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話題:自作小説
という訳で、久しぶりに短編を書きましたー!
140文字小説はちょくちょく書いていたけれど短編はあまり書いてなかったので、考えてる時も書いている時も楽しかったですよ(´∀`)
なので気楽にコメントを残して頂けると、嬉しいです!
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大学を卒業して念願の出版社に就職が決まって忙しいけれど、充実した日を過ごしていた。
何をするにも楽しくて大好きな本に関われる事が嬉しくて、例え睡眠時間が少なくても泊まりになっても平気だった。
学生の頃から精神的に強かったからへこんでも注意をされても一日寝れば忘れられたし、反省して二度としない様に気をつける事も忘れなかった。
だけど今回ばかりは予想外で、全く対策の仕方がわからないし何をどうしたらいいのか、どう動いたらいいのか途方に暮れた。
雨の中を歩いて久しぶりに早く仕事が終わったからスーパーに寄って、野菜サラダとカレーを作りテーブルに花を飾り、綺麗に掃除をして彼が来るのを待っていた三日前。
高校の時から付き合ってるからほのかに結婚も考えていたし、お互いに束縛しない関係が楽だからこそ長く続いていたと思う。
同じ年だけど大人で知識があって穏やかな彼に数え切れないほど助けられたし、彼の子どもなら欲しいと考える様になるのに時間はかからなかった。
だから自然と結婚を考えていたけれど、彼の温度差が違っていた様だと気付いた時には哀しくて情けなくてたまらなかった。
いくら頼まれたからと言ってもお願いされても、後腐れがないと話したところで頷くなんて信じられない。
―― 寂しかったから、ぬくもりが欲しかったから、慰められたかったから――
どんな理由があったとしてもそれはしてはいけない事で、悩んで自分で答えを出す事だと思う。
それなのに楽な方に逃げて、自分の勝手で私達の仲を荒らすなんて。
いくら元カノでもしていい事と駄目な事はあるし、そもそも別れているんだから元カレに泣きつくのはどうかと思えて仕方がない。
心の広い人なら一度くらい目を瞑るかもしれないけれど、私には出来なかった。
それはきっと逢魔が時に話を聞かされたからで、雨が降っていた事と血圧が低かった事とか様々な要因が合わさり、妖怪の様なものを呼んだからかもしれない。
今の時代に妖怪なんて信じないだろうけれど、もし影を見てしまったら…… 。
側に来て低い笑い声と共に別れろとか悪い噂を聞かされて確かめてみたら、それが事実だった時のショックといったらなかった。
おまけに上から物が落ちて来たり車にぶつかりそうになったり、信号待ちで誰かに背中を押されたりと災いが続くと精神的に弱くなって、自分から別れを切り出した。
彼は最後まで納得がいかなくて理由を知りたがって電話をかけてきたりメールを送ってきたけれど、それに一切応じない事で決意を主張した。
今おもえばあの頃の私は、悪い妖怪の様なものにとり憑かれていたのかもしれない。
いくら喧嘩しても言い争いをしても仲直り出来たのに、あんなに頑なに別れを押していたのだから。
そう考えたところで別れてしまった今は、連絡をとる事も出来ない。
付き合っていた頃の写真もネガもプレゼントもアドレスも全部、処分したのだから。
そんな事をぼんやり考えながら湯槽に入っていると、ゆっくりと浴室のドアが開くのが見えて体が固くなった。
悲鳴をあげたいけれど相手が誰なのかを確認する方が先とか、鍵をかけ忘れたかもしれないと思いながら急いでタオルを掴む。
すると細く開いたドアから顔を覗かせたのは、元カレで、笑顔まで見せていた。
嘘だ、そんな事がある訳がないと思いながら両手は彼の方へ伸びていくのを止められなかった。
と同時にかすかに狐の様な鴉の様な鳴き声が、細く長く聞こえた様な気がしたのだった―― 。
終
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