蒼い炎を使う怪人の一連の放火事件が起きてから3件目。その3件目で晴斗は敵サイドに「元老院」なる組織があることを知る。

晴斗と僅かな間、対峙した元老院の女性とは一体何者?



放火事件3件目から数日後。宇崎は刑事の西園寺にあることをリモートで聞いていた。


「行方不明の少女がいないかって?あぁそういえば6年前に行方不明になった高校生がいましたよ。未だに手がかりありませんが」

「西園寺、その高校生の名前を教えてくれ。あと資料の転送も頼む。気になることがあるんだ」
「気になること?…ちょっと待ってて。今データをゼルフェノアに転送しましたよ。彼女が気になっているんですか?」


宇崎のPCには警察から転送された、6年前に起きた女子高生行方不明事件の詳細資料が。
資料には「桜井流葵」と記されている。さくらいるき?彼女の顔写真と身体的特徴もあったが、晴斗が見た元老院の女と背格好が似ているな…。顔がわかればいいのだが。


「似てる…。あいつと似てる…」
「宇崎司令、どうかしたんですか?」

「もしかしたらこの流葵って人はとんでもないところにいるかもしれないよ。推測だけどね。警察は介入出来ない領域だからうちでやるから。西園寺は4件目が起きる前にうちの隊員使ってでもいいから先回りしろ」
「4件目の目星がついたんですか!?」


宇崎は西園寺のPCに資料を転送。

「解析班の読み通り、3件目はこの区域で発生した。4件目はここから3q圏内だろう。警察とうちの隊員で怪人による放火を防ぐ作戦に出ようと思う。そろそろ負傷者出てもおかしくない領域に来たからな」

「それと彼女の行方不明事件は別件のはず…」
「別件だけど、とんでもないところで繋がってるっぽいんだよ。うちの隊員のおかげで見えた」



異空間・元老院。元老院のとある部屋で流葵は接触しかけた少年についてサーチ。

元老院の中にいる時・元老院の一員として動いている時は仮面は人前では外せない独特な掟。
黒いローブは戦闘時脱いでもいいことにはなってるが、正式な場にいる場合は黒いローブ&仮面姿。ローブのフードは被ることが推奨されている。

つまり、元老院の3人は互いの素顔を知らない。



流葵は6年前に行方不明になっていた。
本人はわかっていないが、何かをきっかけに異空間に迷いこんでしまい→そのまま元老院に拾われるような形でいる。長や若い男性が優しいのはそのため。
そして元老院の監察官という、役職まで貰うまでになった。

彼女は知らず知らずのうちに敵サイドに洗脳されていたのである。
現在の彼女は元老院を拠り所として生きている。桜井流葵は被害者だった。



ゼルフェノア本部・司令室。晴斗は宇崎に呼ばれていた。


「室長、いきなり呼び出しってなんなんですか…」

「晴斗。お前はあの元老院の女に目をつけられたかもな。気をつけろよ」
「元老院の女…って、あの黒いローブに仮面の人ですよね!?…どういうこと?」


宇崎はなんとか説明する。

「まぁなんていうか…因縁つけられた的な?あの女は幹部クラス以上とは言ったが、やっぱり人間と見ていいだろうよ。警察に調べて貰ったら、6年前に行方不明になった女子高生に似てるんだよ。顔は見えないが特徴はほぼ一致してるんだわ」
「つまり被害者なわけ!?」
「おそらく元老院に洗脳されている。何かしらのきっかけで異空間に迷いこんでしまったんだろうな」


晴斗は信じられないような顔をする。

「そんなことあり得んの!?」
「あり得るの。たまに変な場所から行方不明者が見つかったりしてんのは異空間に迷いこんだ説が有力だ」


それって神隠し…。一気にオカルトめいてきた…。


「その行方不明者の名前は『桜井流葵』だ。るき。もし、元老院の女が名乗るようなら名前を覚えておけよ。こっちはこっちで動くから。鼎も協力すると言ってる」

そういや鼎さんは炎に戦意喪失レベルのトラウマあるから、今回の一連の任務は行けないんだっけ――。
鼎さん、あの火傷だものトラウマレベルも深いから…。


鼎も司令室にいた。気づかなかった。
「私は室長と共にバックアップする。晴斗はその女との戦闘は避けられないだろうな。相手が人間なら気絶させろ。殺すな、手加減しろ」

手加減しろといきなり言われましても〜。


宇崎は晴斗にアドバイスした。

「相手は敵に洗脳された人間だ。対怪人用装備は人間に害はない。つまりちょっと痛いだけなの。だから気絶させろって言ってんの!ブレードも人間相手なら峰打ち状態になるから大丈夫だ。とにかく言い方悪いが生け捕りにしないとならない相手なの!」

