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06

外へ出ようとドアに手をかけた。
だけど、強引に顎を掴まれ振り向きざまに唇を重ねられた。
付き合ってどれくらい経ったかなんてわからないけど初めてキスをされたので体が硬直してしまった。
「しょ…う…いち…」
『…ちゃんと僕の名前呼んでくれたの初めてだね…君がどうしても行くのなら僕と少し話をしないか?』
鋭い眼差しに声が出なかった。
『まず…君は自分自身について知った方がいい』
「…」
『君は以前襲われて助けてくれたのがラスベリー伊藤だと言ってたよね?』
こくりと頷く。
『彼はね君に夢を見せていたんだよ』
「…え」
『その優しかった彼も夢だよ』
「…」
『ラズベリー伊藤はね夢の中の支配者だ…かれが欲しいのは君自身の記憶だよ』
「…きお…く…」
『自分を完全体にするために君の記憶が必要だったんだろうね』
「…じゃ…じゃあ!ラズベリー伊藤は?私は確かに…」
『…彼に会ってるよ…そこは偽りもない事実だ』

『まああくまで僕の憶測だけどね…彼は伊藤という人間にただ体を借りてるだけだよ』
「ちょ待って…!もしそうでもなぜ私が…」
『…おそらく君は時空を司る何かを持っているんだね…それが何かはわからないけど…僕が君を無理やり起こしたのは…それに気づいていつか消えてしまうと思ったからだよ…』
そう言って頭を抱える。
『…情けないよね…』
彼の頭をそっと撫でた。
『好きだよ…遊馬…お願いだからほかの男のとこには行かないで欲しい…』
「…今の話からすると…本物の伊藤がその自動車学校でバイク乗り回してるんだよね」
『…』
「どんな人か見てみたいな」
クスッと笑ってみせた。
『…わかった見るだけなら僕も付いていくよ』
「ありがと」

05

正直驚いた。
家へ帰ったら彼女が寝てて夢にうなされてる…というよりかは夢に感情的になり涙を流しているようだった。
もし、僕の予感が正しければ…そう思った途端怖くなった。
僕は何を考えていたんだろう。
遊馬を起こすと同時にきつく抱きしめていた。


「っ!…火傷…」
『…』
目が覚めて初めに思った。
彼の首から胸にかけて赤く火傷の跡。
そして所々血が出ている。
心配になり急いで救急箱を探した。
そして、立とうとした時また腕を引かれた。
「ちょ…っ怪我…」
私がそういうと…彼はまた強く抱きしめてきた。
『今はそんなことどうでもいいんだよ!』
少し厳しい口調で彼が言った。
何がなんだかわからないまま私は彼に抱かれたまましばらくそのままでいた。
…しばらくして、ようやく体を起こしてくれた。
「大丈夫…?」
心配になり見つめる。
『…急にびっくりしたよね、ごめん…』
「ううん…」
それから何日も過ぎた。
彼はあの日以来あんまり外へでなくなった。
「今日は外でないの?」
『特に用事もないからね…君と一緒にいたいな』
いつもこんな感じ。
もうラズベリー伊藤のことなんかすっかり忘れていた。
その時、久々に携帯の着信音がなった。
番号は知らない番号…。
一気に不安になって彼にでてもらった。
『…』
電話の主はラズベリー伊藤らしき人物からだ。
電話を静かに切る彼に目を向けた。
『…ここからすぐの大通りの所に自動車学校があるみたいなんだ』
「うん…?」
『そこでバイクを乗り回してるみたいだよ』
何故か急いで外へ出ようとした。
『…遊馬…っ!』
そして彼が引き止める。
『…お願いだから僕の前から消えないでくれよ』
彼の声はひどく震えていて肩に顔を埋められるのと同時に冷たい雫が肩に落ちるのがわかった。
「…私はどこにも行かないよ…絶対」

04

今日は外へ出ることを許可されなかったので、いつも通り部屋にいた。
「…11歳なのにしっかりしてるんだなあ…」
時々そんなことを呟きながら…彼のことを考えていた。

ちょうどその時、実は僕も遊馬のことを考えていた。
中学の制服は着ない主義。
これが僕だ。
遊馬の彼氏になったのも思いつきなんかじゃない。
少し恋愛感情だと思った上でもあり、ラズベリー伊藤が彼女を狙ってると同時に彼女を好きなんじゃないかと悟ったから。
もし、ラズベリー伊藤が彼女を好きならば真っ先に僕を恨むだろう。
…そんなことを考えていた。
マフラーで顔半分を隠すのが好きな僕はいつも眼鏡が曇る。
その時、声をかけられた。
聞き慣れない男の声だ。
『…鎌田正一くん』
「なぜ僕の名を知っている」
後ろを振り返った。
そこにはバイクに乗っているラズベリー伊藤の姿があった。
「ラズベリー伊藤…」
僕はそう呟いた。
襲ってくるのがわかったので、空高く飛び上がり木の枝に掴まった。
『こうして君とちゃんと話すのは初めてだね』
「用件を聞こうか」
するとその時、彼の背後に近付く動物のような人影が見えた。
遊馬だ。
なんでここにいるんだ!
ラズベリー伊藤が光の玉を彼女に撃ち、僕はとっさに彼の腕を鎌で切り落とした。
『…って』
遊馬を見た。
が、そこには誰もいなかった。
よそ見をしていると今度はこちらが攻撃を仕掛けられた。
ラズベリー伊藤が放つ光を見て思った。
彼は人間の体を借りてる支配者だと。


