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「トリックオアトリート!!!」
お帰りなさい、より先に、マンションの一室に響いたのはリンの声だった。
「おー、気合入ってるなー」
トモヤは、楽しそうに言う。
そう言いたくなるのも、この部屋と、リンの姿を見れば、仕方ないだろう。
部屋中に、ジャックオランタンやら、魔女やら、お化けがいて、リンはというと、猫耳を生やしているのだから。
「うんっ! で、トモちゃんは、お菓子くれるの?! それとも、イタズラ?!」
リンはニコニコ笑いながら、両手をそろえて、トモヤに差し出した。
「もちろん、お菓子だよ」
トモヤは、持っていたビニール袋を差し出した。
中身は、ハロウィンバージョンのお菓子である。
「わ、すごーい!!! 可愛いっ!」
「だろ?」
トモヤは、得意げに笑った。
ソファに腰掛けたトモヤは、リンの尻尾が揺れるのを目で追いながら、リンに声をかけた。
「リーンー」
「なぁに?」
「トリックオアトリート」
「…ん?」
「オレには、お菓子無いの?」
リンは、ケロッとした表情で、言い放った。
「ハロウィン予算は、部屋の装飾と、衣装になっちゃった!」
トモヤは、予想通り、とでも、言いたそうな顔だった。
「じゃ、リンには、イタズラだな」
end