君の口から聞きたいの
ショートストーリー

「ねぇ、なんでさー、男の子って、言わなくてもわかるだろ、とか、思うんだろ」

ファストフード店で、シェイクをすすりながら、ナナミはぼやいた。

「男じゃないから、わかんねぇっつーの」

リサは、指先につまんだポテトを振り回して答える。ナナミは、リサの回答を無視して続ける。

「だってさー、美味しいもの食べたら、とりあえず、美味しい! って、言うじゃん?」

リサは、ポテトを咀嚼しながら頷いた。

「だったら、黙ってキスして、抱き締めて、抱くより、好きって言ってキスして、大好きって言って抱き締めて、愛してるって言って抱いてくれても、いいと思わない?」

リサは、険しい表情をする。

「うーん。悪くはないと思うけどー、正直、そんな男、若干、気持ち悪くない? キスする度に、好き、って言われてもウザいし、嘘っぽい」

今度はナナミが険しい表情をした。

「あうー、確かに。でもでも、やっぱり、好きとか、言われたい!」

リサはそれを聞いて、目線をナナミの後ろの方にやり、ニヤッとした。

「アキー。聞こえたー?」

ナナミは、真っ赤になって、後ろを振り返った。

「あっくん、いつからいたの…」

ナナミは、絞り出すように言う。

「最初からです、ごめんなさい」

アキは、苦笑い。アキの向かいに座っていたシュウがリサに声をかける。

「リサ、先帰ろーぜ」
「おー」

リサは、カバンとシェイクを手に持ってから、ナナミに、じゃーね、と声をかけて、店の外に出た。隣には、同じ様に、カバンとシェイクを手にした、シュウがいる。

「リサ、好きだよ」
「は? 急になに? 頭大丈夫?」

リサは、照れ隠しに、ひどい言葉を投げ付ける。シュウは、それを、気にも止めずに、笑った。

「いつも言われると、ウザいし、嘘っぽい、ってことは、たまには、言って欲しいってことだろ?」

シュウは、ニヤニヤと笑っている。リサは、はいはい、と言いながらも、嬉しそうだった。

***

「何でこんなことに、なってるのよー」

ナナミは、アキに向かって、ぼやいていた。

「最近、なっちゃん機嫌悪かったから…」

アキは、少し寂しそうな顔をした。

「え、バレてたんだ」
「なっちゃんのことだから、わかるよ?」

ナナミは、嬉しさと恥ずかしさと、申し訳無さとで、苦い顔をする。

「ごめんね、なっちゃん。ちゃんと、好きだよ」
「うん、わかってるよ。あたしこそ、ごめんね。あたしも、あっくんのこと、大好きだよ」

顔を見合わせて、二人は、笑っていた。



end
話題:SS


12/08/20  
読了  


-エムブロ-