「君の名前は?」
レイリーはにこやかな顔で質問した。
「…………スコール・レン」
男の子はスコールというらしい。スコールは少し警戒しながらも答える。
「そんな警戒すんなって。なにもしないって」
「そんな言葉まだ素直に信じれないに決まってんだろ………
あんたのこともよく分かんないし………」
「だーかーら、
俺の名前はレイリー・ラドクリフで、自由気ままに旅をする旅人なの!!」
「あ、そ」
スコールはスネたようにそっぽを向き、レイリーと目をあわせようとしない。レイリーもそんなスコールの様子に苦笑いを浮かべる。
夜の静かな空気が2人を包み込み、気まずい雰囲気を作り出す。それに耐えきれなくなったレイリーは口を開く。
「飯でもどう?といっても缶詰なんだけど――……」
「いらない」
即答するスコールだったが、静かな場の空気に空腹を合図するあの独特な高い音が響いた。その音を聞いたレイリーはとたんに笑い出す。
「はははっ……
なぁにやせ我慢してんのさ。毒なんか入ってないから食えよ……」
スコールに1つの缶詰と缶切りをぽんっと投げる。
スコールはそれを受けとると顔を赤く染めながら、缶詰の蓋をあける。
「なんの缶詰?」
「シーフードとパスタのミネストローネだ。」
「み??みねすと??;;」
「ミネストローネ!!スープのことだ。いいから食えって。絶品だから」
レイリーをにらみながらもスコールは缶詰の中身をスプーンですくいあげ、口へと運ぶ。
「ん!おいしい!!」
「だろ?俺は缶詰の中じゃ、それが一番好きなんだ」
レイリーは笑顔でそういう。スコールはあまりの美味しさにあっというまにたいらげてしまった。
「あー………おいしかった」
「よかったな………」
レイリーは鞄からタバコを取り出すと口にくわえ、火をつける。辺りに白い煙が舞う。
「レ、レイリーさんはタバコをよく吸うの?」
スコールは少し警戒しながらもレイリーに話しかける。
「やっと俺のこと、名前で呼んでくれたな」
レイリーは口から煙を吐き出すと嬉しそうに笑顔になる。
「レイリーさんじゃなくて、レイリーでいいよ」
「レ…レイリー………」
「そう。」
またレイリーは笑顔になる。
「タバコはな………よく吸うよ………
俺、タバコないと生きていけねーし」
少し笑う。
「レイリーってよく笑ったり笑顔になるよね………」
「泣いたり怒ったりするよりも、笑った方が人生楽しくなるだろ?俺は笑顔こそが最高に幸せになれる方法だと思うんだ」
そういうとまたにこっと笑う。
レイリーはよく笑顔になるせいか、笑顔がとてもよくにあう。第一印象は怪しい人だが、いざ話してみると意外にいい人なんだ………とスコールはそう思った。
「だからお前もすねたような顔しないで、笑え―――」
レイリーの言葉が途中で途切れ、険しい顔つきになる。スコールはそんなレイリーの様子にただならぬ気配を感じた。
「どうしたの?」
「しずかにッッ………
何か強い心を感じる………」
「心を………感じる??」
訳の分からない言葉にスコールは不安になる。
「この心は…………まさか……………」
何かをぶつぶつ呟きだすレイリーを見上げ、スコールは一層不安になる。
「だからなんなのさッッ………そんな変なこというのやめてよ―――――」
「やっほぉ〜」
突然夜の暗闇の中に聞き慣れない声が響く。スコールは辺りを見回したが誰もいない。
「スコール、上だ…………」
レイリーは上を見上げ言った。スコールもレイリーの言葉通りに上を見上げた。
「やっほー」
空にはピンク色のポニーテールに結った髪をなびかせる一人の少女の姿が宙に浮いていた。
「え?な、なんで??」
「久しぶりィ、レイちゃん♪すぐにボクの心に気付くなんてさすがだねぇ」
不気味に笑う少女………
その様子はなぜか恐怖を感じさせる。
『この子は………人間じゃない……』
スコールはなぜかそう感じた。