2015/3/28 Sat 14:09
手の届く範囲 右

話題:突発的文章・物語・詩
がうです。
急に春が来た感じのこの頃ですが、がうの周りの桜はまだ咲いてません。
そして散り際が好きなのでお楽しみはもう少し後のようです。
今回で完結!
以下本文





兄ちゃんに連絡するとすぐに帰ってきた。
母親が兄ちゃんの頭を撫でる。
そうなんだ、母親は兄ちゃんにしか優しい顔をしない。
それは昔からだし、俺には兄ちゃんがいたから別にどうとは思わない。
母親は、母親でしかない。
兄ちゃんと母親の会話が終わったのか、母親が立ち去る。
兄ちゃんが焦ったように母親を追った。
何が起こったのかわからないけど、良くないことだとはわかった。
兄ちゃんが心配になった俺はドア越しに玄関を覗く。
出ていく母親を見送った兄ちゃんが振り返って困ったように俺に笑ったのだった。

久々に見た兄ちゃんの笑った顔。
家に赤ん坊が1人増えた。
赤ん坊の扱いなんて俺は知らない。
兄ちゃんにそう言ったら
「大丈夫、俺が育てるから」
そう言って赤ん坊を抱き上げる。
赤ん坊はユキと呼ぶことになった。
ユキの世話のために兄ちゃんは家に帰ってきた。
家の事は大方俺がするのに変わりないが、離乳食なんかの作り方を兄ちゃんと調べながら俺もユキに関わった。
何かを教えてくれる時の兄ちゃんは昔の兄ちゃんのように優しかった。
あぁ、わかった。
兄ちゃんは何も出来ない子が好きなんだ。

俺たち3人の家族が出来た。
俺はまともな人間にならなくていいらしい。
「最低限だけでいい、金は父親からくるし、俺が就職すればお前ら2人ぐらいどうとでもなる」
だから兄ちゃんの大学を優先して俺はその合間に学校に行った。
友達は減った。
だけど『高校』が現実味を帯びてくる時期皆それどころではなくて、そんなに浮いてなかったと思う。
俺は兄ちゃんに言われた通り定時制の学校に行こうと思ってる。
ユキの手が離せないのは充分わかってるし、特に進みたい道もなかったからそれでいいと思った。
無駄に反発してまた家から誰もいなくなる方が嫌だった。
兄ちゃんにまた無視される日々を過ごすのも嫌だった。

兄ちゃんは出来ない子が好きだから、飽きられないようにわざと怒られるような事もした。
もう1人は嫌なんだ。
ユキの世話を頼めるのは俺しかいない、兄ちゃんの頼れる人は俺しかいらないから。
大きくなればユキも俺みたいに捨てられちゃうのかな。
可哀想なユキ。
そうしたら今度は俺が大事にしてあげるからね。
俺の可愛いユキ。



おわり
***
今回はちょっとぐだぐだ日常的な事を書こうと思うので追記にしますね。
がうの戯言に興味があればぜひ。 



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