大好きよ と 嘘を吐く
ショートストーリー

確かにもう、済んだことなのだ。過去の事は、どうしようもないのだ。変えられないことを、どうこうと、責めたところで、何も、何の一つも、変わらないのだ。

けれど、あたしは、あの子を、許せない。

必要だから、会話もするし、必要ではないけれど、談笑もする。笑って見せるし、時に、怒って見せたりもする。そう。世間的には、仲が良いのだ。

けれど、あたしは、あの子を、許せない。

あたしより、何でも出来て、可愛くて、人当たりも良くて、優しくて。だからと言って。

あたしが先に好きになった人だった。応援すると言ってくれた。その人を、横からさらっていったあげく、棄てたのは、あの子だった。

けれど、それだけが、理由じゃなかったはずなのだ。

わからない。最初から、嫌いだったのかもしれない。許せない、と、憎む理由が欲しかったのかもしれない。

そうだとしても、許していない訳では、ないはずなのだ。

顔を見れば、笑顔で挨拶をするし、談笑もする。約束をして、遊びに出掛けたりもするのだから。

けれど、あたしは、そうやって、憎い心を隠してまで、隣に、居たいわけでは、ないはずなのだ。

嫌いで仕方ないはずなのに、なぜ、突き放して仕舞えないのだろう。

嫌いで仕方ないはずなのに、なぜ、大嫌い、と言えないのだろう。

もどかしくて、苦しくて、だからまた、嫌いになる。やっぱり、あたしは、あの子が、大嫌いだ。あたしは、いつも、そこに、落ち着く。

午前1時、ベッドの中で、あたしは、静かに、あの子を憎む。



end
話題:SS


12/12/28  
読了  


-エムブロ-