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【腐向け】15センチ【田日田】

話題:二次創作小説


ないなら自分で書くしかない。
排球です。
田中×日向、日向×田中、どっちとも取れるお話。
中途半端に長い。






合わせた唇から、ちゅく ちゅく、と甘いリップ音がする。
性的興奮に心拍数が上がり、体温が上がり、脳が沸騰する。正常な判断ができない。実際少し頭がイカレているのかもしれない。目の前の坊主頭がこんなに愛らしく思えるなんて、狂ったとしか考えられなかった。
舌と舌がぬるぬると絡み合う。溢れる唾液が相手の口内に流れ落ち、ごくん、と飲み込まれた。

「はあっ‥‥はあっ‥‥」

止まらない。止められない。
一度爆発した感情を一体どうやって止めたらいいのか分からない。
先輩、田中先輩、好きです、大好きです、言いたかったけどそれどころじゃなかった。無茶苦茶にキスをして、重ねた手に力を込めた。





『身長差15センチって、バランスいいらしいですよ』

日向翔陽は誘うように上目に見た。その視線の先にいたのは、ひとつ年上の先輩、田中龍之介だ。
田中は日向の頭をぽんぽん撫でながら『お前より15センチちっけぇ女ってそれもう小学生じゃね?犯罪ダロ』とからから笑った。
違うのに、俺の話じゃなくて先輩の話なのに、日向はじれったく思いながら田中の前に立った。彼の胸に鼻先が触れそうなくらい近くに。
田中は不思議そうに見下ろしてきた。日向はそれを見上げる。
日向は言った。

『これが約15センチです』

田中は困惑気味に『‥‥へ〜』と言って視線を逸らせた。その顔は少し赤かった。
身長差15センチの話は昨晩母親から聞いた、ただの与太話だ。
キスするのに丁度いいらしいわよとか、そんなの母親の口から聞きたくなかったが“15センチ”というキーワードは日向の胸を大いに踊らせた。
田中龍之介。日向が恋い慕う人。
田中177センチ、日向162センチ、その差は15センチなのだ。
日向は目を輝かせた。
もう与太話だなんて思わなかった。
つり上がった三白眼を少女マンガみたいにキラキラ輝かせたイケメン風の田中に顎クイされる自分を想像して、

せ、先輩‥‥?トクン‥‥

日向は、ぴゃあああああっ!!!と心で悲鳴を上げて、そのテンションのまま次の日の朝練後、体育館で話しかけた。15センチ背の高い田中先輩に。『身長差15センチって、バランスいいらしいですよ』と。
田中のTシャツを掴み、背伸びして、よくよく考えたら身長差がない方がキスしやすいんじゃないかと気付いた時には後の祭りだった。

『冗談だろ‥‥?』

田中はドン引きしていた。彼は藁にも縋る勢いで辺りをキョロキョロ見回したが体育館には二人しかいない。
日向だって馬鹿じゃない。二人きりになった今この瞬間を狙って仕掛けたのだ。

『冗談でもいいです。俺はそれでもいいです』

強気な発言をした日向だったが、心臓はバクバクだった。胃から酸っぱいものが込み上げそうで、この感じは試合前の緊張感に似てるな、とどこか冷静に思った。だがまさかこの状況で嘔吐したら田中が許してくれても自殺くらいは考えたい。

『冗談でもいいって‥‥お前‥‥それ‥‥』田中は途方に暮れた後、『んな事言われたら冗談にできねぇじゃん』

ふっ、と困ったように微笑んだ。
なんて可愛い笑顔なんだ、日向はぽあっと見とれた。
田中は日向に顔を近付けてくる。日向は瞼を閉じてその時を待った。
唇に、ふにゅ、と温かいものが当たって、すぐ離れた。

『!!!』

途端に日向の耳と鼻からプシュー!と蒸気が噴き出した。顔は真っ赤で、目は白目。口が、はわわわわ、と戦慄く。足がカクカク震えだした。上手く立っていられなくて縋るように田中のTシャツを握った手に力を込める。

『だ、大丈夫か‥‥?』

そう気遣った田中だが、彼の顔も真っ赤っかだった。

『だっ、た、だっ、ダメッです!』

『ダメって‥‥おいまたゲロ吐くなよ!?』

『げ、ゲロ!?は、は、吐かないです!』だから!と日向は田中の胸にぎゅうっと抱きついた。『もっかいいいですか!?』

『え!?』と田中は驚愕したが、戸惑うように、そっと日向の背中に腕を回した。

『吐いたら殺すかんな』

田中はそう念を押して、また日向にキスをした。
キス、というのもおこがましいほど幼い、口と口をくっつけただけのそれ。
日向はもっと彼を感じたくて口を開いた。つられたように田中も口を開く。
ぬる、と唾液に濡れた唇の裏側が触れ合った瞬間、そこからぷつりと二人の理性が切れた。

