「自分の力じゃどうにもならないことがあるから、人生面白いんじゃないの。」
っていう、最近同じ人に三回続けて失恋した先輩の、深そうで特に意味は無い発言に、
まさか意味を見出すことになるとは思いませんでした。
仕事で都内に行くことが多く、
移動手段が基本電車なんだけれどね、
やっぱり日によっては朝早かったり夜遅かったりするわけです。
昼間ならユーザー数が多い電車でも、
そこまでの乗車率でなく、吊革掴めるし、
なんなら運がよければ座れて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!
なんて感じで嬉しい時もあるんですけどね。
飛び出ませんけど。
問題なのが通勤帰宅ラッシュに、
乗車率300%の電車に乗らなきゃいけない時ですよ。
いやいや、人飛び出とるやん。
てな電車でもいざ踏み込まなきゃいけない時ですよ。
もう体の様々な可動部分をフルに使って、
こう、自分の位置を確保しながら乗るじゃないですか、身動きは取れないけど安全な位置ってとこを。
多少膝曲がってるけど、、いける!!みたいな。
(余談ですが昔埼玉から横浜まで、
乗車率300%の中をS字になって1時間乗り続けた時は骨盤が一揆起こすかと思いましたね。)
先日、通勤ラッシュの電車で出社しようとした時のことです。
やっぱりドアが開く度に人がびよ〜ん、て飛び出るくらいの乗車率の電車に乗ったんですけど、
いや〜、あたしとしたことが油断したよね!
もうまさに一本とられた〜!
こ〜いつ〜(ツンっ)♪
って感じで、
乗り込む時にめっさ両腕持ってかれて、
というか持ってこれなくて、
両腕が後ろにいっちゃって、
お縄された犯人みたいになっちゃいましてね、
犬夜叉の走ってる時っぽい格好なの。
こう、なんか前傾で。
待ってろかごめ!的な必死な感じ、
結構良く出てたと思う。
で、それはしょうがないと思うんですよね。
誰が悪いわけじゃないし、皆乗りたい気持ちは一緒ですし、気遣いながら仲良く乗りましょうね〜人類皆兄弟、ゆっくり行きましょ人生は!!
なんて思ったんですけどね
目の前のおばちゃんがとても直角に首曲げてて、
あたしと顔向き合っちゃってる。
すんごい丁度いい具合に、
見つめ合っちゃってる。
しかもなんだろう、なんかもう、乗車率の高さに諦めちゃってる感じの雰囲気で、半ば顔が死んでるのね。時の流れに身を任せ過ぎてるのね。今はあなたしか愛せない状態。
それならそれでいいんだけども、
何も触れないんだけども、
それならそれで、
目 を 閉 じ て ほ し い 。
多分見てるけど見てないみたいな感じで意識はないんだろうけど、もうめっちゃ視線ど真ん中なのあたし。
黒目があたしを捉えて離さないっていうか、
距離近すぎてなんならちょっと寄り目っていうか。なんならちょっと怖い。
あたしもあたしで犬夜叉状態かつ、
首を動かすのもままならないので視線を外すわけだけど、
すんごい気になる。
約30cm向こうの目が
すんごい気になる。
こうなったら必死にね、意識ずらすしかないわけです。
心ここにあらず状態にするしかないわけです。
っていうと、こういう時はやっぱ九九っしょ。王道っしょ。
つってまぁ脳内で唱えたりしたりね。
(しろく24ー)
(ししち28ー)
(しは32ー)
(四苦八苦なうー)
九九すら出来ねぇ……
あたしもね、薔薇も恥じらう24ですよ。
そろそろこちらも恥じらう時期でしてね、
降りようと。
電車一本くらいなんだと。
始業5分前、ギリに出社する道だとしても、
あたし今この場にいるあたしを、自分を、救ってあげたい!!
もういいからって、
もう無理に九九を唱えなくていいからって!!
主要の駅で皆がドアから流れ落ちる様に出る時を、ひっそりと待ってたんだけど、
っれーーー?
あたし的にはね、あの江戸時代の「ええではないかええではないか〜」「あ〜れ〜!」
くるくるーっ
みたいなやつを狙ってたんですけど、
やだもう〜激しい〜降りちゃう降りちゃう〜これぞ不可抗力〜☆
みたいなやつを狙ってたんですけど、
なんか、乗ったドアと反対のドアが開くのね。しかも期待する程降りねぇの。
ドア側の少人数が降りて〜また乗って〜の繰り返しで、
全然降りないの。皆さん。
ウェーブなんて起こらず起こさず
the 静止。
「ちょ待てよっ!」
なんてキムタクる気も起きない。
諦めと朝の眠気と同時に意識が薄れていきまして、
もう目の前のおばちゃんに内心語りかけてたよね。
おばちゃん…
今のあたしはきっと数十分前のあなたで…
きっと今のあたしのように四苦八苦した結果が…
今のあなたなのね…
人が相手の気持ちを理解できる時っていうのが…
同じ境遇に置かれた時だなんて、ふふ。
皮肉よ(ね)「降ります!!!!!!」
寄り目だったおばちゃんが凄く力強い声とともに、起きた。
(なんならあたしも起きた。)
さっきまでの時の流れに身を任せきってたおばちゃんからの、まかさの転身。
鳥山明の世界だったら間違いなく髪逆だってた。サイヤってた。
「降ります!!」「降りまーす!!!」
って、寿司詰めの車内を掻き分けて降りる様に、
もう目が奪われちゃって、
目が離せなくて、
っていうかなんか、
意識朦朧としてたからなんかつられちゃって、
あたしもそのおばちゃんが降りれるように協力して道を開けてあげてね、
はい降ります降りますよーどいてどいてーってぐいぐい掻き分けてね。
やったねおばちゃん!下車成功!あたしGoodjob☆
なんて思ってたらね
気づいたらあたしも降りてた。
全然着いてないのに。
去りゆく電車にあんなにも疑問を抱いたのは初めてかも知れません。
あんなに静かに、「…何で?」
と呟いたのも初めてかも知れません。
職場最寄りから遅刻ギリでダッシュする中、
先輩の
「自分の力じゃどうにもならないことがあるから、人生面白いんじゃないの。」
って言葉を噛み締めましたが、
どちらかというと、辛いって感情が大きかったです。
(時と人と感情には流されないようにしなくちゃいけませんね、ええ。)