*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋~特別編-鳥の仮面の男』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の特別編です⇒
story.20:『歪んだ復讐』
------------18歳のある日、私の日常は突然失われてしまった。
とある週間雑誌に、父親が経営していた会社のことが記事に載ったのだ。
「な、何でだよ…」
記事によると、私の父親が会社の金を横領し、それを政治家に手渡していた------------そんな、内容だった。
当然ながらその政治家は失脚され、世間から非難を浴び、父親と同様に逮捕されてしまう。
裕福だった私たちの生活は、父親のせいで全て奪われてしまった。
「姉さんっ!」
姉2人は、その当時には結婚していた。
父親のことがあったが、2人は離縁されることはなかった------------が、高校へ通学していた私と父親のことが理由で体調を崩した母親を、あの2人は見捨てた。
……だが、別に恨んじゃいない。
彼女たちはもう他所の人間になっていたのだ。
父親がその後、留置所で自殺をしようが、母親が病死しようが、関係ない。
「アンタとは関わらない…。
けど、仕送りはしてあげる。高校と、大学に行きたいなら今のうちに言いなさい」
姉たちはそう言って、本当に仕送りだけはしてくれた。
それで大学の医学部へ行き、精神科医になることになったのも、父親のことや、娘2人に見捨てられて精神的にも肉体的にも傷付いた母親の傍にいるためだった…。
「------------19時、38分です。」
私は、母親の主治医のその言葉を聞いた。
母親が、自分を残して死んだ。
------------だが、なぜだか涙は出ない。
悔しくて、虚しくて、辛くてたまらないのに……怒りが勝る。
「酷いっ……みんなして、私だけを残して……」
父親が悪いんじゃないか。
父親が横領なんかしたから。
私は、父親を強く憎んだ。
罪を償う前に、私たちに謝罪も無しに逝ってしまった父親が憎くて憎くて仕方なかった。
復讐をしてやりたかった人は、もうこの世にはいないと思っていた時------------とある週間雑誌を手に取った。
「…このイニシャル……」
『M・N』------------どこかで見たことがある…と、思った矢先に思い出した。
……そうだ。
最初に、父親のことを記事にした人間のイニシャルと同じだ。
「見付けた……」
"コイツ"が記事なんて公表しなければ、私のこの虚しい人生は有り得なかった…。
M・Nのせいで……本名、長尾実のせいで、自分だけが不幸を背負うはめになったのだ。
「復讐……復讐しなくちゃ…」
……私の中で、何かが音を立てて崩れた。
"長尾実"のことを調べた。
彼は、警察の人間と接触していたのだ。
どうにか近付く方法はないかと考えていた時------------槐ゲームの主催者と出会った。
彼は、私に鳥の仮面を手渡すと、警察病院へ侵入する手配を組んでくれた。
「君の復讐相手は、水嶋さんと知り合いなんだ。……接触する機会があるかもね?」
"ご主人様"の言葉通り、長尾実は警察病院へやって来て、槐たちとも接触し、槐事件を記事にした。
何度も、何度も…。
自分の生活のために、他人のプライバシーを晒す様……。
その癖、自分は暢気な身分だ。
長尾:「ほぉら。良い子にしてたか?今日は鯖の缶詰めだぞ〜」
3匹の種類の違う飼い猫を可愛がりながら、幸せそうな表情を浮かべる長尾の姿を窓の外から見たことが何度もあった。
虫酸が走る……。
いっそのとこ、飼い猫たちを殺してしまおうか。
長尾:「じゃあさ、姫井ちゃんにプレゼントしてあげるよ」
姫井:「えっ!?」
お洒落な店で、女性に気軽に小物をプレゼントする長尾。
長尾は、警察署の女性刑事・姫井を気に入っていた。
……彼女を殺してしまおうか。
------------そうやって、何度も人殺しをすることを考えていたら、殺人衝動というものが……抑えられなくなった。
「…お、お前……何で、"俺と同じ顔"をして……っ…!」
"川平ランディ"------------は偽名だが、自分が手本にした本人と接触してしまった。
怯えた顔をした彼は普段はホストとして働いているから、よほどのことがなければ接触しないと思っていた。
六条薫とカフェで接触した後に偶然、道端で会い、2人きりになった時にそう問われた時は『私もびっくりしましたよ。驚きましたね』なんて、世界には同じ顔が3人説を出して偶然を装った。
その時、私は左目の下に黒子を描いていたから本人はホッとしたように納得していた------------が正直、このまま放置しておくとマズイと思った。
"川平ランディ"が偽名であることがバレるし、何かの拍子に自分が警察病院へ侵入したルートが知れたら…。
一応、義理と人情は通しておかないと………"ご主人様"という存在は相当厄介だから。
公園の自動販売機で買った飲み物に眠り薬を仕込み、さりげなく手渡して飲ませた。
あの長屋のアパートに運び、自分の部屋の畳を上げて木の板も外し、そこに彼を放置し、ドライアイスを置いてから、また木の板を嵌めて畳を被せた。
……最初は畳の下で暴れていた彼は、一週間後には静かになった。
警察があの長屋アパートに駆け付ける前に、新しいドライアイスを入れておいた------------。
城之内:「……そろそろ、バレる頃かもしれませんねぇ…」
長尾:「っ…」
ワンボックスカーを運転しながら、城之内はそれまでの経緯を長尾実に話していた。
長尾は両手両足を縛られ、ガムテープで口を塞がれたまま身動きが取れない。
長尾:(畜生っ!)
ドアが開いた時は"まさか"と期待してしまったが、城之内凛太は別の男性の顔になって自分だけを外に連れ出した。
車に乗せられてドアが閉まった時、長尾は血を流して倒れている男性を見付けた。
今、城之内が化けている男性だった…。
長尾:(コイツ……一体何人の人間を殺して来たんだよッ)
マインドコントロールされていないし、反省の色がまったく見えない分、城之内には自分がしたことの悪意とか後悔が微塵もないのだと、長尾は察した。
長尾が必死にもがいていると、城之内はこう口にした。
城之内:「…さて。そろそろ、あなたを殺しましょうか……"彼"が戻って来たら」
長尾:「…!?」
"彼"とは、誰のことだ。
お前はこれからどこへ向かうつもりなんだ。
聞きたいこと、言いたいことは一切口にさせてもらえないまま、長尾は城之内の醜い表情をミラー越しから見つめていたのだった。
------------To be Continued...