中学三年のとき、同じクラスになった女子の話です。
クラスには40人近くのクラスメートがいて、彼女はその一人でした。
と言っても、その子は始業式にも、授業にも来ません。その子は『名前だけ』のクラスメートでした。
狭い教室の中に、いつも空っぽの席が一つだけありました。
最初は皆気になっていたかもしれません。でも1ヶ月、2ヶ月と過ぎていくうちにそれが『当たり前』のものになっていきました。
席替えのときは、先生が空っぽの席を動かし、彼女が日直の日は先生が仕事をし、日誌を書きました。
机の中からは授業のプリントが溢れていました。
先生は毎日、朝の出欠と授業の出欠を取る際に彼女の名前を呼びました。
返事はありません。
ただその時だけ、一瞬教室がシーン…となるのです。
でも誰も彼女の心配なんてしませんでした。
夏休みが明けて二学期の始業式の日のことです。
帰りのホームルームで、先生は言いました。
『○○さんは、昨日亡くなりました。○○さんは一度もこの教室には来ませんでしたが、3年3組の大切なクラスメートです。みんなで○○さんのご冥福を祈りましょう。』
私は彼女が『死ぬ』ことで初めて彼女と『出会い』ました。
最初で最後の出会いでした。
先生はその日も彼女の名前を呼びました。