ログイン |
「こういうのは、嫌だなあ」
彼女は、DVDを観終わった後、ぼそりと呟いた。
《後は、さよならだけ》
「そう? 僕は、アリだと思うよ」
「どうして?」
彼女は、平然を装って、でも何故か、泣きそうな顔で言う。
僕は、特に思い当たる節もなかったから、淡々と答えた。
「愛して、愛して止まない人の、幸せのためなら、僕は、身を引きたいと思うからね」
彼女は、そう、と悲しそうに笑った。
「どうしたの?」
僕は、訳が解らなくなって、少し苦しくなって、誤魔化すように、彼女を抱きしめた。
「どっか、いっちゃうのかな、って、思ったら、寂しくて、さ」
僕は、驚いてしまって、それからすぐに、可笑しくなって、少し笑ってしまった。そんな僕に、腕の中の彼女は、むっとした顔をむける。
「どこにも、いかないよ?」
僕が言うと、彼女は、でも、と口をつぐんだ。僕は、彼女の頭を軽く撫でながら、笑った。
「君が、どこにも行って欲しくないって、思ってくれてるうちは、どこにいけるって言うの?」
僕は、静かに、彼女にキスをした。
「じゃあ、あたしの前から、勝手にいなくならないで」
「うん、もちろん」
「…絶対?」
「絶対。僕はさ、愛して、愛して止まない人の為なら、何でも、してあげたいと思ってるんだよね。悲しませるなんて、もってのほかだと思うよ」
「うん」
「だから、君が嫌なら、僕は、君に、さよならなんて、言わないよ」
彼女は、泣きながら笑っていた。
end
話題:SS