終わりゆく雨に打たれて
ショートストーリー

ざばさばと雨が降る音がした。それに釣られて、傘の代わりに、煙草を一本とライターを持って、外にでた。

自分の影で、煙草に火をつける。

雨に打たれながら吸う煙草は、何時もの煙草より、美味いと感じた。

吸いきった煙草を、ぐしゃりと握り締め、顔を上げる。強くなり出した雨が、目に入って、目尻から流れていった。

それが、涙のようで。少し、泣いてみたくなる。泣けもしないのに。代わりに、不格好な笑いがもれた。

雨が服に髪に浸透する。ああ、寒い、なあ。

もう、夏も終わりなのか、と、しんみり思った。同時に雨がやむ。夏の終わりの、通り雨だったようだ。

もう一度空を見上げてみたものの、分厚い雲が邪魔をして、太陽も月も星も、なにもかもが、見えなかった。

こんな気分のときは、あいつの笑顔が、あいつの、キラキラした、太陽か、月か、星みたいな、天真爛漫な、そんな笑顔が見たい、と思った。



end
話題:SS


12/08/15  
読了  


-エムブロ-