「トモちゃん! はいこれ、プレゼント!!」
いつもは、そういうことをしないリンが、トモヤに手渡したのは、小さな紙袋だった。
「中身は?」
「チョコレート!」
「なんかあったっけ?」
「んー、感謝の気持ち…あはは」
リンは照れたように、笑った。それから、トモヤに背を向けて、小さな声で続ける。
「あたしさ、いつも我儘言うじゃん? トモちゃんは、それ聞いてくれるけど、それって、当たり前じゃないし、いつも側に居てくれてるのも、当たり前って訳じゃ、ないんだなーって、ふと思ったから…」
語尾が小さくなっていくと同時に、トモヤはリンを抱き締めて言った。
「どこにも、行かないよ。で、何あった?」
「ん、うん。こないだねー、トモちゃんが、どっか行っちゃう夢みたんだよね」
リンはトモヤに身体を預けて、少し寂しげに、笑った。
「俺はどこにも行かない。リンとずっと、一緒にいる。リンが、嫌だっていってもな」
「あはは、ありがと」
リンは、何時もと同じように、笑った。
「チョコレート、一緒に食べるか?」
「たべるっ!」
end
話題:SS
12/08/18