話題:今日見た夢
なんだかなかなか寝つけなくて、まぁ寝れたことは寝れたのだが…。眠りが浅かった。


蔦沼は何度目かの美野の検査をしてる。美野は約1週間前に鐡の被害に遭ってしまい、御劔同様顔を奪われている。
今現在、素顔で話せる美野の話し相手は鼎だけな状態。


「…何かありましたか…」
美野の声に力がない。

「何回調べても同じなんだよ。美野は顎に違和感があったと言ってたね」
「何かがへばりついた感覚がすごくて…」
「それは一体化した肉の蓋だね。顔全体をびっちりと覆ってしまっている」
「蓋は剥がせないんですか…」
「そんなことしたら元の姿に戻れないかも怪しいぞ!手術も考えたが…本来のパーツを傷つけるリスクがある、危険なんだよ。元の姿に戻すには…鐡を倒すしかないと見ている」


美野はどことなくしょんぼりしたような感じで研究施設を出た。この時点ではまだ素顔。鼎が来た。
「また検査を受けに行ったのか…美野」
「望みがあるかと思いまして…」美野はフードを目深に被る。そろそろメイン施設に着くからだ。素顔を鼎以外には見られたくはない。美野は鼎の後ろにくっつくようにした。

「どうしたんだ?美野。そんなにべったりくっかなくても」
「検査に気をとられて、制御スーツ…忘れてきまして…。マスクがないからこのまま素顔を見られるわけには行かない…」

「ならこれを使えばいい」
鼎は白いフェイスタオルを渡した。
「タオルを顔に巻きつけろ。優しくな。一時的だがその顔は隠すことが出来る」
美野はフードを脱ぐとタオルを顔に巻きつけ、後頭部で結んだ。そして再びフードを被る。

「なんで紀柳院さんはそんなに親身なんですか…?紀柳院さんも被害に遭っているんですよね…」
「顔に大火傷を負ったと言ったが、厳密には全身火傷だよ。それも重傷レベルだった。だから仮面なしでは外出すら出来ないんだ。12年前の事件で私は唯一生存した…」
「それって都筑家事件じゃ…。でも紀柳院さん名前違いますよね?どういうこと?」
「あぁ、名前を変えたんだ。本名は『都筑悠真』だが、事件以降は組織に匿われていた。そこで名前を『紀柳院鼎』に変えたんだよ…。生存していることを悟られないためにな」

鼎と美野はメイン施設の美野の部屋へと着いた。
「鼎さん、あの…もう少し話しませんか…。今制御スーツに着替えてきます」
「マスクは無理して着けなくてもいい。なんだかお前を見てると苦しそうに見えるから」
鐡によって顔を奪われたのに?鼎にはなんとなく表情があるように見えるのか?美野は僅かに元の姿の形跡はあるが、のっぺらぼう状態なのだが…。


しばらくしてから美野は黒い制御スーツの上から服を来て出てきた。マスクは窮屈なのか、素顔のまま。
「ど…どうぞ部屋に入って下さい」
「おじゃまします」
鼎は美野の部屋へと入った。居住区の部屋とは雰囲気が違う。メイン施設内にある空き部屋を借りてるせいか、部屋は狭い。

「風呂やトイレ…部屋にないんだな…」
部屋は寝るだけの部屋に近い。
「近くにトイレはありますので。部屋にお風呂はないから近くのシャワー室を使ってます。ゼノク3階はほとんど人が来ないので一部は好きに使っていいと長官から言われてます。それに今はこののっぺらなのでシャワー室にいる姿を見られたら、ホラーすぎておしまいですね。シャワーは素顔じゃないと無理ですから」
「お前も大変なんだな…」
「紀柳院さんも大変だって聞きました。仮面なしだとあまり見えないんですよね…。紀柳院さんが素顔を見せることが出来る人は数人しかいないと聞きました」
「火傷のダメージでな…。目がやられている。もはやこの仮面は身体の一部なんだ。悪いが素顔は心を許した人にしか見せていない。緊急時は別だが」

鼎は美野の顔に違和感があった。顎のあたり…皮膚…?なんだろうか?何かが薄く捲れかけている。
「美野、顎のあたり…何かが少し捲れているぞ」
「…えっ」
美野は鏡を見た。僅かにだが顎付近から何かが少し捲れている。
これは顔全体を覆っている肉の蓋…の一部なのか?

