2015/2/28 Sat 17:42
手の届く範囲 前

話題:突発的文章・物語・詩
がうです。
大分日が長くなりました。
梅も咲いてるし、そろそろ卒業式シーズンってとこかな?
前回にコメント貰ってるのでその返事は追記に書きたいと思います。
以下本文







家は恵まれた方だと思う。
狭くはない。
母親は専業主婦。
その母が浮気をして出ていった。
高校3年生の進路を決めた夏だった。
それからは中学に上がったばかりの弟と父親と男3人で頑張った。
俺は第一志望の大学に合格。
後は卒業式を待つだけと思っていた、春と呼ぶにはまだ寒い日。
父親は手紙と通帳を置いて帰ってこなくなった。

手紙の内容を要約すると、
『俺の事は探さないで欲しい。
通帳に毎月生活費を送る。』
と言うことらしかった。
2人いなくなっな家は広く感じた。
俺も弟もあまり家には帰らなくなった。

桜の木から毛虫が落ち始める頃、弟から連絡がきた。
『家に帰ってきて』と。
何か一大事かと思って、講義を抜け出して家に帰ると、久々に見る母親がいた。
母親は俺を見ると「少し見ない間に大人っぽくなったわね」と笑って頭を撫でてくれた。

「あーっ、あー」
と部屋の奥で舌ったらずな声が聞こえる。
視線を母親からそちらに向けると、弟の傍らにつかまり立ちがやっとの赤ん坊がいた。
「あの子、お願いね」
母親がスーパーにお使いでも頼むかのように言う。
「え?」
間違いかと思って聞き返すと、おもむろに財布から2万円机に置いて立ち上がった。
「ちょ、母さん!」
「私、あの子殺してしまうかもしれないから」
そう言うとさっさと玄関で靴を履き、出ていってしまった。



つづく
***
春なのに気分が明るくならない。
きっと土曜なのに仕事してるせいだ。



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