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カーテンコール。#後書

小東:
座談会、寝転んでても座談会、を始めましょうか←


紫龍:
はじめましょう。

はてさて1年ちょっとぶり、7本目のリレー小説が完結したたんだけどもいかがだった?
紫龍は楽しかったよー。豆乳萌。


小東:
文章や流れに悩んだりしたけど、楽しかったです!
ただハゲ萌えがいれられなかったのが心残り。

「このにぶちん!ばか!ハゲ大佐っ……好きッ…なのに!」
「ハゲでもなければ大佐でもな……え? もう一回言ってみて」
「ばか!ハゲ!」
「いや、そこじゃなくて…」

という紫龍さんの例文(?)がお気に入りだったのに。


紫龍:
またいつか使おうぜ…!

エディはあの後、イーストに戻ったら妊娠発覚したりして


小東:
アルフォンスに、待ってたら義兄さんだけじゃなくて甥か姪も出来たわけね、と言われるんだよ。


紫龍:
アルフォンス辛辣wでも姉さんが結局、幸せそうだから納得するんだろなぁ


小東:
姉さん大好きだから。
ハボとも仲良くやるよ。たまにからかわれながら。


紫龍:
いいねいいね。

そんな感じで終わりが見えなくなりそうだから締めようか。そろそろ。


小東:
そだねー。
えっと、紫龍さんに久々にリレーやろうと声をかけて頂いたからこそ、うまれることができた作品です。ありがとうさぎなのです。


紫龍:
こちらこそありがとうなのです


二人:
最後まで読んで下さいまして、ありがとうございました〜。

カーテンコール。#21

「………私と一緒に、来て欲しい。そう思っている」
「…え…」
ロイの言葉に、エドワードから小さく驚きの声が漏れた。暫くロイをじっと見詰め、言う。
「…俺に、ついてきて欲しいの?」
深く頷くロイ。エドワードは苦笑し、俺も本当はついていきたいよ、と本音を口にした。
ロイの顔に喜色が現れるが、彼女はでもさと続ける。
「今の俺は、錬金術も使えない小娘だ。全てが、歩み寄ろうとしてる訳じゃないだろ?…もし俺が狙われたりしたら、ロイに迷惑とか心配かけるから………我慢、したのに」
俯き、きゅっと結ばれるエドワードの唇。ロイはその唇をそっと親指でなぞった。
「すまない。君が危険な目に合わないとは断言出来ないし、アルフォンスと引き離す事にもなる。…それでも私は、君に傍に居て欲しい」
エドワードは上目遣いでロイを見る。彼は真剣な顔でエドワードだけを見詰めていた。
「私は強くない。もし君が遠くにいたら、異変に気付く事も、守る事も出来ないんだ。…傍に居てくれないか、エディ」

+++

「……俺も、ロイの傍にいたい」
「エディ…」
「本当は…本当はずっとロイと居たかった。『あの日』だって……中尉が大佐の目になってたけど、本当は羨ましかった…悔しかったんだ…だからもう離れたくなんかない」
にへら、と泣き笑いの表情を浮かべたエドワードにロイは無性に抱き締めたくなった。実際は、テーブルが邪魔でできないのだけれど。
「……ありがとう。私も君と一緒にいたい」
だから、万感の想いをこめてそう告げた。




イーストシティ駅で汽笛が鳴り響く。
「姉さん、手紙書いてね?た…マスタングさんに迷惑かけちゃだめだよ?」
「おう!」
ロイは部下達としばしの別れを告げており、エドワードも唯一の肉親に別れの挨拶をかわす。
ぎゅっと抱きつくとアルフォンスも抱き返してくれる。
「……そろそろ、時間だ」
「うん…」
挨拶が終わったのか、ロイに促され、エドワードはタラップにあがる。
やはり姉と離ればなれになるのが悲しいのか、アルフォンスの目に涙が浮かんでいる。
「姉さんを…よろしくお願いしますね。マスタングさん」
「ああ。……そのうち、君の義兄さんになるから」
「!」
その瞬間にドアがしまり、ガラスの向こうでロイが苦笑し、エドワードは彼にしがみつき涙をこらえながら手を振った。
汽車が、ゆっくりと動いていく。

