を背けた。

だから夕凪くんを守ってあげたかったという言葉は本心。
夕凪くんを本気で傷付けるつもりなんてなかったんだ。

彼は強いし、乗り越えられる。
助けてくれる人が何人もいるし、登場人物が入り乱れた方がかえって盛り上がる。

そんな風に……彼が生身の人間であることを忘れてしまっていた。


あんなに知りたかった夕凪くんの秘密を、知らなければよかったと後悔している。

今まで僕が悪戯に触れて壊してきたモノがいくつも頭をよぎる。


彼らの感情を利用し、心も体も蝕んだ。




今までは、誰の人生がどう動こうとも、俯瞰で見ることができた。

僕にとってはただの物語だったはずなのに……




「それで僕のところに助けを求めに来るなんて、相当に切羽詰っているんですね」

balls-up…河野くんが鼻で僕を笑う。
でも言い返すことはできない。

本当にその通りだから。


「確かに僕も稚拙なゲームで鷹森先輩を傷つけた方の人間なので貴方と立場は似ているかもしれませんね。ですが、僕に力になれることはないです。当然でしょう」

虫のいい話だっていうのはわかる。

でも、……キミしか思い浮かばなかった。


「それに、そんな重要な話を僕なんかにペラペラと……、ほんとに、何て話をしてくれるんですか……」
「……ごめん」

河野くんに言われるまで、自らの身勝手さにさえ気づけない。



「あんたなんかそのままくたばればいいんですよ」
「……その通りだと思う」


夕凪くんに嫌われるくらいなら、それもアリだな。


「……、ほんっとに、冗談じゃないですよ! 面倒くさいし、迷惑この上ない」

「わかった、ごめん」



もしも生まれ変われるなら、変わりたいと思った。

この胸の痛みを感じられる人間になりたい、なんて。


でも、僕にはどうしたらいいのかがわからない。

どうすれば、夕凪くんを壊さずに済んだのだろう……



「待ってください」

背を向けた僕を河野くんが呼び止める。


「ていうか、あんな重たい秘密を担がされたままじゃ僕の気が収まりません。本当にいい迷惑です」
「ごめん、身勝手だった。どうしたら償える?」


どうしたら、僕は他人を思いやれる?



「鷹森先輩に償いましょう。というか、それ以外何かあるんですか? 仕方がないから僕が相談に乗ります」

「……え?」



いいの?


「虹の死神はballs-upの別の人生だったかもしれないから」


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