『っはあ‥‥ッ』

腹を空かせた獣みたいに互いを貪り合い、抱きしめる腕に力を入れた。
ぎゅうぎゅうに締め上げられて苦しかったが、日向は何も言わなかった。言えなかったとも表現できる。唇が塞がれっぱなしで呼吸さえ困難だった。






気が付けば、日向は田中を床に押し倒していた。
片手は床につき、もう片方は田中の手を握る。掌を合わせてしっかり繋いだ。
田中の手に後頭部を押さえつけられ、口内を彼の舌で蹂躙される。
怖いくらいの快感。意識が遠のく。思考はぐちゃぐちゃで田中以外の事が考えられない。
燃えるようなキスは日向の体に火を灯した。眼球が熱い、胸が熱い、熱すぎて溶けそうだ。重ねた手は握りしめ過ぎて血流が滞り、白く変色していた。

好きです‥‥‥田中先輩‥‥‥

心の中で呟いた、その時、

「あ、ごめ〜ん、ちっちゃくて見えなかった」

どんっ、と背中を押され、日向は足をふらつかせた。

「!?」

振り向けば月島蛍が意地の悪い顔でにやにや嘲っていた。その後ろでは山口忠が、きひひっ、と小悪魔みたいに歯を見せて笑っている。

「え!?」

何故ここにこの二人がいるのだ。日向は混乱した。

「な‥‥なんで‥‥!?」

「は?」と眉を寄せたのは月島。「何が“なんで”?」

周りを見回せばまだ人がまばらに残っている。訳がわからない。今まで田中と二人きりだったのに、どうしてこんなに人が残っているのだ。
ふと足元に目を落としたが、そこにいるはずの田中の姿はなかった。

「?????」

日向はぼんやりと月島と山口を見上げた。その目は焦点が合っておらず、口から魂が抜けかけていた。

「なにこれ。キモチワルイ」

「ちょっ日向!?」

月島は顔をしかめて、山口は慌てて日向の魂を捕まえた。
無理矢理口に魂を押し込まれて、日向はハッと意識を取り戻すや否やキョロキョロ田中の姿を探す。

「たっ、たにゃか先輩は!?」

「たにゃか、って」

プースと月島が吹き出した。

「たにゃか先輩なら」

山口も笑いながら日向を真似て、体育館の出入り口を指差した。そこには二年生たちと談笑しながら歩く田中の後ろ姿がある。

夢、まぼろし、白昼夢

日向の頭にそんな言葉が渦巻いた。

「うえぇえぇぇ〜〜!?」

そんなまさか、あの濃厚な一時は全て妄想だとでも言うのか。惜しむべきかなそうなのだろう。田中は何事もなかったかのように体育館を去ってゆく。
日向の膝ががっくりと崩れ落ちた。

「なんなの?意味わかんない」

「あ、待ってツッキー!」

月島は呆れ顔で去って行き、山口はそれを追う。それでも日向は呆然と床を見つめたままだった。
そんな‥‥あれが妄想だったなんて‥‥、未だ信じられずに唇を指でなぞる。まだありありと残っているキスの感触。こんなに体が覚えているのに現実じゃなかったなんて。

「おー日向!授業遅れんぞ!さっさと出ろ!」

「!」

その時、そんな声が飛んできて日向はバッと顔を上げた。
扉の向こうから声をかけてきたのは田中だった。鍵閉めの当番なのだろう、彼は体育館の鍵を手にしていた。

「なに遊んでんだよ!早く立て!」

ひどい、遊んでなんかいないのに、悲しい気持ちになりながらも日向はふらふら立ち上がった。体育館には日向以外、もう誰もいなかった。

「‥‥‥!」

足取りも悪く田中に近付いて行く。近付くにつれて田中の背後が伺えたが、そこにも人の気配はなかった。みんな部室に着替えに行ったのだろう。

「‥‥た、たなか、先輩‥‥っ」

日向はまばたきもせず田中のTシャツを握りしめた。

「あ?」

様子のおかしい日向に、田中の眉が片方だけぴくりと上がった。
血管がどくどくと脈打つ。指が震える。足も震える。胃がきゅうっと痛くなった。それでも日向は意を決して、大きく息を吸い込んだ。夢で終わらせたくなかった。

「身長差、15センチって‥‥バランスいいらしいですよ」



―end―
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