話題:SS






彼と、初めてのデートが地元の大きな花火大会だなんて。
明らかにミステイクだと分かっていたけど。

花火が見たいのも、
その花火を彼と見たいのも、
正直な気持ちだから。

でもやっぱり、手を繋いだこともない私たちは
人の波に飲まれかけて、彼の背中を一瞬見失う。

「…あれ」

さっきまで、すぐ隣に居なかったっけ?

「どこ見てんの。こっち」

「えっ?」

さっきとは反対側から。
人の流れに逆らって、彼が私に近づく。

「ほら」

「ん?」

差し出された彼の右手は。
つまり。

「はぐれるだろ?ほら、手、繋いどけよ」

「……うん」

彼を直視できずに、一度頷くのがやっとで。
そっと握った彼の手は、比較的華奢な体格の割に大きくて。

あったかい。

今日のことを思い出すことがあったとしたら。
それはきっと、

花火の美しさではなくて。
彼の手のあたたかさの方だろう。




-END-


お題提供:確かに恋だった


一年前に書いたものっぽい。
主任シリーズを始めるより前の作品ですが、今読むと若かりし頃の主任みたいで笑えてきますww