話題:SS
ショートストーリーにも満たないような、
短い短い、創作。
*突然の雨
*雨の日の告白
*雨宿り
という雨の三題。
(旧ブログからの移設です)
記録によると、2012.5.24に書いたもの。
続きよりどうぞ。
**********
*突然の雨
雨は嫌い。
せっかく朝セットした髪も
湿気で広がるし。
お気に入りの洋服も
濡れたり、泥水が飛び散って
汚れてしまう。
けど。
さっきまで晴れていた空が
突然雲に覆われて
夕立が降り出した時。
今日で二度目のデートの彼が
「走ろう!」
と。
手を繋いでくれたから。
今日だけは。
雨に感謝、しようかな。
-END-
*雨の日の告白
「ひとつ質問、いいかな?」
「なっ、なんですか?」
威嚇するつもりはないんだけど…
顔が笑ってないから目の前の後輩くんが
ちょっと怯えている。
「今日じゃなくても良かったでしょ」
こんな、土砂降りの雨の日に
外に呼び出して告白とか…
何、考えてんの?
「いや、あの…」
「なに?」
地面から跳ね返った雨が、
白い靴下を濡らしているのが分かるから。
ちょっと。
イライラしてしまう。
「まぁ。別にイイけど」
「すみませんっ。せ、先輩には全く関係ないことで
呆れられちゃうかと思うんですが」
「だから?」
前置き長いっつーの。
「明日、僕誕生日で」
「はぁ?」
…で?
「いや、あの、だからダメだった時には。
明日からは新しい僕になれるように」
「誰が」
「えっ」
「誰がダメだって言った?」
「はい?」
不思議そうな顔の、後輩くん。
そういうとぼけた表情するくせに。
ハードル飛び越えてる君は、
めちゃくちゃキラキラしてるって。
知らないよね?
「前祝い。してあげるよ」
「え、あ、先輩それって…」
「イライラしてるのは、雨に濡れてるからで
告白が迷惑だからじゃないから」
「え。えっと…」
「甘いものにする?たこ焼きがイイ?」
「あ、甘いもの…」
「じゃあ。男の子同士じゃ恥ずかしいパフェにしよ」
「はいっ!」
あぁ。
この笑顔。
年上ぶってるけど、
私いつも、その笑顔にときめいてたの。
「彼氏になるなら、敬語禁止」
「え?」
まだ、理解できてないのか。
この鈍感。
「早くしないと置いてくよ」
「わぁっ!先輩まってください!」
“先輩”呼びも、禁止しなくちゃ。
そう心でつぶやきながら
靴の中まで濡れるのを覚悟で
土砂降りの中を走り出した。
-END-
*雨宿り
雨宿りをしていたことがきっかけで
恋が芽生えるなんてこと。
そんなの歌の中か、恋愛漫画の中だけの
夢物語だと思っていた。
隣町の高校に通っている私は
日々の通学手段は私鉄で。
登下校時は、たいていひとりだ。
電車に乗る前までは、雨が降っていなかったのに
降りた時には土砂降りになっていて。
コンビニも近くにないようなさびれた駅周辺で
どうやって時間をつぶそうか、
改札の出口付近で、恨めしげに空を見上げていた時。
「傘ないんなら、使えば」
そんな言葉とともに差し出された紺色の傘。
「あ…」
顔を上げた先にあったのは、
同じクラスの、男の子の顔。
「おんなじ駅から通ってたんだな」
「あぁ、うん」
まさか同じ駅で降りるクラスメイトがいるなんて
夢にも思わなかった。
「あ、もしかして迎え待ってた?」
「まさか」
「家、どっち?」
無言で目の前の道を、まっすぐ指差してみる。
「マジ?俺も。去年あの先の団地に越してきたんだ」
「え?うち、家の目の前が団地だよ」
「わ、そうなんだ!」
なるほど。
昔からここに住んでるわけじゃないから…
知らなかったんだね。
「じゃあ、さ」
「うん?」
「送ってくよ」
「あ……」
「半分くらいは濡れるかもしれないけど。傘ないよりマシでしょ」
「……うん」
あまり話したことはないけれど、
割と人懐っこい感じの彼。
バドミントン部と部活動は地味で、
特に目立つ人じゃないけれど…
「俺、相合傘したの初めて」
「えっ!!」
そう言われてみたら…
「私も、かも…」
今、そんなこと言われたら恥ずかしくなっちゃうのに。
この人……平気、なのかな?
「雨の日は好きじゃないけど」
「……ん?」
「俺、ちょっと楽しい」
隣の彼が、ニッと歯を見せて笑うから。
私もつられて笑ってみる。
「明日から一緒に学校行かない?」
「へ?」
「あ、迷惑だったら別にいいんだけど」
無言で首を横に振る。
「通学時間の、暇つぶしにさ、」
「いいよ。8時丁度の電車だよ」
「わ、俺より1本早ぇー。頑張ってみる」
「うん。あ、家ココ」
「マジで近いな!俺2本先曲がったところ」
「…そうなんだ」
近くに住んでいるというだけなのに。
急に親近感が沸いてくるのは何故なのだろう。
「じゃ、明日な!」
「…うん」
雨の中。
飛び跳ねるように帰っていく彼を見送って。
ポケットから鍵を取り出し、玄関の扉を開ける。
「ただいまぁ」
今。
振り返ってみたら。
この日がなかったら、彼と付き合うことには
ならなかったのかもしれない。
そして。
あの日彼が傘を持っていたのは
並外れた雨男だからと私が知るのは。
もう少し、後のこと。
-END-
(最初以外、長くなっちゃいましたね…
と言うか…私雨絡みのお話書くのがどうも好きらしいw)
2013-5-29 23:29