2015/3/15 Sun 16:07
手の届く範囲 左

話題:突発的文章・物語・詩
がうです。
今朝は4時起き、雪山にでも行くのかってぐらいの早起きをしました。
そして6時集合で遊びに行きました。
割と近場に…。
馬鹿だと思う。自分を含めて。
以下本文






小さい頃から俺の世話は兄ちゃんがしてくれていた。
箸の持ち方を教えてくれたのも兄ちゃん。
トイレの仕方、靴紐の結び方、ボタンの留め方…、それらも全部兄ちゃんから教わった。
母親とはあまり関わった記憶が無い。
母親の記憶といったら料理が上手、ただそれだけ。

俺の隣にはいつも兄ちゃんがいてくれた。
それこそ母親のごとく俺の世話を焼いてくれた。
でも、小学校も高学年に上がると兄ちゃんは俺を避けるようになった。
何でか分からない。
聞いてみたって納得のいく答えは返ってこない。
俺はそのまま中学生になった。

中1の夏、母親が出ていった。
父親を含めた3人で頑張ろうと、仕事や受験で忙しいだろうからと、俺は進んで家事をした。
兄ちゃんは自室から出ることが少なくなった。
食事も忙しいからと部屋で食べていた。
そのかいあってか、兄ちゃんは第一志望の大学に合格した。

これでまた仲良く出来る。
そう思った矢先、父親が出ていった。
兄ちゃんと久々にちゃんとした会話をしたのは父親が置いていったお金についてだった。
向かい合って会話をする。
それだけで嬉しかった。
ずっと無視されてるような感じだったから、やっと俺を見てくれたと思った。
何か1つくらい誉めてもらえるのではないのかと期待もした。
だけど、決め事だけすると兄ちゃんは友達の家に行ってくると言って、大きめのスポーツバッグを持って、家を出た。
時々家に帰っていたようだけど、俺のいない時間をわざと狙っているらしく会うことは稀だった。
1人の家はとても寂しかった。
だから、いつ誰が帰ってきてもいいように、今度はちゃんと居てもらえるように、俺は家事を覚えた。

初めて体感する家族のいない日々。
その初夏に思いもよらない人が帰ってきた。
母親だ。
「入るわよー」
とズカズカ家に上がったかと思えば抱いていた赤ん坊を俺に寄越し、自分は冷蔵庫へと向かった。
意味がわからない。
この赤ん坊は誰?何しに帰ってきたの?
お前がこの家を滅茶苦茶にしたくせに!
それをどこかで感じながらも頭は真っ白になって言葉にならない。
「お兄ちゃんはどこ?呼んできて」
お茶を飲み干し、一息付いた母親の声で俺は我に帰った。




つづく
***
弟のターン。
次で終わりの予定です。


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