あの時までは見ているだけで良かったのに。
思っていたより少し高い声、
穏やかに笑った顔、
滑らかに動く大きな手、
全てが素敵だった。
たった1時間だけだったけれど、すごく幸せな時間だった。
もっと声を聞きたいと思った。
もっと笑顔が見たいと思った。
この人のことをもっと知りたいと思った。
あと少し一緒にいたかった。
だけど、あの時の私にはそんな余裕はなかった。
この気持ちの正体を知りたいと思った。
知らないことばかりの人を好きになるなんてあるのだろうか。
出会ってから何年も経っていて、今までか細いつながりしかなかったのに。
いきなりすぎるかな。
私なんかに思われたら迷惑かな。
遊びに誘われて嫌いな人じゃないのに断ってしまったのは、あの人に勘違いされたくないと思ったから。
一緒に行くならあなたが良い、
私が気になっている人はあなたです
と伝えたいと思ったから。
気持ちを伝えてもダメかもしれなくて。
そもそも、ダメじゃない可能性は限りなく低いと思う。
それでも、今伝えなかったら一生見てるだけで人生が終わる気がして。
大切な人が急に手が届かなくなってしまうのはもう嫌。
勇気を出さなくては。