───

アルフォンスは姉と、将来の義兄に笑顔で大きく手を振った。すぅ、と息を吸って。
「待ってるから!!」
イシュヴァールの政策が今より進む事を。二人が戻って来る事を。いつか、彼を義兄さんと呼べる日を。
心から待っている。愛しい人の隣で。
「気をつけて…っ」
アルフォンスの目から、遂に涙が零れ落ちる。そんな彼女を、隣に立つハボックが抱き寄せた。少しだけ彼に擦り寄り、アルフォンスは旅立ちの挨拶を口にする。
「行ってらっしゃい!!」

+++




「……やはり、アルフォンスと離れるのは辛いかい?」
「…淋しくないって言ったら嘘になるけど……ロイがいるから…」
平気、とぎゅっと目をつぶったままのエドワードの肩を抱くと、甘えるようにもたれかかってくる。
エドワードは何度か目をしぱしぱさせて涙を乾かす。
「……ロイ」
「本来、出張には肉親か配偶者またはそれに類するものしか連れてこれない」
ぼそりとロイが言った。エドワードはきょとんとして彼を見上げる。
「俺…」
「軍には、婚約者も連れていく。そう申請した」
「えっ…」
なぁエドワード、とロイの真っ黒な瞳に金色が映える。それは彼の虹彩に映った自分だと気づいて、居た堪れないくて面映ゆい。
「……結婚を前提に、付き合ってくれないか?」

───

エドワードは顔を赤くしながら、ロイの手をギュッと握った。乾いた筈の涙が、また彼女の目尻に現れる。
良いの?とか、まだまだ俺はがきんちょだよ?とか。色々と言いたい。だがそれらの質問に対するロイの答えは、きっと決まっているから。
エドワードは満面の笑みで答える。
「はい…っ!」
両手を伸ばし、互いに強く抱き締めあう。そして二人は、将来を誓う口付けを交わした。



恋人達の物語りは、ここで幕を閉じる。しかしまた、次の物語りへ向かう幕が開かれた。
婚約者の物語り。
イシュヴァールの物語り。
二つの幕は同時に開くが、一緒に幕を閉じる事はないだろう。
また、別の幕がその間に開く事もあるだろう。
それが、人生というものなのだから。



end

+++

カーテンコール。#20




「じゃあアル、また帰りにな!」
「うん!また後でね〜」
エドワードとアルフォンスは、そう言って手を振りあった。
イーストシティ。今日は快晴であり。
「デート日和ですね〜」
アルフォンスは眩しそうに空を仰ぎ、弾んだ声をあげた。そして、ゆっくり歩き出す。
今日、アルフォンスはハボックとデートする日だ。そして、エドワードとロイがデートする日でもある。
一度、ショウウィンドウの前で全身チェック。前髪をちょっとなおして、よし、と笑顔になった時。
ぽん、と彼女の肩に置かれた手。振りかえれば、大好きな笑顔。
「ハボックさん!」

+++

「待たせちゃったかな」
「そんなことないですよ?」
エドワードがロイに、ハボックがアルフォンスに告白して一年が経った。エドワードの告白を保留にしていたロイは一月が経つ頃に改めて想いを告げ恋人になったらしい。エドワードに告白されて初めて異性として意識してみたところ、心配しているくせに口で強がるところとか、近寄ると照れて視線をあわせられなくなるところとか、ためしに抱き締めてみるとビックリして硬直するくせにはにかむ表情が可愛いいだとか、色々と愛しく思えて仕方ないそうだ。
何故アルフォンスがそこまで詳しいかというと、ハボックが軍に復帰してことを祝う飲み会の席で酔い潰して聞き出したのを聞いたからだ。
「それじゃ。行こっか」
「はい」
どちらからともなく、手を繋ぎ歩き始める。完全に自由歩行ができるようになった彼らの手には恋人の手だけで杖はない。これからも、歩くことを支えてくれる杖は必要ない。杖ではなく、恋人が支えてくれるからだ。

