降り積もる それは
ショートストーリー

ほの暗い空を見上げた。その暗いところから、真っ白い雪が、降りだした。あたしたちの罪を覆い隠すように。

「寒い…」
「そりゃあ、雪だしな」

彼は、あたしにマフラーをまいてくれた。

「え、でも、寒いでしょ?」
「お前こそ、首出てるじゃん」
「んー、うん、ありがとう」

寒くて、暖かくて、あたしは、このまま、死んでしまいたくなったのだ。

「ねぇ、マフラー、もっときつく絞めて?」
「首絞まるよ?」
「うん。殺してよ」
「…いいよ」

彼は、笑って、マフラーを絞め続ける。視界が、揺らめいて、あたしは、意識を手放した。

目覚めたのは、どこかホテルのような、一室だった。

「おはよ」

彼が、隣で横になっていた。

「ここ、どこ?」
「ラブホ」
「ふーん。あたし、死ななかったんだ」
「んーん、死んだよ」

彼は、良くわからないことを言う。

「お前は一回死んだの。でも、俺が、生き返らせた。だから、次死ぬときは、俺が殺すとき、わかった?」

可愛い嘘を言うものだ、と思いながら、あたしは、一度だけ頷いた。

「死ぬまで一緒だね」

あたしが言うと、彼は、嬉しそうに、頷いた。

雪に紛れて、この、ささやかな罪が、誰の目にも、触れないことを、あたしは、静かに祈るのだった。



end
話題:SS


12/12/27  
読了  


-エムブロ-