2014/3/18
Tue
22:42
正義なんて嘘
話題:創作小説
今回内容がR15か17笑
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誰かに監視されているのか、単独行動に出ると必ず着信がある。
そのほとんどが非通知で素性の知れない輩からだ。
本人から直接かかってくることなんて一度もない。
表向きは全国的に名の知れた企業が陣とっている一等地の高層ビル。
実際は恐ろしいほどまで肥大した魔窟だ。
裏口から入るや否や黒服の男たちに両側を固められ最上階へ向のエレベーターに乗り込む。
ガラス張りの箱から見える、雨に濡れる夜景が今日はやけに贅沢なものに思えた。
普段あのなかを這いずり回っている俺を奴はどんな目で見下ろしているのだろう。
開いた鉄の扉の向こうでは革のソファーに六実キョウコがふんぞり返っていて、人の顔を見るなり「なんだ、帝か」とつまらなそうに言った。
「呼び出しておいてなんだはない」
「もしかしたらお前の真面目な同僚かもしれないだろ」
そう言いながら口の端だけに笑みを浮かべタバコに火を付けた。
部屋も家具も衣類も黒、その中にいるものだから病的に白い肌が映える。
「この前調べろと言ってた例の薬。あれは伊馬原製薬が作った新薬で、正確には抗うつ剤を作る過程で出来た覚醒剤だな」
ここ一ヶ月あまりで連続している猟奇的な殺人事件。
親が子を、兄が弟を、妻が夫を、隣人が隣人を、一人が無差別に大勢を、他人が他人を殺す。
場所も発生時刻も手口も違うが、共通しているものがあった。
全員が揃って支離滅裂な動機で犯行に及んだこと。
容疑者全員が精神科に通い、抗うつ剤を処方されていること。
今日の日本において精神疾患など最早珍しくもなんともないが、あまりにも重なりすぎていた。
まさか、と思って薬を調べてみれば予想通りだったと言うわけだ。
(続)
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