───



その頃、エドワードは。
「だから待ち合わせしてんだって!」
「え〜、結構長々と待ってるじゃん?ドタキャンされたんじゃねぇの?」
「しつっけぇな!!」
ロイを待つ時計塔の下。男にナンパされていた。
エドワードは女らしい格好をしてきた事を後悔した。久々のデートだからと張り切った結果がこれか。
「遊ぼうぜ?な?」
伸しても良いかな、とエドワードは悩む。しかしここは大人しく。だって、もうすぐ約束の時間だ。
「…そろそろ来るよ」
エドワードの言葉に男は首を傾げる。まるでそれを見計らったかの様に声がかかった。
「私の恋人に何か用があるのかな?」
響いた低い声。男は声に含まれる気迫に押され、思わず肩をビクリとさせた。
しかし、エドワードは笑顔で上を向いた。
「ロイ!」
声の主ロイを呼び掛け、歩み寄る。ロイは彼女の腰に手を回し、男を睨み付けた。
「…で?」
冷えた目に、男はひいっと声をあげて、走り去った。ロイはそれを見送り、微笑みながらエドワードを見た。
「すまない。待たせたね」

+++

「ううん。俺が勝手に早く着ちゃっただけだけ」
「それでももう少し早く来ればよかったよ……可愛いね。似合ってるよ」
「そっかなぁ…」
「そうだよ。可愛い」
「えへ…えへへ」
照れ笑いを浮かべたエドワードにロイの微笑みが更に深くなる。
エドワードと付き合いだして、ロイは少し変わったらしい。
身を粉にしすぎた働きぶりを、部下達はとても心配していて、その結果倒れた。その後、エドワードという恋人を得たロイは、恋人と一緒に過ごすためにきちんと休日をとるようになった。それが幸いしたのだろう、もともと気張ったデートコースよりも図書館だとか公園だとか静かなところや身近なところが好きなエドワードにあわせたまったりとしたデートはロイに余計な疲労を与えることはなく、逆に癒しをもたらした。
今では健康そのものらしい。
「エディ…」
「ん?」
喉が乾いた、といって入った喫茶店。エドワードは珈琲を、ロイは豆乳を飲みながら言いにくそうに、言葉を続けた。
「再来月から出張が入ってしまってね……場所は、イシュヴァール」
「!」
ロイの目、ハボックの足。ドクターマルコーの悲願。全てがエドワードの脳裏に甦る。
「だいたい、半年から10ヶ月くらい。今よりももっと会えなくなってしまうんだ。……すまない」

───

エドワードはじぃっとロイを見詰めた。約半年強の繋がりを考える。
ロイと共にイシュヴァールに行くのもありだろう。彼の体調管理を常々気にかけていたのだ、イシュヴァールに行ったら更に管理が出来なくなる。しかし、仮にイシュヴァールへ行っても、足手まといになる可能性があるし、仕事も見付かりにくいかも知れない。
ロイと共には行かず、少し前の頃の様に文通をするのもありだろう。仕事の合間を縫って返事は来るだろうが、来なくても送れば彼の癒しにもなる。しかし、その間はこれまでより更に会えない。
暫く考えた後、エドワードは言った。
「…ロイの…イーストの家は売ったりしないよね?」
「ああ」
なら、とエドワードは言った。
「ロイのイーストの家で…待ってて良い?」

+++

「別に構わないが…」
「きちんと光熱費とかも払うよ?」
「あぁそんなことは気にしてない」
そう言って、ロイは口をつぐんだ。
どうしたのだろう、と思って待っていると、やはり黙ったままだ。
「……ロイ?」
「……………待っててくれるのは嬉しい。嬉しいんだが……」
「嬉しいんだが?」


───

カーテンコール。#19

「暗号なんて使わないで、素直に書けば良さそうなものを」
「案の定、姉さんが怒る様な内容でしたしねぇ」
あの二人の言葉のやりとりは、ハボックも知っている。よくやるな、と笑った。
「頭も仲も、良いのか悪いのか」
「似た者同士だから…波長が合うって言うか。子供っぽくなる時も、錬金術師の顔の時も。同じタイミングですよね」
「似た者夫婦か」
ケラケラ笑うハボックに、アルフォンスはきょとんとした。夫婦って、とツッコミを入れそうになるが、ふと思い出す。
姉はロイに恋しているのでは、と思った事を。そこでまた、自分はハボックに…と意識してしまって、つい俯いてしまった。


