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no title

狂ったフリして 踊って
人を手の上で転がす
笛を吹いて 三拍
待てば 行列 続く
さぁ いこう 逝こう

金髪揺らして あの子が
大きな声で笑う
目を閉じて 口を塞いで
息を 吹き かけて
さぁ いこう 逝こう

普通のあの子が ソコで
僕を見て心を揺らす
耳にそっと 囁いて
一つ 二つ 指を
さぁ いこう 逝こう

星合




「たなぼた?」
「ナイくん、それ、諺だから。何か得してるから」

紅い短冊を持った尼龍が首を傾げて呟けば、瑛二はそれを見て苦笑する。
湿気に顔をしかめて瑛二が細めのサインペンのキャップを開け、自身の緑の短冊の端に名前だけを書いて元に戻す。

「織姫さんと彦星さんが年に1回だけ、逢える日なんだよ」

瑛二の説明に腑に落ちない顔で今度は逆側に頭をかくんとする尼龍は口を尖らせて小さく言う。

「…それとお願い書くのと何がカンケーあんの?」
「お、は要らない」

それまで突っ伏して微動だにしなかった夏比古がそのままの体制で指摘をする。
隣の尼龍は大袈裟に驚き、瑛二は苦笑を崩さないままだった。
尖らせたままの上唇にサインペンを載せて尼龍は夏比古の背中をバンバンと叩く。

「夏比古は書かねーの?お願い」

その言葉にスッと顔を上げ頬杖を付き、夏比古は尼龍のペンを横から取り指先で回す。
その様を不思議そうに見る尼龍は暫くして痺れを切らした。

「にゃーっ!!!お前書かねーならペン返せよ!」

夏比古がペンを持った手を尼龍から引き離して意地悪をするので、彼は体を動かしてペンを取り返しにかかる。
その反動で尼龍の膝の上で寝ていた小さなさゆが目を覚ました。
騒がしい室内から瑛二は窓の外を見る。
生憎の洒涙雨だった。


爪の先のリアル






伸ばしていた爪をキレイに短く切り揃えた。
アタシの指が曲がっているのか爪が曲がって生えているのか、短くすると不格好になるのが嫌だったから伸ばしていたのだけど、右手の薬指の爪をかじってしまったから仕方なく揃える事にした。
パチン、パチンと大きめの音が響く。
マニキュアを塗らなくなってから、爪が厚くなった。
塗る前に爪を磨くから薄くなるのに、除光液の所為だと頭の隅っこから聞こえた。
ゴミを捨てて手を洗う。
爪切りから指先に移った鉄のニオイを執拗に落としてアタシは部屋の定位置にまた戻った。
外は桜の季節だ。
今年から花粉症デビューをしたアタシは、用事が無い限りは外に出なくなった。
まぁ、一応は『自宅療養』という名目での帰宅だから外にはあまり出ない方がいいのだろうけど。
暗い部屋に差し込む日が眩しくて目を細めたらケータイが鳴った。
ガラステーブルの上でガタガタと騒いで、あの人からの着信を知らせる。
1年前とは、全然違っていた。
友達も、恋人も、アタシの趣味も思考も。
サヨナラ、呟いて電源ボタンを長押しした。
大嫌いなママが弟を怒る声がした。



(a)live.





「あの雲はなんてーの?」
「入道雲、だよ」

集合住宅の小さなベランダから外を見ながら、尼龍は長い指で青い空にモクモクと浮かぶ真っ白な雲を示した。
部屋のテーブルの上には飽きてしまったのか平仮名のワークが投げ出されている。
瑛二がペンを回しながら名前を答えれば、クルリと振り向いて尼龍は首を傾げて復唱する。

「noodle good も?」
「にゅ、う、ど、う、ぐ、も」

間違えた尼龍に苦笑して瑛二は丁寧に教え直す。
色素の薄いせいで逆光に当たると眩しい髪を揺らして何度も口の中で「にゅーどう」と呟いて尼龍は投げ出したワークへと戻る。
綺麗に削った鉛筆を、少し変な持ち方で握って平仮名をなぞる。
昔、兄に注意された頬杖をついて瑛二はぼうっとその様を見ていた。

夏休みは長い様で短い。
嫌な胸騒ぎと楽しみな気持ち、二つが混ざった複雑な心を抱えて瑛二は宿題に視線を落とした。









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全力で妄想。
知彦さんはさ、物凄い厳しかったろうね。
食事の時に肘つくなとかさ
箸の持ち方、ペンの持ち方。
最後が何だか気持ち悪い。
後で多分訂正します…多分。笑





煌々。



ぱきゅっ、と。

なにかが割れた様な音とラバーソールでデパートの床を擦る様な高い音。
二つを合わせた様な音を立てて青年の指先から炎が上がる。

「おう、相棒。気が利くな」

巨漢を揺らして彼の隣に居た男が笑ってタバコの先を彼の指先に近付ける。
少年は舌打ちをして男の出したタバコを赤いグローブに握り込んだ。
消える炎とタバコが燃え尽きた灰。

「おいおい。勿体ないだろ?」
「手前ェが吸う意味がねーだろうが」

子供をあやす様な男の声に対して青年は低い声で毒付く。
反抗期の子供と保護者の様なやりとり。
その間にも満月は高く高く昇って行く。
男は目を閉じて細く息を吐いた。
何者かに囲まれているのを彼の頭が感知した。

「おい」

男が声をかけた相手は既に立ち上がっていた。
青年は一度頭をかいて最初より大きな舌打ちをした。
右腕から揺らぐ陽炎。

「派手に行きますか?相棒」

その体躯を重そうに持ち上げながら男が呟いたその一言が合図となった。





遠くで吠えるは野良犬か狼か。



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