「美野、今すぐ病院で見てもらえ。私も行くから。痛みはないのか?」
「痛くはないです…」


鼎と美野は病院へ直行した。戦闘医療班のフロアのある一室。
蔦沼ともう1人の医師は美野の顎付近を見ている。

「美野、顎の違和感の正体がわかったよ。顔全体を覆っている肉の蓋が薄く剥がれかけている」
「じゃあ元に戻れるんですか!?」
「逆に難しくなったのかもしれない。鐡は急ごしらえで美野の顔を奪ったことはわかったが…。もしこのまま無理やり剥がそうものなら本当に顔を失うぞ」
「蔦沼長官の言う通りです。保護用のこのマスクを着けた方がいい。窮屈になるかもしれないが、肉の蓋が修復すれば元の姿に戻れる可能性は上がる」

美野は医師から顔の保護用マスクを受け取り、早速着けて貰う。美野はキツそうに見えた。見た目は鼎と似たような白い仮面に見えるが…目元が黒いメッシュだったり、口元が僅かに開いてたりと少し違う。

「それを1週間、着けて欲しいんだ。肉の蓋が皮膚に癒着しないと対処出来ないからね…」
「1週間…」


鐡はある夜、1人でふらっと現れた。美野を観察しに来たのだ。


「美野のやつ、見たことねぇ仮面を着けてるな〜。顔を奪った時にミスしたのがバレたか…ちっ」
美野は窓の外に人気を感じ、見るが誰もいない。近くに鐡がいるとはまだ気づいてない。

美野は付近を覗いていた。突如、顔に違和感を覚え。仮面を外す。違和感の原因は剥がれかけている肉の蓋がむずむずしていたため。

鐡は「剥がせ」と容赦ない命令を美野の脳内に下していた。美野は必死に逆らっている。
鐡はニヤニヤしながら遠くから見ていた。


「あの肉の蓋を剥がしてしまえばどうあがいても元には戻れない。それどころか完全に失う。美野は耐えられるかな…?元に戻す方法はあるんだがな」
「それ、教えてくれないか?鐡」
「お前は!?」

鐡は淡々とした声に振り向いた。そこには鼎がいた。手にはあの短剣。

「紀柳院鼎…だと?」


鼎は美野に優しく話かけ、美野を退避させた。美野は外した仮面を再び着けていた。美野は必死に耐えている。
鼎は美野にあることを強く言った。「その剥がれかけているものは剥がすな。元に戻れなくなるぞ。鐡に耐えるんだ…。失ってもいいのか!?」


「なんでお前は俺の邪魔すんの?またやられたいわけ?」
鼎は短剣を横向きにし、笛を吹き始める。鐡は余裕を失い、苦しみ出した。

「なんでお前はその笛を持っているんだ…」
「誰が教えるか」
鐡は鼎に襲いかかる。鼎の手持ち武器は短剣のみとかなり不利。

鐡は鼎の顔を奪う作戦をとろうとする。
「お前も御劔や美野みたいになればいいのに。なんでお前は仮面着けているんだよ?顔見せやがれ」

鐡は怪人態へ変貌。鼎は短剣だけで果敢に挑むが、怪人態にはほとんど効いてない。やはり笛じゃないとダメなのか…。
鼎は追い詰められた。鐡怪人態は美野の時のように、右手を広げると鼎の顔を優しく覆う。鐡は行った!!…と油断した。

