術者、対峙
ショートストーリー

「愛してるのになぁ」
「私も、愛してるよ」

お互いに、発したのは、愛を告げる言葉であったはずなのに、両者は、張り詰めた空気で、対峙していた。

「「なのに、敵同士だったなんてね」」

《術者、対峙》

「もう、人殺し、やめない?」

男は、苦笑いをした。

「仕事だもん、無理よ」

女は、にこりと、笑う。

「だったら、殺さなきゃいけなくなるんだけどなぁ」
「邪魔するなら、私も、君を、殺さなきゃいけないんだけどね」

女の方は、構えていた。

「全力で、邪魔するよ。僕も、仕事だから」
「そっか」

言葉と同時に、両者は、術を展開する。

そして。

「強いなあ…」

負けたのは、男の方だった。

「まあね」

女は、瀕死の男の傍らで、立ち竦んでいる。

「でも、これで、最期に、呪いをかけることが出来る」
「呪い?」

女は、男の傍らに、しゃがみこんで、顔を覗きこんだ。

「君の呪術は、愛する者の手によって、殺されたときのみ、継承する」
「…ぇ」
「これで、その呪術は、繁栄しないだろ?」
「あはは、やな奴」

それを最期に男は死んだ。

女は、死んだ男に、口付けてから、その場を去った。

これが、呪われた呪術の始まり。



end
話題:SS


12/08/25  
読了  


-エムブロ-