2015/5/13 Wed 20:46
セージの花 2


話題:連載創作小説
がうです。
なんだか最近真面目に仕事せざるを得ない状況が続きます。
なぜだ!!
愛する平和はどこいった!?
以下本文




「で、何の話だっけ?子供だけで…。たかりならそのジュースで勘弁しろよ」
「アンタ、なんかの能力者でしょ。ほかの人とは違う」
「それは、はいそうです。と言った方がいい質問なのかな?」
「そうだね。アンタが何かしらの力を持ってることは判明している。いいえ、と言えば力ずくって事になるかもしれない」
「僕ヤダよ!!暴力沙汰なんて」

羽村は女子高生なのに折り畳みの小さなナイフを持っている。
今までに何度か暴力沙汰になった時、羽村がそのナイフを使って制圧したことがあった。
凄まじく強い。
僕の目にはそう映っていた。

「OK、それじゃ認めるよ。俺は人より痛覚が鋭い痛がりさんだ」
「いた、がり?」
「ふぅん。まぁ僕たちは何の能力であろうと連れ帰るのが仕事。一緒に来るでしょ?」

羽村は少しイラついているように見えた。
気が長い方ではないのは知っているけど、おじさんののらりくらりとした態度が気に入らないのかもしれない。
焦った様子も見せないおじさんは僕から見ても違和感があった。
予知能力でもあるんじゃないだろうかと疑ってしまう。

「一緒に行くかどうかは、どうかなぁ?こう見えて俺は今のままでも十分幸せだし」
「もちろんタダとは言わないよ。叶えられる望みならうちの雇い主が叶えてくれる」
「でも武力行使するようなボスなんだろ?」
「あぁ、もう!なんなのお前!!お前は僕たちと一緒に来ればいいんだよ!」

羽村がしびれを切らせたようだ。
ダンっと机を叩いたせいでコップの中身が大きく揺らぐ。
僕はどうしていいのか、ただ羽村を見ることしかできない。

「落ち着いて」
「いいね、その目。最初から結構痛かったんだよ君の視線」
「あぁ?意味わかんない事言ってんなよ、変態か、おじさん」
「そうだね、痛いのそんなに嫌いじゃないよ」
「あぁ、本当に変態だったか」

羽村が軽蔑の目を向けている。

「俺は誰より天国に近いんだ。羨ましいだろ?お前たちがかわいそうに思うよ」
「言ってろ」

言いながら羽村の手が僕とおじさんの間に入った。
これから何か危ない事でも起こるのだろうか?

「最初、呼び鈴を鳴らす前、俺の事見たのお前だろ?あれは死神に心臓を掴まれたようでヨかった」
「わかってて僕たちを家に招き入れたわけか、何が目的?」
「目的なんか無いさ、興味があっただけで」

おじさんがニコニコと笑っているのに対して羽村の顔が険しくなっていく。

「君なら視線だけで俺をイかせられるんじゃないかな?もし期待はずれなら君たち2人はこの部屋から出さない。永遠に」
「買いかぶりすぎでしょ、でもおじさんを逝かすことなら出来るよ」

言い終わるのが早いか、羽村は机を飛び越えておじさんの胸へと飛び込んだ。
同時にバチっと火花が出るような音がして、静寂が流れる。
誰も動かない。
不安になった僕は呟くような声を出した。

「羽村、大丈夫?」

ぐっとくぐもった声が聞こえる。
そのあとドッと2人とも倒れそうになるが羽村は踏みとどまった。
倒れたおじさんは気を失っているようで、時々痙攣のような動きはするけど起き上がる気配はない。
フラフラと羽村が僕の前に移動してきた。

「犬にでも電話してコイツ引き取りに来させて」
「…わかった」

携帯で電話をかけながら僕は羽村を見た。
羽村の手にはスタンガンが握られている。
それを机に置いて、なにかを確かめるために袖をまくれば、真っ赤な痕が腕に残っていた。
腕を強く握られたときに出来るあの痕だ。

「すぐ来てくれるって」
「じゃぁ、それまで休憩だね。この糞野郎のせいで体が痺れるし」
「大丈夫?痛くない?」
「律は優しいね」

羽村は微笑んで僕の頭を撫でる。
優しい目。
何だかとっても不思議な気分になる。
この感じは章吾の時にも感じるものだ。
暖かい。

「羽村の匂い!!」

玄関で声がした。
そのままドタドタと駆けてくる音がする。

「発見!!羽村だいじょーぶ?俺のお姫様抱っこが必要かな??」
「うっさい、黙ってそこに転がってる変態オヤジ運んで」

えぇ、っと意気消沈しているバイト仲間。
とりあえずこの仕事はこれでおしまい。
おじさんがバイト仲間になればお父さんの事が聞けるかな。
なんだかちょっと怖い人かもしれないけど…。
覚悟はこの力を得たあの日に決めたから。



いったんおわり
***
この話としてはおわりですが、後日談みたいなの書いたのでもう少しお付き合いいただければと思います。
ではまた明日!(たぶん)





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