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にじいろの魔法使い3


あれから12年。
母は精神が参ってしまったようで、あの時からずっと、病院に閉じこもっている。
親戚もいないし、父の保険金や慰謝料など、多額の金が手に入り、わたしはただ1人生活していた。


普通の学校へ通い、普通の生活をし、普通に生きている。
そんな普通のことがどんなに大変か。
視たくなくても視えてしまう未来。
大丈夫。わたしはこのまま寿命を迎えれば、天国できっと…。









広い校舎のなか、曲がり角を曲がると、どん、と胸に何かが当たる感触。
見れば小柄な少女が尻餅を付いていた。


「あ、すみません…」

「いや、大丈夫よ。ほら、立てる?」


手を差し延べると、少女は躊躇いなくその手をとった。

大丈夫、ここにはアレを知っている人はいない。


「ほんと、すみません…」

」いえいえ………っ!」


途端に視える未来。
変えられるものじゃないと分かってはいても。


「あなた、帰り道には気をつけなさい。不審者が多いようだからね」

「?…はい」


そんなことを続けていたら、すぐにわたしは噂になり始めた。
魔女だとか超能力者だとかくだらない噂。


「あんた、未来わかるんだってえ?じゃあ俺いつ結婚すんの?」

馬鹿が。あんたはその前に死ぬよ。

「わたしってどんな未来?やっぱり社長夫人!?あははっ」

残念。あなたは馬鹿な男に騙されて借金まみれ。


つまらない。
決められたレールを走る人形と会話していても、何も面白くなんかない。
ばあか。


未来なんて、知って何になる。
知らない脳天気なあなたたちが羨ましいよ。

こんな世界なんて、これっぽっちも楽しくない。
誰か、この色褪せた世界を―――――








帰り。


「…誰?」


いつものようにリビングの扉を開くと、どこのコスプレマニアですかよろしく私の部屋で魔法使いのコスプレ野郎が眠っていた。


「…んー?」


不法侵入で取っ捕まえるべきか。

にじいろの魔法使い2

病院についてすぐ、母は小さな私の手をひきながら父のもとへと駆け出していった。




『先生っ…夫は…っ!』


まっしろな室内。
数人の看護士と医者が沈痛な面持ちで佇んでいる。
まんなかのベッドに寝ているのは。


『そんな…』


がくりと膝をついて、ぶるぶると震え出す母。


『旦那様は…』


医者が静かに口を開く。
だが、それを私は笑顔で遮った。


『わたし、しってるよ。パパ、ほかのかいしゃとしょうだんがあったんでしょ。それでちゅうしゃじょうにくるまをとめて、どーろにでたら、どんって。しんじゃったんでしょ。しってるよ』


《しんじゃったんでしょ》
得意げに話す私は、きっと言えば褒めてもらえると思い、頭に染み込んだ未来《だった》ものをすらすらと並べたのだった。


『どうして…それを…』

『視えたもん。おじさんはねえ、27年後の8月14日に、そこのおねえちゃんは61年後の4月3日にしんじゃうの』

にこにこと老年の医者と年若い看護士を指差しそう告げる私は、何も知らない者から見ればただのおふざけにしか見えなかったが、その場に居合わせたものには遥かに現実的に思えただろう。


