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RKRN nkzik 夢

…ー運命とか、必然とか、奇跡とか
物語の中の事だと思ってたー…



夏休みの図書室はいつも以上に静かだ。
部活に入ってる生徒と数人の教師しか居ないという事もあり、午前中には図書委員の仕事が終わる。
後輩を先に帰らせ、後は戸締りして鍵を職員室に返しに行くだけ。

「…失礼します」

職員室に入り、顧問である松千代万先生を探すが姿が見えない。
今の時間だと、大体国語準備室だろうか…少し遠いが一応報告だけはしに行こう。
職員室を出る時だった。

「…中在家長次!ちょっとこっち来てくれ!」
「…??」

書類やテキストが山積みされた向こう側からひらひらと手招きする数学教師。
一体何の用があるのだろうか。

「大木雅之助先生、何でしょうか?」

面倒な事押し付けられないといいが。
近付くと先生の陰に隠れて見えなかったが、小柄な女子生徒が居た。
この制服は、確か…

「図書室はあと一週間ほど開いてるよな?頼む!その一週間だけでいいから、コイツに数学を教えてやって欲しい!」
「はあ!?私ちゃんと数学出来てますよ!…そりゃあちょーっとだけ成績は良くないケド…たしひきかけわり全部出来る!」
「それだけ出来ても意味ねぇんだよ!!ホントに高校生か!?」
「高校生ですよ!!見て分からんか、らっきょ先生!!」
「見て分からんから言ってんだよ!!らっきょ先生ってちょっといいな!」

やいやいと大きな声で騒ぐ二人。
まるで子どもの様な言い争いが始まってしまった。
まず、たしひきかけわりは四則計算の事で間違い無いだろうか。
そして、話の内容が数学かららっきょにすり替わってるの分かってますか?大木先生。
こうなったら止むのを待つしかない。二人のやり取りをぼんやりと見つめてると、視線に気付いた先生が態とらしく咳き込んだ。

「…とにっかくだ!このままじゃセンター試験どころか定期試験も危うい!!どんなバカな子でも生徒は生徒。なんとかしてやらんといかん…そこで、中在家!お前にこのバカの勉強を見て欲しいって事なんだが」
「可愛い生徒に向かってバカとはなんですか、バカとは!!えーっと、なかざいけくん?ごめんね、先生の言う事は気にしないで」
「…だったら、後は立花仙蔵か潮江文次郎に頼むしかないぞ?いいんだな?」
「それは絶対ヤダ!!センセイは私が可愛くないの!?」

どちらも譲る気は無いのだろう。
平行線を辿る会話は依然として終わりが見えない。
早く帰りたいが、黙って帰る訳には行かないので最終手段を取る事にする。

「…いいですよ。勉強、みます」

そう言った途端、二人の言い争いがピタリと止んだ。
小平太の相手をする事を考えたら幾分マシだろうし、高が一週間くらいならと無理矢理自分を納得させる。
先生は手を握りながら、ありがとう!と何度も頭を下げた。
そして、

「私の所為で迷惑かけちゃって…ごめんね、なかざいけくん」
「いや、大丈夫。人に教えるのは、自分の復習にもなるから」
「…かたきうちでもするの?」
「????」

何やら意味の分からない言葉が返ってきたが、まあいい。



とにかく、明日からの一週間退屈しないで済みそうだ。



※追記にて補足。
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