「あの〜。発動は使えますか?」
「発動…使えるけど、最悪な場合にだけ使え。人間相手でもそこそこ効くから。相手は死なないから安心しろ」


鼎は一言加えた。
「お前のブレード、2回トリガーを引けば特殊発動になる。いいか、言ったからな」


特殊発動って、ナンデスカ…?
鼎さんは教えてくれなかった。自分で理解しろとの意味らしい。



そして、さらに数日後。蒼い炎を使う怪人は出現しない代わりに、あの元老院の女が晴斗に挑戦状を叩きつけてきた。

「晴斗、本部に元老院から挑戦状が来ているぞ。あの女に足元見られてる。…てか、本部に直接送るか!?」
「挑戦状に『流葵』って名前書いてありますよ、思いっきり…。律儀なのかな…」


2人は挑戦状に困惑。鼎だけ淡々と言う。
「それだけ晴斗を倒したいのだろう。晴斗、行ってこい」
「鼎さん、なんか冷たくない?気のせい?」
「気のせいだ」


鼎は鼎で元老院の仮面の女が気になっていた。敵サイドの元老院の人間は全員仮面で顔を隠しているというが…。敵なのにシンパシーを感じる…。
自分も白い仮面を日常的に着けているせいか。私の場合は仮面がないと、外出出来ないレベルの大火傷の跡が顔にあるからだが…。



都内某所。廃校。
元老院の女こと、流葵は人気のない廃校を指定してきた。晴斗は霧人のバイクで廃校へ到着。

霧人は晴斗に「健闘を祈る」…と言って去っていく。この戦いは1vs1。
晴斗は流葵が来ていないことに気づいた。あの元老院の女…流葵さんがまだ来てない…。


やがて廃校にだんだん空気がピりつき始める。


黒いゆったりとしたローブを羽織り、白い装飾がついた仮面を着け、フードを目深に被った女性が現れたのだ。
ローブの下は身軽な格好にも見えたがわからない。彼女はローブを脱がないで戦う気だった。


「約束通り来たのですね。暁晴斗。名乗り遅れました、私は元老院監察官・流葵と申します」

めちゃくちゃ丁寧な話し方をするなー。仮面姿なので顔は見えないが、立ち振舞いが上品というか…。

「なんで挑戦状を叩きつけたんだ!?」
「貴方は私に接触しようとしましたね?仮面に触れようとした。敵に触れられる気持ちなどわからない…ですよね…」

流葵の語気が強くなる。この人…我が強そうなんだが。晴斗は気迫に負けそうになる。
言動は明らかに元老院中心。仮面のことには特に敏感だとわかる。


どうやら元老院において仮面は重要なものだとなんとなく察した。


晴斗はジリジリ後退しながらブレードを使うことに。

流葵さんの目を覚まさなくちゃ!この人完全に洗脳されてる!



司令室では宇崎と鼎が晴斗に通信していた。


「流葵の様子を伝えろ」

「鼎さん、かなりマズイですよ!敵意剥き出しにしてる」
「晴斗、ブレードで峰打ちだ。それでもダメなら肉弾戦でいくしかない。おすすめしないけどな」
「ちょ、室長!?おすすめしないってそれヤバいって」


晴斗はまだ気づいていなかった。元老院の実力を。
洗脳されているとはいえ、流葵を完全に舐めていた…。

流葵は小型ナイフのようなもの「のみ」持っていた。晴斗は完全に油断した。
ブレードで手加減するも、流葵は躊躇いもなく攻撃する。強い!


相手は仮面の人間、しかも女性。…なのに何この強さ…。
晴斗は知らぬ間に宙を舞っていた。吹っ飛ばされたのだ。そして地面に落下。


流葵は冷酷に詰め寄る。
「元老院の名の元に、貴方を倒します」

完全に洗脳されてやがる…!
晴斗、いきなりピンチ。





第12話(下)へ続く。