+++

「ん?どうした?」
そう言ってハボックはアルフォンスの頭をわしゃわしゃと撫でる。
なんだか見透かされてるな、と漠然と思う。
「……姉さんは、た…准将のことが好きなのかな?」
「んー、どうだろうねぇ」
やっと顔をあげたアルフォンスの頭を撫でるのを中止し、ハボックはサイダーを飲む。喉の奥で炭酸が弾ける感触を楽しむ。
「仮に告っても准将はオーケーするかな」
「え?」
「准将はねぇ何だかんだで彼女とか、プライベートで特別な存在を作らない人だから」
「……そうなんですか?でもよくラブレター貰ったりとかしてるって。デートとか」
「デートも市民サービスの一環みたいだし」
ロイを側で見続けてきた男からの意外な情報。それを聞く限り、どうやら幼少期のある出来事がトラウマになっているようだ。ロイの成長過程は複雑でハボック自身も又聞きレベルの概要しかしらないそうだ。
とすると。
「姉さん…振られちゃう?」
「かもね」

───

そっか、とアルフォンスは目線を落とす。
ロイは人として好きだなと思う。そこに、恋愛感情は皆無だけれど。もし、エドワードとロイが交際するとしたら、似合いな気がすると思っていたのに。
しょんぼりするアルフォンスに、ハボックはまぁ分かんないけどなと苦笑した。
「実際の気持ちなんてさ、当人しか分かんないもんだし」
「…そうかな」
ハボックに自分の気持ちは見透かされてると思うアルフォンスがそう言えば、彼は笑って。
「憶測や邪推は、誰にでも出来るさ。それが事実かは別としてもな。…言葉にしなけりゃ伝わらない事もあるのだよアルフォンス君」
ぽんぽん、と頭を撫でられ、アルフォンスはキュッと唇を結んだ。
今、言うべきなのか。ある意味チャンスだけれど。

+++

「あのっ……少尉は」
「もう少尉じゃないけど?」
「あぅ……ハボック、さんは」
「はいはい」
言い辛そうにしていると、ハボックにクスクスと笑われる。それが恥ずかしいやら腹立つやら。
「好きな人……いるんですか?」
「いるよ」
「っ!」
予想だにしなかった言葉に、アルフォンスは泣きそうになる。告白云々抜きに既に失恋確定だったとは。
「言葉にしないと伝わらないってさっき言ったじゃん?やっぱり告白した方がいいかな」
「だっダメ!!」
アルフォンスは血相を変える。ハボックが好きな人に告白して、それでオーケーを貰ってしまったら…。
本当はアルフォンスが禁止する権限などないのだけれど、それでも嫌なのだ。なんて自己中心的な恋なのだろう、と彼女は彼女に嫌悪する。
「ぼ、僕だって少尉のこと」
「はい、ストップ!」
ハボックに遮られ、アルフォンスは涙を浮かべたまま押し黙る。
「……オレが告白したらダメなの?アルの頼みでもそれは聞けない。だってさ、……」
オレはアルが好きなんだからね、と続いた言葉に彼女は耳を疑った。

───

アルフォンスはゆっくりと首を傾げた。
何て言った?アルフォンスが好きなんだから?
「………はいぃ?」
思わずそんな言葉が口から出た。ハボックはクックッと笑う。
「驚いた?」
カクン、と人形の様に頷くアルフォンス。不思議そうにハボックを見上げた。
「本当に?」
その言葉に、ムッとした顔になるハボック。だが、信じてないのか、いや俺が悪いけど。そんな事をブツブツ言い、よし、と改めてアルフォンスの目を見詰める。ゴホンと咳払いして。
「アルフォンスが好きだ」
「ハボック…さん…」

+++

「返事、聞かせてくれない?」
「ぁ……えと、」
アルフォンスは目を瞬かせた。その拍子に今までたまっていた涙がぽろりと零れた。
「僕も……好き…です。大好き、なんですっ」
「俺も大好きだよ」
そう言ってハボックは、アルフォンスにハンカチを貸してくれる。ついでに頭をわしゃわしゃと撫でて。
「よかった。オーケーしてもらえて」
ほっと一息。まだまだリハビリが必要で、思うような交際はできないと思うが、幸い時間はある。
ゆっくりと付き合っていけたら、とハボックは思った。

