「男の八割は浮気をする。本当か、嘘か」
ナオは真剣な顔で問い掛けてきた。
「本当とも、嘘とも、とれるかな」
俺は、言ってからグラスを傾ける。
「まあ、概ね正解。満点の回答は、男の八割は浮気をする。ただし、女も同じ。女だからって浮気しない訳じゃないのよね」
俺は、クスリと笑う。
「それ、ナオのことだろ」
「あはは、当たり」
ナオには、半年付き合った男がいる。にもかかわらず、友達と遊んでくると称して、俺と酒を飲むのだ。
「彼はさ、あたしが、絶対に、浮気しないと思ってるのよね」
「良いじゃないか」
「良かないわよ」
ナオは酷く不機嫌そうに、グラスを煽った。
「どれだけ放っといても、嫌われないと思ってるんだから」
「彼のこと、嫌いなの?」
「嫌いじゃないけど、そういう風に、安心感持たれたら、腹が立つじゃない。釣った魚に餌をやらなかったら、魚なんて逃げるでしょ?」
あるいは、飢え死によ。ナオは吐き捨てるように言った。
「で、今、ナオは、つまみ食いでもしてるってとこ?」
「そーねー」
ナオはグラスを空にすると、俺に体重をあずけてきた。
「お腹へって、死にそうだもん」
「腹一杯、食っていいぞ」
「ふふ、いただきます」
ナオは言葉と同時に、貪るようなキスを仕掛けてきた。
俺は、俺だったらナオにこんな思いさせないのに、と思いながら、ナオを抱いた。
end
話題:SS
12/11/01