元老院の命により紀柳院鼎を倒すことに動き出した飛焔。とはいえ相手は毎回来るとは限らないため、戦闘員をゲリラ的に出現させることにした。
「紀柳院が出てくれば計画はうまくいくんだが…。元老院…めんどくさいことを命令してきたな」
飛焔、少し愚痴る。
飛焔の読み通りにゼルフェノア隊員が出動。飛焔は高台から隊員を見る。
あの仮面の女…紀柳院鼎はどこだ?
ゲリラ的に出現した戦闘員相手に隊員達は次々と倒していく。晴斗達は違和感に気づいた。
「御堂さん、これ…戦闘員しかいないよ!?」
「何の意図があるんだ…?」
鼎は彩音と共に銃で応戦してる。
ブレードがあればもっと有利に戦えるのに、その日本刀型ブレード「鷹稜(たかかど)」はまだ長官が調整に時間をかけているらしい。
飛焔はニヤリとした。
見つけたよ、君を。紀柳院鼎…!
飛焔は突如、鼎だけ狙い襲撃したのだ。一瞬だったので周囲はまだ理解出来てない。
鼎は飛焔により、首をじわじわと締め付けられる。
「ひ…えん…!最初から私を狙って…」
「気づくのが遅いよ、紀柳院鼎。いや…都筑悠真。君には死んでもらうよ?」
鼎は必死に飛焔の手を振りほどこうとしている。鼎は仮面姿だが、明らかにもがき苦しんでいた。
こいつに殺されてたまるか…!
晴斗は飛焔に向かい、背後を突いて攻撃をする。衝撃で飛焔の手が鼎の首から離れる。
鼎は彩音になんとか助け出された。首を絞められた影響でむせている。
「鼎、大丈夫!?ここにいると危ないよ、一緒に避難しよ」
彩音はなんとか鼎を連れ出す。
飛焔は鼎を追おうとしたが、晴斗と御堂に阻まれた。
「てめぇ、鼎に何しやがんだ!!」
御堂はキレていた。御堂からしたら、後輩の鼎がこれ以上傷つくのを見ていられなかった。
御堂は飛焔に銃撃するが、かわされてしまう。
晴斗はブレードを特殊発動させ、飛焔と交戦。御堂は晴斗の援護という形になった。
「晴斗!少しでもいいから飛焔にダメージを与えろ!」
「言われなくてもやってる!!」
晴斗は飛焔の炎が変化した剣と、ほぼ互角に剣戟していた。
この少年…いつの間に成長してるんだ!?
晴斗は飛焔人間態に前回よりもダメージを与えることが出来たが、飛焔に逃げられてしまう。
「消えた!?」
「逃げられたか…」
組織車両内。鼎は飛焔の恐怖に怯えていた。
「飛焔は私を殺そうとしていた…」
鼎の声が震えてる。
「鼎、落ち着いて。晴斗くんと御堂さんがいなかったら…ヤバかった…」
あれは炎を使っていなかった。どうせ戦うなら…火を使えと言いたい。
そして…鷹稜はまだ調整終わっていないのかと気になった。
調整が終わるにはあと1日かかると聞いた。いや、半日か?
長官の進捗状況にもよるが。
本部・司令室。
「飛焔は明らかに鼎を狙っていたのか。わかったよ。長官に鷹稜の調整を早めに完了させるように促してみるから」
宇崎は優しかった。鼎をかなり気づかっている。
鼎は首を触っていた。相当強い力で絞められたのだろう。
本部・研究室。
蔦沼は急ピッチでブレードの調整を進めていた。宇崎が再びやってくる。
「飛焔は明らかに鼎を狙ってますよ!?鷹稜ないとめちゃくちゃ不利すぎますって!」
「明日の朝には調整完了させるから、今日の僕は徹夜だよ。
飛焔の目的が明らかになった以上、時間をかけられないからね。元老院は意図があるのだろうよ」
元老院の意図…?
「とにかく明日には紀柳院に鷹稜をお返し出来るから。しかし、暁は成長が目覚ましいな」
「どんどん伸びていますよ…」
「ほらね。暁をゼルフェノアに入れて正解だっただろ?とんでもない逸材みたいだね。彼はもっと伸びるよ」
「のびしろがあるってことですか」
「紀柳院がいることも影響してるんだろうな。暁からしたら、紀柳院の正体は『都筑悠真』…本当の姉のようにしてくれた『悠真姉ちゃん』なわけだし。
姿や名前は変われど、彼女は彼女だからなぁ…」
「鼎のやつ、飛焔に怯えてなきゃいいけど」
一方の鼎は飛焔に怯えるどころか、逆だった。
あれからずっとトレーニングルームに籠っている。さすがに様子見に来た彩音と時任は心配した。
「鼎、そろそろやめなよ…」
「きりゅさん、もう1時間以上やってるよ!?休んだ方がいいよ!」
「わかっている…。休憩が必要なこともわかっているが…飛焔が許せないんだ…」
鼎はたまにストイックになる時がある。
彩音はさすがに鼎を制止した。身体の負荷を心配したからだ。
「これ以上やるとトレーニングでも負荷がかかっちゃう。鼎、もう今日はやめようよ」
「ブレードさえあれば…」
「ブレードは明日には調整完了するって聞いたよ。とにかく休んで。身体を休ませることも大事なんだよ」
「…わかった…」
鼎の声が悔しそう。
その日の夜。研究室はずっと灯りがついたままだった。
蔦沼は夜通し、鼎の日本刀型ブレード「鷹稜」を最終調整していた。深夜にもかかわらず、南も様子見に来てくれた。
「調整、どこまで進みましたか?」
「あと少しで調整は完了するよ。南、今何時?」
「深夜2時過ぎてます」
「朝には『鷹稜』の調整終えるから。明日…いや、今日か。彼女にお返ししたいからね。飛焔はまた来る。狙いは明らかに紀柳院だが、この鷹稜があれば彼女は鬼に金棒だよ」
鬼に金棒って相当なんじゃ…?
そして翌朝、司令室には調整が終わった日本刀型ブレード「鷹稜」が机の上に丁寧に置いてあった。
宇崎は蔦沼からのメモを見た。
『僕は夜通し作業がかかったのでこれから寝るので起こさないでね。鷹稜は調整完了したから紀柳院に渡して欲しい。用があったら南に伝えてね。 蔦沼』
長官、夜通し作業していたのか…。