『ねえママ、わたしすごい?えらいでしょっ?』


ぱたぱたと母に駆け寄る私の姿は、まるで魂を刈る死神のように見えたのだろうか。


『こないで…っ!こないでぇえぇ…』


怯えた目で震える母に、何がなんだかわからず、ぽかんとしているだけだったことを覚えている。


『ママ…なんで、なんでそんなかおするの?…2ヵ月後おともだちがしんじゃうから?3時間後階段で足を怪我しちゃうから?それとも…』

『いやぁああああぁああぁぁあっ!!!!!』






わたしはただ、ほんとうのことを、いった、だけなのに…



にじいろの魔法使い1

世界が色褪せて見えて。
全ての人間がまるで人形のように感じる。
だって。
最初から決まった道を決まったように歩いて、決まった時間に止まる。
ぜんまいの巻き数はそれぞれ違えども、いつかぴたりとそのぜんまいは回るのをやめてしまう。
止まってしまう時間が分かっている人形などといても、自分が傷つくだけ。
決められた世界の、決められた人形のなかで唯一人自分が何なのかわからないことに、絶望していたのはいつだっただろうか、とうの昔にそんなことを考えるのはやめた。
もう考えるのに疲れて、ただただこの人形世界で静かに自分の死を待つだけだと。
そう、思ってたんだ。






初めて視えたのは、何歳のころだったか。
確か、幼稚園に入りたての頃。

自然と気がついたら視えていたから、誰もが視えるものだと信じていて、その時は何も考えずに、口を開いていた。


『ママ、どおしてパパはあしたしんじゃうの?』


死もよく理解していなかった年頃。
未来に映る父の死を視た私は、それがどんなものかすら分らなかった。
だけど、『パパがあしたしぬ』ってことだけは不思議と理解できた。
頭に染み込むように、あまりに自然すぎて何の違和感も感じなかった。


『こら、そんなことを言ってはだめよ?パパが泣いちゃうでしょう?どうせパパが柚月のこといじめたんでしょ?ママがしかっておくから、もうそんなことは言わないのよ?…』
『でも、パパ、あした、くるまにひかれて…』

『もう、柚月ったらわかったから。遅いし、もう寝なさいね』

『…うん』



翌日、幼稚園から母と手を繋いで自宅に帰ると、静かに電話が鳴っていた。
私は咄嗟に時計を見て、呟いた。


『パパ…さんじさんじゅうにふんに…』


母は急いで電話に出ると、一拍置いてさあっと顔が青褪めてゆくのが遠くにいる私にもわかった。


『柚月…パパが…パパが…さっき事故に…』

ほうら。
私の言ったことは嘘じゃなかったんだ。
その時はただ、そんなことに満足感を感じて、無邪気な笑みを浮かべていた。

推測

突然ですがなぜよく私の小説が軽スランプ状態に陥るか考えてみました。
今まで更新停止にした連載は2桁に…
そこで今の連載を停止させない為(実は今までで一番長く連載してます)にも。

―原因―

1、細かいストーリーは考えず連載する
(後々困る結果に…)

2、書きたい凄いシーンばかりを思い浮かべて、普通のシーンが思い浮かばない
(なので普通のシーンがグダグダになる)

3、下書きをしない
(話の辻褄が合わなくなる)

4、時間がない
(ゆっくり時間がある時に書きたいタイプなので)

5、自分の小説を読み返して悲しくなる
(書く気ダウン)


うわあ。酷い…
こんな五重苦だったら無理ないですね。
しかも1と2と3によって5になり、それに4がプラスされたらもう停止です。


頑張ります…←

音羽緋月

ささやかなお年玉です。

皆さん新年あけましておめでとうございます。
今日は皆さんにささやかなお年玉をあげたいと思います。
といっても更新しただけなのですが。


魔法学園小説、
Act.2[波乱]
20〜38p

の19pをupいたしました。
これでAct.2[波乱]は完結となります。

Act.3は次回更新となりますのでお楽しみに。

それにしても前々回が30ページup、前回が3ページup、今回が19ページupとバラバラすぎますね。
その日の気分によるんですが、今回は初めてパソコンで作業をしたので随分はかどりました。

先日新しいパソコンを購入しました。
MEからヴィスタへと変更です。
リソースの問題がないので本当に楽になりましたよ〜。
なので試しに小説を書いてみたらスラスラっと進むので気がつけば凄い量に。
ちなみに前々回30ページをupしたのは新連載を皆さんに公開する前にちまちまと日数をかけて書いてたからなんですよ〜。
なので一日でこんなに更新したのは初めてですね。

ではでは。

音羽緋月
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