話題:今日見た夢
なんだか変に生々しい夢を見たんだがー。本当に変な所がリアルだった。


本編に戻った。蔦沼長官の方針により、西澤は指揮権を剥奪される。指揮権は蔦沼親子に。


「西澤室長、鐡は近々来るだろうけど…余計なことは一切しなくていいよ」蔦沼少し怒ってる?
「だからと言って指揮権剥奪までしなくても…」

「入院中の紀柳院に余計なことしたでしょ?出撃させたくないと睡眠薬、盛っただろ?あの時目撃者がいたんだよね。戦闘医療班の1人がたまたま見ていたのさ。それを僕に報告したんだよ」
「…なっ!?」
「駒澤からも紀柳院がなかなか目覚めないと報告が入ってた。搬送直後に紀柳院に投薬したものは1日あれば目が覚めるものだからね。西澤、これ以上隊員に強行手段を使うと…わかっているよな」
「……」


鐡はゼノクに唐突に現れたが、偵察しただけらしい。蔦沼は隊員全員に伝える。


「隊員全員と陽一に告げるけど、鐡はどうやら偵察に来た模様。下手に攻撃するなよ!特に陽一、わかっているな?本当に偵察なのか、今から特殊隊員を派遣する。それで判断する」

特殊隊員?晴斗達は聞き慣れないワードに戸惑う。


3人の黒ずくめ姿の隊員が姿を現した。3人とも戦闘服だが、素肌が顔が一切見えない。どうやら肌全体を覆う黒いスーツの上から戦闘服を着ているように見える。
3人のうち1人は女性のように見えた。彩音は特殊隊員のうち1人のマスクが特徴的なことに気づく。

「ねぇ、あれって美野さんなんじゃ…。あのマスク、口元が薄いもの。それにあの武器、楽器型だよね。遠くて見えにくいけど」
「特殊隊員なんて存在初めて聞いたぞ…。特殊部隊ならわかるが、その縮小版か?それも3人だけ」
御堂は遠目に見ながら特殊隊員の様子を見ている。

特殊隊員3人は戦闘時以外でも軽度用スーツ姿でいるせいか、互いの素顔を知らない。隊員同士でも特殊隊員の素顔はおろか、名前を知らない人もいる。
美野は異例で本部隊員→ゼノク隊員→特殊隊員となったため、ギリギリゼノク隊員数人は名前がわかる程度。美野の素顔を知る人は戦友の木嶌くらい。


鐡はニヤニヤしながら動向を見ていた。
「今日は偵察に来ただけだぜ?そこのお三方よ。やられたいのかな?…ん?黒ずくめの3人のうち、1人は女なのか…」

鐡に何か考えが浮かんだらしい。


鐡は一瞬で美野を捕らえる。美野は羽交い締めにされて動けない。

「美野っ!!」特殊隊員の2人が叫ぶ。
「へ〜。こいつ美野っていうの〜。美野…?美野杏華か…。お前…とんでもないミスをして今でも後悔してんだろ?後悔しきれないよなぁ?御劔を元の姿に戻せなくしたのは…誰だったかな〜?」
「やめて!!それ以上言わないで!!やめてよ!!」美野は叫ぶ。


御劔が元の姿に戻れなくなった原因、「ゼルフェノアの誰かさんのミス」って…。美野!?


13年前、交通事故を装った襲撃で鐡の被害により御劔は顔を全て奪われた。御劔が隊員となりゼノクに行く少し前、鐡はゼルフェノアの隊員達の前に現れる。
その時鐡と交戦したメンバーの中に美野がいた。

美野はまだこの頃、能力を自力で制御出来てはいたが一瞬の油断が引き金となり→能力が暴発。鐡が持っていた金属製の筒は木っ端微塵となり、御劔は2度と元の姿に戻れなくなる。


美野は事の重大さに責任を感じ、ゼノクへ行き→ゼノク隊員へとなっていた。ゼノクでは御劔となんとか仲良くしていたが、罪を償うためでもある。御劔本人は美野がやってしまったことを知らない。
ある放課後、御劔が音楽教師の藤ヶ森に素顔で相談する姿を目撃してしまった美野はやがて学校から姿を消す。


美野は御劔の件で表に出られなくなってしまうと同時に、能力の制御が自力では効かなくなってしまう。
美野は必然的に特殊隊員になるしかなかった。知らないうちに御劔が惨殺されたと聞いた時はショックを隠しきれなかった。