───

カーテンコール。#18

ロイは右手で口許を覆った。口が勝手に、ふよふよと歪もうとするのだ。笑みの形に。
どうしたものか、とロイは目をさ迷わせる。
口喧嘩をして、からかってはキャンキャン吠えられて、難易度の高い錬金術書を一緒に解読して喜びあって、笑いあって。
対等な存在であり、尊敬する存在であり、守りたい存在であり…。大切な、特別な存在、なのだと思う。
「…鋼、の…」
ロイの呼び掛けに、エドワードはビクリとはね上がった。

+++

「あの、な」
ロイが左手を繋いでくる。動悸で苦しいくらいなのに、更に心拍数が跳ね上がってしまう。
「……はい……」
「好き、と言ってもらえて嬉しいが」
あう、とエドワードは小さな声を漏らしてその大きな瞳からぽろぽろと涙を零した。エドワードは聡い。ロイのその言葉だけで結末がわかった。
自分の想いは届かないのだ、と。
「正直な話、…君のことは妹みたいな存在だと思ってた。……今まで、異性として見たことはないんだ……話聞いてる?」
エドワードは首を横にぶんぶんと振る。逃げたい、と思ったが手を繋がれていて逃げられない。それどころか指を絡めた繋ぎ方になっている。
「……今までは、ってこと。だから少し待って欲しいんだ」

────

エドワードは恐る恐るロイを見た。すると、照れ臭そうな笑みをしたロイと目が合う。
「あ、あう…」
パクパクと口を開くが言葉にならない。そんな彼女にロイはクスクス笑った。
「話、聞いてた?」
先程と似たロイの質問に、小さく頷く。
もし今の時点で、エドワードを異性として好きになる可能性が低そうなら、彼はわざわざ答えを先伸ばしにしないだろう。
「…駄目かな?」
それに対して、ぶんぶんと首を振るエドワード。あの、えっと、と言葉を探す。
何と言うのが正しいのか分からないけれど。絡ませた指にキュッと力を入れて。
「…待つ」
そう小さな声で返事をしたのだった。

+++



一方、その頃リハビリ病棟では。
順調に筋肉を取り戻してきたアルフォンスに新たな変化が起きた。
杖中心の歩行から、杖無しの歩行へ、リハビリ方針が変わったのだ。私生活では杖をつくことが多かったが、これからは杖をつかないことを前提に日常生活を送ることになったのだ。
真っ先に喜んでくれたのはハボックだ。
「おめでとう!アル」
「ありがとうございますっ。少尉も、杖になりましたね。おめでとうございます」
そのハボックも、杖をつきながら暮らすことを許可された。アルフォンスと違い、二本使用することになるが。

────

「これで狭い場所も行きやすくなるなぁ」
ハボックはそう呟いた。
車椅子だとどうしても幅が出てしまい、裏路地や、実家の雑貨店ですらも行きづらい場所があったのだ。これからは多少マシになるだろう。
笑みを浮かべるハボックに、アルフォンスは良かったですねと微笑んだ。


リハビリ棟を出て、いつもの食堂へ。ハボックとアルフォンスは、前進した事を祝って乾杯した。
当然アルコールなんてものは扱われていない為、ハボックはサイダー、アルフォンスは桃のジュースだ。
「っく〜!久し振りにサイダーなんて飲んだなぁ」
「お酒とどっちが美味しいんですか?」
「…酒」
素直な返事に、アルフォンスはクスクス笑った。

+++

「お酒かぁ〜僕もあと5年すれば飲めますね」
「そだな〜」
のんびりまったりした雰囲気が二人の間を漂う。
つらつらとおもむくままに世間話をする。
家族のこと。杖生活で困ったこと。そうして行き着く先は、二人の共通人物な訳で。
「このまえ大…准将から姉さんに手紙が届いてて。文面だけみるとラブレターなんですよ」
「准将が?エドに?」
「そう。でもそれ暗号で…姉さんはずっと机にかじりついたままで。すっごく珍しいことなんですよ?最近では」

───
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