鐡は右手を鼎の顔から外したが何かがおかしい。
「鐡、私の顔を奪おうとしたんだな。残念ながら失敗だ」
「嘘だろ!?おかしい!?確かにお前の顔は奪ったはず…」
「どうやら相手の顔に傷があるとお前は奪えないみたいだな…。私の素顔、お前に見せようか…?」
鼎は静かに仮面を外す。鐡は鼎の素顔を見て言葉を失う。

顔から首筋にかけてひどい大火傷の跡がある。紀柳院は季節問わず頑なに手袋をしているが、あれは全身火傷を負ったせい…。紀柳院は首以外は肌を露出していない。


鼎は静かに仮面を再び着ける。

「鐡と言ったな…。美野の顔を返せ」
「お前も見ただろ…あの筒はもう破壊してしまってないんだぜ?」
「…いや、他にもあるだろ…。お前は隠してる」
鐡は精神的に追い詰められたのか、舌打ちすると姿を消した。


翌日、鼎は昨晩鐡が美野を狙っていたことを蔦沼に報告。美野はギリギリ1週間耐え抜き、顔の異変はなくなった…が、まだのっぺら状態にはかわりない。

「鐡が紀柳院の顔を奪おうとしたのか?」
蔦沼は少し驚いている。
「ですが鐡は失敗しました。鐡は相手の顔に傷があると奪えないことが判明したんです」
「紀柳院は顔に大火傷しているからな…。傷は消えないが」

蔦沼は鼎の仮面に優しく触る。
「仮面を触られるのは嫌かい?」
「いいえ。長官は嫌な感じはしません」
「紀柳院は仮面なしだと外出も困難だからなー。完全に身体の一部だもんね。あ、紀柳院。素顔は無理して見せなくてもいいよ。わかっているから」
蔦沼は研究施設で鼎を検査した時に素顔を見ているが、鼎本人は知らない。


「鐡の動向が余計にわからなくなってきたな…」御堂が考えこんでる。

「鼎さんの顔まで奪われかけたとは知らなかったよ…」晴斗も動揺してる。
「でも鼎は皮肉なことにあの顔の大火傷の跡によって、鐡に顔は奪われずに済んだんだよね…。いいのか悪いのか…」
彩音も複雑そう。

「美野はどうにか耐えて顔を失わずに済んだっていうけどさ、まだのっぺら状態なんだよな…。あの状態から本当に元に戻せるのか?筒は破壊されてんだぞ」
御堂は懐疑的。
「長官に策があると聞いた…。何をするかはわからんが。確実に言えてるのはこの短剣が必要だということだ」


美野は部屋で弦楽器型の武器を練習していた。手にはギター型の武器。
制御スーツ着用状態なので、普通に楽器を演奏しているようにしか見えない。

制御スーツのマスクは通常にしてもらい、弦楽器・打楽器・鍵盤特化型になっている。


「美野、その改良型制御スーツは良さそうか?」
蔦沼は部屋を訪れた。

「えぇ。かなりいいです。指先に弦が弾けるように改良してくれたんですね」
「その指先のパーツは取り外し出来るから、武器ごとに変えればいいよ。だからハープや琴も可能だ。管楽器がダメでも選択肢はあるだろう?。腕輪型のパーツは解除用だ。戦闘時に解放すればいい」
「これで鐡に打撃を与えることが出来る…」

改良型制御スーツには両手首に腕輪型のパーツも付いていた。これは制御解除用。これを解放することで段階的に能力制御は解除される仕組み。
蔦沼は鐡撃破に美野の投入を考えていた。紀柳院と美野がいないと恐らく…撃破出来ない。



決戦間近のある日のゼノクの様子。ほとんど鼎さんと美野中心。
鐡が鼎の素顔を見てしまうところがやけに生々しいよ…。

鼎さんが自ら敵に素顔を見せること自体、珍しい。


明らかに鼎さんは少しずつ変わってきている…。美野の話し相手になるのは予想外だったが。