美野が能力の暴発を恐れているのはこれのせい。


鐡は館内にいる隊員にわざとらしく話し出す。
「こいつが、この女のミスで御劔は元の姿に戻れなくなってしまったんだよ…。わかるかな?」
「それ以上言うな!!鐡っ!!」


美野は必死に抵抗するが、鐡の力には及ばない。ちなみに今の鐡は人間態である。

鐡はニヤリと笑うと怪人態に変貌した。
「野上・湯本!美野を急いで救出しろ!!鐡とは交戦するな!!鐡は美野に何かする気だ!!」
特殊隊員男性2人の名前は野上と湯本らしい。

特殊隊員ですら鐡怪人態には歯が立たない。これでは美野が危ない。
鐡は右手を大きく広げると、美野の顔に優しく被せた。

「これでお前も御劔と同じになる…。元の姿に戻せなくしてやろうか?この俺が」
鐡は右手を美野の顔からそっと外す。美野は肌全体を覆うスーツを着ているせいか最初わからなかったが、違和感がだんだん出てきたらしい。

「顔を触ってみろ。お前の顔は全て奪ったからな…美野。お前も御劔と同じ苦痛を屈辱を味わうがいい」
美野は恐る恐る顔を触ってみる。凹凸がなくまっさらになってる…。マスク越しでも感触でわかる…。鐡はマスク越しでも奪えるのか!?


「美野、これが見えるかな〜?他の隊員達も見てるよな?蔦沼も見てるだろ?」

鐡の手には金属製の筒。わざとらしく見せびらかしている。
「さーてこれからどうするか、わかるかな?」
鐡は躊躇なく筒を握り潰した。筒からはぐしゃぐしゃになった発光体が液体のように漏れている。

「これで美野は御劔同様、2度と元の姿には戻れなくなりました。ゼノクには痛手だろうねぇ…音を媒介にする能力者は俺には邪魔だからな。美野の能力は使えなくしてやったぞ?どうする蔦沼」

地面にはぐしゃぐしゃにされた金属製の筒が。鐡はそれを足で踏み潰した。


美野はようやく鐡から解放されたが、自分がどういう状態にあるのかまだ理解出来ていない。美野は特殊隊員2人に抱えられて退避する形となった。


鐡は最悪の形で姿を消した。次は陽一と決着をつけると告げて。
御劔同様の被害者が出てしまうとは…。美野の能力は鐡に対しては有効なだけに、これはかなりのダメージ。
しかも美野の目の前であの筒を鐡自身が破壊するという、エグいもの。


美野は病院の戦闘医療班のフロアに運ばれたが、あの戦闘で元の姿に戻れなくなっていたのは明白なためか…美野は頑なにスーツを脱ごうとはしなかった。
蔦沼は急いで美野の元へ行く。なんとか美野を説得し、スーツを一部脱がせる。素顔が露になったがそこには顔がなかった。まっさらなのっぺらぼう状態。

美野は鏡を見てショックを受けていた。


御劔同様、なんとか見えてはいるし喋れてはいる。視界はかなり歪んで・乱れているようだ。
御劔同様、触られる感覚と視覚は残っていた。嗅覚と味覚はない。


美野は茫然自失状態で蔦沼に呟いた。

「私のミスで私自身も同じ目に合うなんて…。これは宿命なんでしょうか…。もう元の姿には戻れないんですよね…」
「残念ながら…美野…君はもう元の姿に戻ることは出来ない。その姿の自分を受け入れるまで時間はかかるだろうけど…」

「手術も出来ないんですか!?」
「御劔の前例があるからはっきりと言えるが、再建手術は不可能だ。その顔は単にパーツが奪われたわけではない。本来の顔の上に肉の蓋がされ、一体化しているような状態でかなり複雑なんだよ。それも怪人によるものだ。もし手をつけてしまえば死ぬ可能性が高まる。今の君はのっぺらぼう状態だ。全ての穴が塞がっているんだ、死んでてもおかしくない…」


