【竹島で二日の出(ふたひので)】


 奴が迎えに来たのは朝の5時前だった。
 行き先は蒲郡の竹島だ。
 雪が降るとか天気が好くないとかの予報のために、元旦の初日の出を見に行くことを諦めた僕たちだったが、カメラをやっている奴が諦めきれず、一日ズレても良いからと〔二日の出(ふたひので)〕を見に行こうと誘いに来たのだ。

 竹島に着いたのは6時半前だった。
 日の出は7時だ。

 当初、僕たちは竹島に渡る橋の手前で写真を撮ろうとしていたが、水平線に広がる空の色から、太陽の出る場所はかなり左の方だというのを感じ、長居端を渡って突き当たりの竹島に入る地点に移動し、太陽が顔を出すのを待った。
 海の上なので、普段なら強く吹いている風も無く、気温は低かったが空は穏やかに明るさを増していった。
 「あっ、出た!」
 近くにいた若い書生の声が聞こえた。
 海からの日の出はオレンジ色に輝き、感動的だった。

 昨年の冬至の前に伊勢神宮の宇治橋前の大鳥居の間に姿を現す日の出を見に行ったが、やはり僕は海から出る太陽の方が好きなんだと確認した。
 ただ、海からの日の出は美しいが、写真に収めると、どの海でもほぼ同じ風景なので、カメラをしている奴には物足りないのかも知れないなと思った。

 太陽が上がり、集まっていた30人ほどの人たちもバラバラに姿を消していき、僕たちもその場を離れ、島に入り、八百富神社に参拝し、島の南端に出て、島を半周するように作られている遊歩道を通って元の場所に戻り、少し風の強くなった橋を渡って竹島を離れたのである。