2015/3/2
Mon
16:44
手の届く範囲 後
話題:突発的文章・物語・詩
がうです。
3月です。
お花見でBBQしたいです。
肉、肉...
以下本文
↓
広い家に1人、住人が増えた。
何も出来ない赤ん坊が1人。
血の繋がりは、たぶん、無いだろう。
母親が出ていって約1年、それにしては大きすぎる。
母の浮気相手の子なんだと納得した。
「兄ちゃん…」
弟が心配そうに俺を呼んで覗いていた。
弟の小さい頃を思い出す。
おむつ交えや食事の世話を俺が手伝っていた記憶が巡った。
今俺に出来る事といえば困った顔で少し笑ってみるぐらいしか思い付かなかった。
その日寒いと思って目を覚ませば、外の景色が白く埋もれていた。
俺は隣で寝ている『ユキ』を起こさないように、もう1つ横で寝ている弟の『ケイタ』を起こした。
「起きろ、雪が降ってる」
「え?」
弟はまだ半分夢の中といったフラフラとした足取りで窓の外を見た。
しばらくして目を輝かせて俺を見る。
「俺は大学に行くから。ユキが起きて飯食って、ちゃんと着替えをしたら、庭までだぞ?」
「わかった!」
弟の返事に俺は人差し指を口に当てた。
ケイタは慌てて手で口を押さえた。
大学2年の冬だ。
必要最低限の講義を受けると俺は急いで家に帰る。
俺と交代で今度は弟が学校に行く。
今中学3年生で、高校は定時制に行かせる予定だ。
出席日数やらで普通の高校は難しい。
それに俺がいない間のユキの面倒を見てもらわなければいけない。
「にーちゃ!」
庭で遊んでいたユキが俺を見つけて、トテトテと駆け寄ってくる。
抱き上げてやると服についていた雪を払ってやった。
「おかえり…」
弟の伺うような声に俺は蹴りを1発いれる。
少しふっとんで弟は雪の上に倒れた。
「何故手袋をさせていない。霜焼けにでもなったらどうするんだ!」
「ごめ…」
「さっさと学校に行け」
俺はユキを家に連れて入った。
いつからだろう?
多分、ユキが家に来たあの日から…。
少しずつおかしくなった。
いや、これが本当なのかもしれない。
弟は俺に暴力を振るわれると笑うのだ。
それでしか俺の気が引けないから。
俺はそんな弟に何の感情も抱けない。
弟が俺の言いなりになるのが何でかも分からない。
だからあの頃、家に帰りたくないと思ったのかもしれない。
ユキがいるから、俺と弟は協力できる。
俺がいないと死んでしまうユキ。
可哀想で、可愛いユキ。
つづく
***
兄編終わりです。
次回弟編行きます。
これ病んでる兄弟の話なので楽しい話にはなりません。
あしからず。
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