むせ返るこの匂いに僕はきっと
キサと一緒に飛ぶのだろう
幾度か同じ夢を見て早朝
少し開いたままにしておいた窓は室内に風を運ぶ
まだ瞼を伏せて
夢の残り香を探しながら体温が戻るのを待つ
重い体は胃に何も受け付けないと主張するが、部屋に近付く足音はどうやらそれを許可してくれそうもない
子気味良いノック音に応えて僕は寝癖のままゆっくりとドアを開けた
「めっずらしい、自分から起きるなんて」
まあるく見開いたその瞳が、心底驚いたという彼女の表情に真実味を持たせる
「今日はロールパンしか無かったからスープちゃんと飲んでね、卵も切らしてるんだもの」
手間を掛けたとアピールする朝食は、なるほど良い匂いが漂う
現実の匂いだ