ひとひらの命


6月3日 01:00 :沖斎
ただ一抹の(沖斎)





君の唇がゆっくりと言葉を紡いで、他愛がない言葉をひとつ、ふたつと増やしていく
ある種意味の無い時間とも言えるそれが、僕にとってはとても大切な時間だった
僕が相槌を打てば、それは会話になる
一人では出来ない事だ
君で無ければ、もっと詰まらない事かもしれない

「総司…どうかしたのか?」

視線の煩さに気付いた君が僕を見詰め返す
一時の静寂
途切れた君の声を求めて、僕は唇を寄せる

「一君、あのね、もっと…君の声が聞きたいんだ」

少しの淋しさも許さないくらい、君の言葉を僕にください
愛してるなんて大層な言葉でなくていい
いっそのこと重さなんて軽い方がいい
ただ君がその唇に乗せる言葉をかき集めて僕の胸に溶かして流し込めて、痛みに滲む愛しさを隠してしまいたい
恋しいが苦しいなんて、とても悲しいだけだから

「…ならばあんたも、もっと話してくれ。俺もあんたの声が聞きたい」

微笑む君を抱き寄せて、僕もまた他愛もない言葉をひとつ
君は少し笑って返事をした
君と交わした言葉がいつも、きらきらと揺れる金平糖のように陰る心を甘く溶かしてくれる
今までも君の声が、どれだけの不安を消してくれたかは知れない
不安はきっと、些細なことだ
そう笑えるのは君のおかげ
願わくば僕の声も、君に優しさを届けられていたらいいな
僕の言葉もいつだって、君の心に寄り添っているのだから

みっつ、よっつ

重ねた言葉を思い返せば、もう痛くなんてない



















命日にぽつぽつ打ってましたが気分的に暗くなってしまったので某最高にかわいい総司の誕生日に加筆して
思い出が心の宝となりますように


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