遊馬はいつの間にか眠ってしまっていた。
目が覚めるとそこには行き先もわからず電車に乗っている自分がいた。
ここは…
いつもの駅で降りて、誰かに向かって手を振っている。
ラズベリー伊藤だ。
これは…現実なんだろうか。
ラズベリー伊藤と2人で通学路を歩いている。
その時また1人並んで歩き出した。
鎌田正一…だ。
3人で幸せそうに通学路を歩いている…。
自然と涙が溢れた。

『…まっ…ゆ…ま…!』
なんだろうか。
誰かが呼んで…。
『…っ遊馬!』
目が覚めると鎌田正一がきつく抱きしめてくれた。

03

そして次の日一緒に通学路を歩いた。
秋の風が少し冷たい気がする。
『手貸して?』
と少し強引に手を引かれる。
「あ…あったかい…」
そう呟くとしばらく手を握ったまま歩いていた。
『こんな事したら君の彼氏に申し訳ないね』
私は訳もわからず聞かないことにした。
家に着くなり一安心した。
だけど彼は少々上の空でいた。
その日の晩から彼は夜中に何処かへ出掛けているみたいだった。
朝起きると彼が出かけていって家で待っていた。
彼が帰ってきたのは昼過ぎ。
明らかいつもとおかしく、額にはひどく汗をかいていていつもより焦っていた。
『…2回目攻めてきたよ』
「…え?」
『君の彼氏ラズベリー伊藤が攻めてきたよ』
「え…?」
『まだ、ここはバレてないみたいだけどね』
「そっか…あ」
『ん?』
血が出ていたので手当してあげた。
「…ラズベリー伊藤はね私の恋人でもなんでもないよ」
間違いを正そうと呟いた。
『君…テリトリーからはみ出してるよ』
「…え、あ、ごめん…」
慌てて自分の布団に戻る。
『そっか…彼氏ではなかったんだね』
「…うん」
『提案なんだけど…』
「?」
『僕の彼女にならない?ここにいる間は』
「…え、あ、はい…」
『じゃあ、今日からテリトリーは無し、おいで?』
私は彼に大好きって言葉を殺して抱きついた。
「あ、何歳?」
『僕は11』
「私…7歳も上だよ?」
『大丈夫、僕年上好きだから』
「…よかった」

02

目が覚めた瞬間どこかふわふわした気持ちになった。
誰かに抱き抱えられてるのがわかった。
顔を見ようとしたが光で顔がわからなかった。
そして眠りについた。
『あ、起きた?』
にこっと微笑まれる。
顔を見て無意識に呟いた。
「…鎌田正一…?」
『うん、そうだよ。』
優しく頭をなでられた。
混乱して訳も分からなくなり部屋を見渡した。
「…ここは?」
『僕の学生寮だよ。』
「なんで…?」
震えてる手を優しく握りながらラズベリー伊藤について話してくれた。
『…君狙われてるんだろ?』
少し驚いた顔をして見つめる。
『ここで君を匿っては駄目かな?』
「え…」
『ラズベリー伊藤と知り合いならわかってくれると思うけど』
「…」
『かまいたちの鎌田正一だよ』
そういって手を鎌にかえて見せてくれた。
「…はい」
今はそう答えるのが精一杯だった。
『同じ学生服着たいな…そうすれば少しは僕のこと信用してくれるかな?』
朝になりまだ布団に入ってる鎌田正一と目が合った。
『おはよう』
「…おはよ」
ぎこちない挨拶を交わすと彼は着替えてどこかへ行ってしまった。
『今日はここに居て』
「…うん」
しばらくすると彼が大量の袋を抱え帰ってきた。
『ただいま』
「あ、おか…えり」
『まだ布団から出てなかったんだね…寒い?』
優しい言葉をかけて話題を作ってくれる。
『しばらく、ここにいないといけなくなると思うから、服買ってきたよ女の子だしね』
「え…?」
『気に入らなかったらごめん…その…僕の趣味なんだよね…』
すごい嬉しくて彼の前で初めて微笑んだ。
『あ、そうだ君のテリトリーはそこだから』
それから数日が経ちこの生活が当たり前になっていた。
『…明日は僕も君と同じ制服着るから外に出掛けようか』
「え?いいの?」
『あくまで学校の通学路を歩くだけね』
それだけでも嬉しかった。
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