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初めに

ここは私こと紅音が思い付いた小説の断片や気ままに描いた落書きを不定期で置いておく場所です

まだまだ未熟者なので、感想や批判を是非お聞かせください
もしありましたら、リクエストもしてくだされば嬉しいです

どんなに短くても、どんなに下手でも、著作権は捨てているつもりはありません
ないとは思いますが、盗作などはご遠慮ください

あと、もし少しでも気に入ってくださったら拍手を押していただけると嬉しいです

いつかあった話

――昔はあんなに仲が良かったのにねぇ

さっき、すれ違いざまに囁かれた言葉が耳から離れない。
まるで縫い付けたかのように微かな声がはっきりと黒兎の耳にこびりついていた。

「ハク、」

ちらりと彼を垣間見た瞬間、小さく呟いた。
気付いてほしいわけじゃない、振り向いてほしいわけじゃない。
だって、だって、俺はもうアイツに触れていい存在じゃないから。

「ハク、」

もう一度だけ、と小さく昔から呼んでいるその名を呟けば、聞こえたのだろうか、彼は振り返った。微笑んだ。駆け寄ってきた。――通り過ぎて、いった。

「…ははっ」

黒兎は微かに笑った。
期待した自分を嘲笑するように、もう期待するなというように。
いっそ、憎んでしまえれば良かったのに。
黒兎は小さく震えながらその場に膝をついた。

「もう俺なんか、見えないのかよ」

ざり、と砂を掴んだ。

「もう俺なんか、必要じゃないのかよ」

砂を掴んだ手で地面を叩いた。

「もう俺なんか、忘れちまったのかよ」

空に向かい咆哮を上げた。
嗚咽にも似た叫びを。

ビリ、と確かに空気を震わせたはずのその叫びは誰にも気付かれずに消えてしまった。
その叫びを上げたはずの人物も、まるで最初から存在していなかったかのように、消えてしまった。

「黒兎、」

ただ、彼が小さく呟き、涙した以外は何も起こらなかった。

.
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独占

「このっ、……開けろっ!居るんだろ!!ここの鍵だけしめやがって!!」
「……思ったより遅かったね」

力任せに叩いていた扉がやけにすんなりと開くと、青年は驚いたように目を丸くしたが、目の前に現れた相手を睨みつけた。

「アンタがここに居るってことは、アイツも居るんだろ?!」
「うん。居るよ。この部屋に」

睨みつけながら言う青年に相手は微かに笑みを浮かべながら後ろを指さした。
それを見て、青年は下唇を噛み締め、相手を押しのけるようにして部屋に入った。

「――っ、ごめん」

部屋の隅に置かれた広いベッドの上でぐったりとしている少年に駆け寄り、青年は震える声で言い、そっと少年の頬を撫でた。

「なんで、こんな事をした……っ」
「なんで?愚問でしょ?本当は分かってるくせに…」

壁にもたれかかるようにして立っていた部屋の主を青年は睨みつけ、相手は少しだけ目を細めて青年に近付いてきた。

「意味が分からない。何でこんなことする必要があったんだ!!」
「貴方が俺から離れたからでしょう?」

怒ったように言う相手は声のトーンを下げ、冷たい視線を青年に向けた。

「俺よりそんな子の方が良いの?俺よりその子の方が良いの?ここの鍵、まだ持ってたのに」

狂気にも似た感情を浮かべた相手に青年は何も言えず、ただ相手を睨みつけた。

「安心しなよ。その子は解放していてあげるから」

にっこりと笑いながらそう言い、相手は青年の肩を押してベッドに押し倒すと青年の上に馬乗りになった。

「その代わり、貴方は一生ここらか出してあげないから」
「そういうことか…っ」

ジャラリと、カチリと音がして、相手は慣れた手つきで青年の首に首輪をはめ、青年は相手を睨みつけ、相手はにこりとさっきより優しい笑みを浮かべた。

「言ったでしょう?別れてくれって泣いて頼んでも、別れてあげないって」
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不器用


「好き、好きだ…」

寝ている彼にそう呟く。

「す、好き」

「……っ、ダメ、もう無理!我慢できない!!」

いきなり彼が飛び起き、一瞬にして上下が逆になる。

「お前さぁ、他に、何かしようとか思わないワケ?」

俺の上に馬乗りになった彼の指が俺の喉をなぞる。

「っ、」

「珍しく早く起きてごそごそやってるから、お前から誘ってでもくれるのかと思ったら、俺相手に告白の練習かよ」

「さ、最初から起きてたのか?!」

「当然。俺が何時起きか知ってんのか?」

「…このっ、」

ニィッっと意地悪い笑みを彼が浮かべた。

「お、起きてるなら起きてるって言えよな!」

「うん?」

「こっちは寝てると思って言ってたんだからな!」

「ほぉ?俺が起きてたら好きって言えないから練習していたと…?」

「べ、別にそういうつもりじゃ…っ」

「つかさ、別にお前が普段言ってくれないのはどうでもいいんだけど、俺ばっかり言ってるのは不公平じゃねぇか?」

「別にそんなことないと思う」

「…分かったよ。じゃあ、お前が普通に俺に好きだって言えるようにしてやるよ」
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台詞



「…ねぇ、先輩。また振られたって、本当?」

「……。なんで君がそれ知ってるの」

「良いじゃん別に。で、本当なの?」

「本当だったらどうだって言うんだ。君には関係ないだろ?」

「…先輩さぁ、来るもの拒まずなのは悪いとは思わないけど、先輩の外見しか見てない奴らと付き合うの、やめなよ」

「――は?」

「ねぇ、俺にしなよ、先輩。先輩が別れてくれって泣いて頼んでも、別れてあげないから」


†††††


「お姉様、顔、隠さないでください」

「嫌よ!……って、ちょっと、貴女、どこ触ってるの!!」

「え、そりゃ、お姉様の――」

「言わなくていいから!」

「…もう、お姉様ったらしょうがないですね」

「何がしょうがないって言うのよ!」

「ちょっと、そんなに抵抗しないでください。燃えます」

「燃えなくていいから!」

「ほら、私にすべて任せてください。大丈夫ですから」

「どこが大丈夫って言うのよーーっ!」
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