美野はショッキングな宣告を受ける。手術も不可能って…。
だからあの時、御劔は頻繁に相談していたんだ。


「美野にはかなりキツいかもしれないが…。君の能力はまだ使える余地はある。御劔にミスをした罪の意識があるんだろ?…なら生きるしかないな…。荊の道になるけどね」

美野はうなずいた。


しばらくしてから美野は改めて鏡を見た。口元と鼻筋は元の形跡がかろうじてある。
蔦沼が言った通りだった。だから視界は歪んでいるが見えてはいるのか…。見た目はまっさらなのに。


蔦沼は隊員達に伝えていた。

「美野の件だが、彼女もあの姿を受け入れるだろうよ。美野の場合は目の前で破壊されているのだから、そうするしかないんだよ…。だから皆、彼女に対してはしばらくそっとしといて欲しいんだ。鐡は美野を見せしめにしたからな」

蔦沼は静かな怒りを見せていた。


美野は鐡の被害により食事が摂れない状態になったため、点滴を打たなければならない状況になる。
御劔と同じ道を辿っているな…。私…。


美野は御劔とは違い、素顔を堂々と見せていた。病院と自分の部屋限定だが。


病院と自室以外の場所ではどうしてるかというと、フードを目深に被りうつむいて歩いている。美野の場合は制御スーツがあるために、制御スーツの上からフードを被っているような状態。

制御スーツならマスクで顔は一切見えない。美野は鐡に顔を奪われて以降、黒など色の濃い制御スーツを好んで着るようになる。
美野は喋っていても口がないため、そこが気になっていたらしい。マスク越しなら多少はわかりにくい。多少は。


蔦沼は何度か研究施設で美野を検査した。奪われた顔の手術が出来ればいいのだが、やっぱり調べたら構造が複雑すぎてお手上げ。
鐡を倒せば美野は元の姿に戻るのではないか…?いや…そんなわけがない。


美野は鐡の被害に遭って以降、さらに人目を避けていた。部屋から一歩も出ない日もある。
木嶌がたまに来るが、姿を見せずにドア越しに話をするだけ。美野は木嶌に素顔を見せられない精神状態。


御劔について独自に調べていた鼎は美野も御劔と同じ被害に遭ったと聞き、心配していた。
鼎はダメ元で美野を訪ねる。

「私だ。紀柳院鼎だ。少しだけ姿を見せてくれないか…」
「紀柳院さん…?なんで来たんですか」
美野はドア越しに拒絶している。

「鐡を倒すには私の力が必要だとお前が言っていたと晴斗達から聞いて…。頼む、少しだけ姿を見せて欲しい…。少しでいいから…。姿を見せたくないのはわかる。私も怪人の被害で顔に大火傷を負ったからな…。別に素顔は見せなくてもいいんだ…」
ドアが少しだけ開いた。そこには素顔の美野の姿があった。美野は仮面姿の鼎を見たように見えた。


「美野…お前…その顔……」

鼎はどう反応していいかわからない。

「紀柳院さんなら素顔を見せれると思って…。びっくりしますよね。私はまだこの姿を受け入れられなくて…。鐡は私を見せしめにしました」
「美野…無理はするな。お前のその勇気、すごいよ」
「紀柳院さん、時々来てくれますか?鼎さんなら話を聞いてくれそうだから…」

「わかったよ。時々ここに来るよ。その時は素顔でいてもいい。本当は制御スーツ嫌なんだろ?顔を奪われてから」
「ものすごい窮屈です、あのスーツ。あれは人前で着ているだけですから」

「部屋ではマスク脱いでいるんだな…」
「この部屋は滅多に人、来ませんから。この姿になってからはスーツのマスクがしんどくて…。本当はずっと素顔でいたいですが、姿が異様なので仕方なく」


鼎は鐡の見せしめに被害に遭った美野を気の毒に思った。だが、どうすることも出来ない。
鼎は短剣を見つめていた。美野から聞いたが、短剣の笛は自分にしか使えないとは一体…?



鐡による見せしめがひどいし、エグい。御劔の件と美野がリンクしていたが、美野まで同じ被害に遭うとは…。この下り、生々しすぎる…。
しかも美野は目の前で鐡に筒を破壊されているだけに、ショックは大きい。

鼎さんが美野の話し相手になりそうな流れになってる…。美野は鼎にシンパシーを感じたのだろうか…。


鐡のその能力、まだ健在していたのかよと…。


蔦沼と西澤の空気が少し気まずくなってる…。西澤の裏側が少し見えたせいか?