見上げた夜空には、満点の星空が広がっていて、綺麗だなあと思った。死のうと思っていていも、綺麗だなあ、なんて、呑気なことを考えられるんだなあと思った。
ビルの間を、流れ星が通り過ぎた。あたしも今から、ビルの間を、すーっと、流れ落ちるのだ。あの、流れ星のように。
覗き込んだ、ビルの下に、ヤンキーが溜まっていた。ふと、思う。
本当のヤンキーは、普通の人間には、優しい。中途半端なヤンキーは、誰にでも乱暴だ、と。
何と無く死にたかったあの頃は、口を開けば、死にたいと言っていた。どうやって死のうか考えはじめてからは、死にたいとは、口に出さなくなったなあ、と。
同じだなあ、と思ったのだ。
死にたい気持ちはヤンキーと同じ。
死に逝く姿は流れ星と同じ。
あたしらしさなんて、これっぽっちも、無かったんだなあ、と思う。
切なくなった。涙が出た。鼻水も出た。汚いと思った。気にする必要はないと思い直した。どうせ落ちたら何もかもぐちゃぐちゃだから。頭が割れて脳みそが飛び散るし、骨もたくさん折れるんだろう。
ごしごしと目を擦って、もう一度、空を見上げた。やっぱり、星はきれいだった。
あたしは、煌めく夜空に視界を奪われ、高層ビルの最上階から、転落死した。
end
話題:SS
12/09/14